
「9月、10月は日米ともに株価下落の可能性がある」─菅下氏はこう話す。足元で日本の株価は乱高下を続けている状況。一時は7万円を超えた日経平均だが、調整局面に入っている。この後の動きをどう見るか。「二番底が入れば、その後株価は上がってくる」と話す。日米の金融政策、そして米国の中間選挙など、今後の株価の動きを左右する材料をどう見るかが問われる局面である。菅下氏の見方は─。
トランプ大統領を支える 「4人組」の存在
─ 米国とイスラエルによるイラン攻撃で地政学リスクが高い状況が続きます。2026年11月に米中間選挙が控える中、トランプ政権の動向をどう見ていますか。
菅下 トランプ大統領には、彼を支える「4人組」と言える有力な支持者がいます。
1人目がピーター・ティールです。投資家であり、データ分析を手掛けるソフトウェア企業のパランティア・テクノロジーズを創業した人物ですが、米CIA(米中央情報局)の情報をデータ化する仕事を担うなど、巨大集団となっています。
いわば、米国が戦争するにはパランティアのデータを使わないといけないということです。
2人目がテスラ、スペースXを創業したイーロン・マスクです。マスクはピーター・ティールともビジネスパートナーの関係です。スペースXは宇宙通信を押さえていますが、これは軍事上も欠かせない機能です。
─ この2人が産軍複合体の核になっていると。
菅下 ええ。3人目がミリアム・アデルソンです。夫のシェルドン・アデルソンはカジノリゾート大手のラスベガス・サンズのオーナーで、亡くなった後に引き継いだ大富豪です。トランプ大統領が若い頃、何で財をなしたかというとカジノホテルですが、そのパートナーがアデルソン夫妻でした。
ミリアム・アデルソンはポーランド出身です。両親が1930年代に英国が委任統治していたパレスチナに移民し、彼女は1945年にテルアビブで生まれています。
イスラエルのネタニヤフ首相とも親友ですから、トランプ大統領がイスラエルを切ることができない要因にもなっていると見られています。
イランと交渉しているのは中間選挙前だからだと見ています。攻撃を拡大すると原油価格が上がり、支持が得られません。選挙に勝てば、イランの核施設の破壊やホルムズ海峡の完全開放など、目的を果たすための攻撃をする可能性があります。
4人目が、メロン銀行を創設したメロン財閥の末裔であるティモシー・メロンです。メロン財閥は銀行、電力、不動産などを手掛ける巨大グループで、彼も大富豪ですが、ティモシー・メロンが人前に姿を見せることは多くありません。
─ トランプ政権を支えるのは大富豪だということですね。
菅下 そうです。今のトランプ政権を一言で言うと少数の限られた人たちが権力を握り、政治を行う「寡頭政治」です。メディアが批判しようが、4人組に連なるネットワークで世界から資金を集めて、自国と世界を支配しようとしています。
トランプ大統領が2期目に入ってから、現在までにわかっているだけで8億ドル(約1260億円)を集めたとされています。
─ トランプ大統領は、何を目指していると見ますか。
菅下 わかりやすくいうと、富裕層が潤う政治です。例えば相続税を0%にしたり、所得税減税など大幅な減税を行っています。これは富裕層にとって大きなプラスです。
また、FRB(米連邦準備制度理事会)の議長に、自らのファミリーとされるケビン・ウォーシュ氏を就けました。トランプ大統領は利下げをさせたいけれども、FRBのメンバーは利上げをしたい。それでウォーシュ氏は何も結論を出さないことにしたわけです。
しかも、ウォーシュ氏はFOMC(米連邦公開市場委員会)の回数を減らすことも示唆しています。トランプ大統領はウォーシュ氏を送り込むことで、FRBを無力化しようとしているようにも見えます。
長期的には「ドル高」を志向する米国
─ 2026年7月31日に、日米政府は協調して円買い介入を行いました。これはドル安を容認したと見ますか。
菅下 米国の考え方は基本的にドル高です。ただ、今は中間選挙が近いので、米国内の製造業の票が必要ですから、ドル安を言わないといけないわけです。一時的な政策だと見ています。
しかし、長期的にはドル高円安です。なぜなら、米国には返済できないほどの膨大な債務があります。それでも米国が動けているのは海外からの資金が入ってくるからです。ドル安が続いたら、ドルは売られ、資金が入ってこなくなります。
26年6月に上場したスペースXはいい例です。誰が買ったかというと日本人投資家です。あるいは日本の資金を調達して投資家が買っているのです。いわば、世界で最大の個人金融資産を持つ日本の資金を米国に投資して欲しいわけです。
そして一番の狙いは、高いインフレを続けて、どこかで債務を棒引きにすることです。例えば、トランプ大統領の別荘の名称に由来する「マールアラーゴ合意」という構想があります。
海外の国が持つ米国債、日本が最大の保有国ですが、その米国債を100年満期のゼロクーポン、割引債と交換するという案です。
─ そうした荒っぽいことが実現するかどうか。実行されると日本としては大変ですね。
菅下 そうです。保有しているドルがゼロになるのと同じですし、100年の割引債ですから実質的に返さないということです。その間、インフレが進み、法定通貨の価値、国債の価値が落ちることが予想されます。
米国は富裕層が富む一方で、一般国民の賃金はそれほど上がっていません。私は「格差インフレ」と呼んでいますが、これは世界全体がこの方向に進んでいると見ています。
日経平均株価の今後の動きは?
