NTT、NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)、NTT東日本は9月24日、映像・音声プロダクションの効率化と高度化を目的として、リモートプロダクションの地上波生放送中継番組における活用に成功したことを発表した。
この取り組みでは、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新規に構築したリモートプロダクションセンターと、撮影現場である国立競技場をIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)APN(All-Photonics Network)(以下、IOWN APN)で接続し、制作拠点にとらわれない設備環境を実現している。
リモートプロダクションセンターとは、スタジアムやアリーナ会場からのスポーツやイベントなどの映像や音声信号を、IPネットワークで遠隔地にある制作拠点(センター)に伝送し、リモートでスイッチングやミキシングなどの番組制作を行う形態。
取り組みの背景
従来の映像制作においては、中継車で多くの機器を用意し、多くのスタッフと機材を現地に派遣する必要があるという業務効率化の課題がある。これに対し撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作を行うリモートプロダクションなどの映像・音声プロダクションDX(デジタルトランスフォーメーション)は、映像・音声系技術者の不足といった社会課題の解決にも寄与することが期待されている。
スタジアムや劇場で実施する大規模なイベントでは、中継車や制作スタッフを大量に現地に送り込む必要があり、そのコストの抑制と高品質な制作を行う制作環境の確保が課題となっていた。
取り組みの概要
今回は、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新規に構築したリモートプロダクションセンターと、大規模スポーツイベントを実施している国立競技場(東京都 新宿区)を、大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を持つIOWN APNで接続した。
リモートプロダクションセンターに配備されたスイッチャーパネルやミキサーなどの映像音声機器にIOWN APNで接続することで、リモートプロダクションを実現し、制作拠点にとらわれない設備環境を実現。
なお、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新規に構築したリモートプロダクションセンターを利用し、IOWN APNはNTT東日本のAll-Photonics Connect powered by IOWNを用いて構成した。
取り組みのポイント
放送各社が目指す規模や距離にとらわれないリモートのライブプロダクションを、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新規に構築したリモートプロダクションセンターを活用して実現した。
また、大規模スポーツイベントの生放送中継番組において、国内で過去最大規模のIOWN APNを用いた非圧縮伝送によるリモートプロダクションに成功した。
取り組みの成果
今回の取り組みによって、TBSテレビとNTTドコモビジネスが新たにリモートプロダクションセンターを共同で立ち上げ、ロード競技や国立競技場内の特設コメンタリーブースの撮影映像と音声をリアルタイムにリモートプロダクションセンターに伝送し、遠隔でのプロダクションを可能とした。
映像や音声、カメラの制御信号やタリー(カメラやモニタに付いている録画中・配信中であることを視覚的に示すためのランプ)の伝送の他に、リアルタイム性やゆらぎのない安定した操作が求められるカメラや照明の遠隔コントロールなどを実現している。
また、5Gスライシングを活用した会場内映像伝送により、会場内観客の様子を機動力の高いIP中継機器で撮影。混雑環境下でも安定した通信を確保し、撮影映像を地上波生放送で活用したとのことだ。
さらには、生放送での無瞬断を実現するために、標準規格のひとつであるSMPTE ST2022-7の機器構成と、IOWN APN回線の物理ルートの完全異ルート化を実現している。IOWN APNの超低遅延とゆらぎなしの特性により、遅延の変動が発生しない確定遅延でルートの遅延差約60マイクロ秒の安定性を実現した。


