
アジアダイナミズムを日本は大事にしなければならない
─ 日本再生をどのように進めていくかという観点で根本軸を伺います。日本経済の現状を寺島さんはどのように受け止めていますか。
寺島 わたしは今ほど、産業人の自覚が重要な時は無いと考えています。
6月末の企業各社の株主総会を見ていて、各経営者の言葉の中で気になったのが、「稼ぐ力」という言葉を多用していたことです。要するに、株主資本主義の嵐の中で皆が追い詰められて、短期的な決算で稼ぐ力を見せつけなければならず、マネーゲーム型の思考にどんどん吸い込まれていって、表面的には株価が上がればいいのではないか、というものですが、果たしてそれで良いのでしょうか。
【 370兆円の官民投資の虚像 】ABC経済研究所 代表エコノミスト・熊野英生
日本経済の大きな問題の一つは、アベノミクス以降、異次元金融緩和で金融をじゃぶじゃぶにして、円安・株高に誘導していきました。その結果、ぬるま湯経済というか、常温経済のような状態に持っていって、とりあえず、株高になって企業業績が良くなっているのだからいいだろうという考え、つまり易きに流れているということです。
でも、それではいけない。われわれは絶えず原点に返って、実体経済や産業の現場力ということに焦点を置いて、議論を積み上げなければなりません。それなのに、どんどんマネーゲーム経済論の枠組みの中に引きずり込まれてしまっているというところに、わたしは大きな危機感を感じています。
─ 近視眼的な経営に陥ってはいけないと。
寺島 はい。IMF(国際通貨基金)が7月に公表した最新の世界経済見通しによると、今年1月に3.3%成長すると言っていた世界経済は、4月に3.1%になり、今回、3.0%にスローダウンしてきました。
それは米国とイランの戦争が背景にありますが、経済人としてしっかり頭に入れておかなければならないのは、昨年、米国の経済成長率は2.1%、中国は5.0%でした。しかし、インドは7.7%、台湾にいたっては8.7%で、今年は9.6%成長だと台湾当局が予想しています。
要するに、インドや台湾、そして、ASEANが熱気を帯びた成長軌道を走っており、こうしたアジアダイナミズムを日本は大事にしなければならないということです。
─ これは日本にとっても追い風にしなければならない。
寺島 もちろんです。今回(7月版)の改定で、日本の今年の成長率は0.7%から0.6%に減少しました。
実は21世紀に入ってから、日本の年平均実質成長率も0.6%です。ところが、この間、株価は4倍以上になっている。なぜ、0.6%しか成長していない国の株価が4倍になるのか? それは金融をじゃぶじゃぶにして、円安で決算の数字を水ぶくれさせるなど、危ういパラドックスに陥っているということに、われわれは気づかなければなりません。