
成熟した事業やマーケットに依存していては…
「黒字化や安定した業績ということだけでは満足できない。成熟した事業やマーケットに依存していては先の希望が見えないので、新規事業の創出をいかに成果に繋げていくかということだと思う」
こう語るのは、シャープ社長CEO(最高経営責任者)の河村哲治氏。
大型液晶パネルの生産拠点だった堺工場(大阪)の生産を停止し、土地や建物を売却するなど、一連の構造改革を経て、再成長に向けて歩き出したシャープ。2年連続で黒字化を達成し、4月から新社長に就任したのが河村氏である。
2016年から台湾・鴻海精密工業の傘下に入って10年。河村氏は社長就任以降、台湾を2度訪れ、鴻海グループ董事長の劉揚偉氏とも意見交換。シャープのブランド力や顧客基盤と、鴻海の圧倒的な調達力や製造能力などを融合して、AI(人工知能)インフラやロボティクス、エネルギーソリューションなどの成長分野で新事業創出を図るため、戦略的協業に関する覚書(MOU)を締結した。
「鴻海は世界の電子機器の製造の4割を担っている会社だが、シャープはブランドを持っている。鴻海グループの中でも世界中で名前のしれているブランドを持っているのは当社だけということで、お互いの技術力を持ち寄れば相乗効果を出すことができる」(河村氏)
河村氏は1961年大阪府生まれ。84年大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業後、シャープ入社。欧州代表や米州代表を歴任し、2022年執行役員。24年常務、25年専務を経て、今年4月に社長という足取り。
複合機などの法人営業が長く、社歴の約3分の2近い25年にわたる海外駐在経験がある。海外で仕事をする上で大事なのは「違いを受けとめること」として、「日本と海外の価値観、ベテランと若手の価値観、それぞれ違いがあることをお互いに認め合いながら融合させていける環境をつくりたい」という。
今後はAIサーバーで世界シェア4割を占める鴻海と連携し、AIサーバーや衛星通信などの新事業領域を拡大。2030年度に新規事業の売上高を2千~3千億円まで高める方針だ。
「今回、いろいろな現場を回り、創業者・早川徳次の『他社がまねしてくれる商品をつくれ』という言葉や『いたずらに規模のみを追わず』という経営理念など、シャープが大切にしてきたDNAが失われていないことは再確認できた。シャープらしさを発揮できる環境をいかにつくっていくかに尽きる」(河村氏)
新事業領域の開拓で真の再成長実現へ、関係者の当事者意識と一層の奮起が求められる。