宇宙と成層圏間の光無線通信の実証に向け、NICT(情報通信研究機構)と清原光学、アークエッジ・スペース、ソフトバンクの4者が連携推進協定を締結したと10月16日に発表。光無線通信装置の開発に加え、人工衛星やHAPS(成層圏通信プラットフォーム)への適用に向けた連携を進めていく。
4者はまず、2026年に地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)を回る実証用衛星を打ち上げ、宇宙と地上間の光無線通信の実証をめざす。
その後、2027年には「世界的にも先進的な取り組み」として、HAPS(High Altitude Platform Station)に光無線通信装置を搭載し、宇宙と成層圏間における双方向の光無線通信の検証を行う予定だ。
現在開発している光無線通信装置は、10Gbpsの高速な双方向通信に対応しながら、小型軽量で低消費電力である点が特徴。放射線にさらされる宇宙空間や、マイナス90度を下回る成層圏空間でも動作するよう改良を重ねているという。
また、開発中の実証用の低軌道衛星は6Uサイズ(約10×20×30cm)の超小型衛星で、汎用性のある衛星バス設計をベースに、光無線通信に対応するために必要な高精度の姿勢制御技術を採用する予定だという。
4者の役割は以下の通り。
NICT
- 宇宙や成層圏環境に対応する光無線通信装置の開発、大気中での光無線通信の回線設計、光地上局の開発・運用
清原光学
- 宇宙や成層圏環境に対応する光無線通信装置の開発・製造
アークエッジ・スペース
- 超小型衛星バスの設計・開発、衛星打ち上げロケットの調整、衛星の運用
- 開発中の本衛星は、2021年度に経済産業省の支援を受けて採択された後、2023年度以降はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発事業の一環として推進。
ソフトバンク
- 成層圏環境に対応する光無線通信装置と周辺機器の開発、HAPSのフライトや装置・機器のインテグレーション
昨今、衛星通信やHAPSなどの非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)によるサービスを支える次世代の高速通信技術として、光無線通信が注目されている。
衛星間の通信では既に実用化が始まっており、今後は地球観測データの即時リレーや、インフラ未整備地域の接続、災害時の早期復旧、大陸間の低遅延バックボーンとしての活用など、迅速かつ大容量のデータ伝送と柔軟なネットワーク展開を実現する技術として期待されている。
電波の代わりに光を利用する光無線通信は、周波数帯域の割り当てや無線局免許などのライセンスなしで高速通信を実現可能。しかし、非常に細く直進性の高いビームを用いるため、通信の確立・維持は極めて難しい技術だという。
2027年に予定している実証では、成層圏を滞空するHAPSと、低軌道を高速で周回する低軌道衛星の間で双方向の光無線通信を行う。その距離は最大2,000km程度に及ぶため、非常に難易度が高い実証になるとのこと。


