【 著者に聞く 】インテージ取締役・髙山佳子『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』

AIは最適化できても、市場は創造できない

 AIを通じたデータ活用が進み、AIエージェントが自律的に業務をこなすようになる――。

 これは今後の企業活動において不可逆の流れでしょう。しかし、それは「データ活用はAIに任せればよい」という意味ではありません。全てをAI任せにすることは、長期的な成長の可能性を、自ら狭めることにもなりかねません。

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 AIは膨大な過去データをもとに、人間には不可能なスピードで最適解を導き出します。AIエージェントによる業務やマーケティングの自動化は、効率化や収益改善に大きな力を発揮するでしょう。

 一方、過去の延長線上の効率化だけでは、既存市場の奪い合いに陥ります。効率化競争が続けば、長期的には市場そのものが縮小しかねません。

 いま日本企業に求められているのは、「効率化」と同時に、「新しい需要」や「新しい市場」を生み出す力ではないでしょうか。

 その鍵になるのが、生活者理解です。新市場を生み出すには、生活者への新たな視点や、これまで見過ごされてきた欲求への気づきが欠かせません。そこには、”ひとを理解したい”という意思を持つ人間ならではの洞察が、これからも不可欠です。

 当社は1960年の創業以来、マーケティングリサーチ会社として生活者とデータに向き合い続けてきました。だからこそ、AIがどれほど進化しても、”ひとがひとを理解する”ことを置き去りにしてはならないと考えています。同時に、AI時代に合わせて生活者理解そのものをアップデートする必要性も感じています。

 そうした問題意識のもと、13名の専門アナリストが集い本書を執筆しました。人々は何に価値を感じ、なぜそれを選び、お金と時間をどう使うのか。社会の空気や価値観、そして行動の変化を読み解くことは、マーケティングだけでなく、経営そのものに直結します。

 本書では、当社の幅広いデータと時系列分析をもとに、日本の生活者に起きている4つの潮流を読み解きました。

 それは、人の属性ではなく文脈(その時の状況)によって選択が決まる「多様化」、失敗しないよう事前に調べ、価値あるものにお金を支払う「賢堅消費」、選択基準が”みんなの評価”から”自分だけの物差し”へと移る「個人最適」、モノの所有にも過去の選択にも囚われず、毎回選択し直す「リキッド消費」です。

 さらに、消費選択プロセス変化をAIがどう加速させていくかを見据え、これから企業が取り得る戦略についても試論を展開しています。

 AIが既存領域を効率化し、人が新たなビジネスを編み出す――。本書が、そんな時代の企業経営を考える一冊となれば幸いです。

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