─ 日経平均株価の今後の動きをどう予想していますか。
菅下 日経平均の短期波動を見ると、今回の出発点は26年3月31日の5万558円です。これは米・イスラエルによるイラン攻撃を織り込んだ安値です。ここから6月22日の7万2831円まで2万2000円以上上げました。これは高市政権を歓迎した高値で、ここが当面の高値となっています。
相場を読む時には価格と時間という2つの波動がありますが、特に時間の波動が大切です。江戸時代の米相場から「値頃より日柄」という格言があるくらいです。
短期サイクルは2、3カ月、中期は約半年、長期は12ないし13カ月です。 「3月またがり60日」という波動があり、底入れして天井を付けてから2、3カ月後の動きに注目しており8月22日近辺、または9月22日近辺が転機となるのではないかと見ています。
8月22日、9月22日近辺の材料を見ると、8月下旬にはジャクソンホール会議、9月17日、18日には日銀の金融政策決定会合があります。ここで仮に利上げをすると、株価が底入れすることも予想されます。
もう1つ、11月の米中間選挙が近づいてきたら、特に米国のメディアは共和党の苦戦を伝えるはずですから、世界の投資家は選挙前に一旦キャッシュアップし、選挙結果を見てから再び投資という動きになるかもしれません。
ですから9月、10月は日米ともに株価が下落するリスクがあります。9月下旬か10月下旬に二番底を付けて、そこから上昇してくることも考えられます。
─ 上昇する時の目途をどう見ますか。
菅下 価格の波動では、先程の3月31日の安値から6月22日の高値まで2万2000円以上上がっていますが、この半値押しが攻防の分岐点です。これが6万円近辺ですが、7月29日の安値が近い水準で、ここで一旦底入れした可能性があります。
ここが一番底で、高市政権の内閣改造で一回株価は戻って、その後二番底を入れるという展開も予想されます。
─ 中長期には、日米の株価は上昇基調にある?
菅下 そう見ます。長期波動では、24年の日銀の利上げショックと25年のトランプ関税ショックで二番底を付けた後、上昇した株価は26年2月26日に5万9332円という高値を付けました。
その後、3月31日の安値を経て、6月22日の7万2831円を付けました。長期波動では上昇第2波の途中です。
次の天井の水準はトランプ関税ショックから、26年2月の高値まで上げた2万8000円を、3月31日の約5万円に足した7万8000円です。2027年に7万8000円から8万円を付けるというのが価格の波動から見た読みです。
大事なことは1989年12月のバブルの高値、3万8915円を抜いた後は、目標値がない「前人未到の大相場」となっていることです。最後はバブルかもしれませんが、8万円、あるいは9万円を付けるまで上昇する可能性があります。
─ どの時期に一旦、天井を付けると見ますか。
菅下 トランプ政権が28年11月で終わりますから、28年に天井を付けるのではないかと見ます。ただ、そこまでは上昇ですから、今の相場は「下がったら買い」です。当面の注目すべきセクターはAI革命関連と防衛・資源関連です。