Windows Centralはこのほど、「AI’s Not Hiring—It’s Firing Everyone, According to Ex-Google Exec」において、AI技術の進化がもたらす未来に関する元Google幹部 Mo Gawdat氏の見解を伝えた。
Gawdat氏はAIが新しい雇用を創出するという考えはナンセンスだと指摘し、あらゆる職種がAIに取って代わられる可能性があると警告している。
AGIの実現により、CEOすらAIに代替される
Mo Gawdat氏はAlphabet傘下の研究開発部門「Google X(現X)」でChief Business Officeを務めた人物である。同氏はポッドキャスト番組「Diary of a CEO」のインタビューで、AIの急速な発展と、それが人類に与える潜在的な影響について語った。
このインタビューで、Gawdat氏は、「AIが新しい人間の仕事を生み出すという意見はまったくのナンセンス」と断言し、AIはすでに人間をサポートする段階を超え、全面的にその仕事を置き換える力を持ちつつあると主張した。
AIは今後、企業におけるタスクの自動化をますます促進し、その結果は大規模な従業員のレイオフをもたらすことになる。具体例として、Gawdat氏のAIスタートアップEmma.loveでは、かつて350人が必要とされた作業を、現在は同氏と2名の開発者だけで実現しているという。
Gawdat氏はまた、近い将来AGI(汎用人工知能)が実現し、CEOを含むあらゆる業務において人間を凌駕、その仕事を代替してしまう可能性があるとも語っている。つまり、AIの影響は経営層にまでおよび、組織や社会の構造そのものを大きく変革することになるというわけだ。
ユートピアに移行するためのAI活用とは
とはいえ、Gawdat氏自身はAIがもたらす未来についてかならずしも悲観的に見ているわけではない。同氏は、AIが社会をユートピアに導く可能性と、AIが人間によって悪用された場合に起こりうるディストピアな未来の両方について論じている。
Gawdat氏の予測では、短期的には、AIは人々の仕事を奪い、AIプラットフォームの所有者に権力が集中するディストピアに移行する。これは、AIの進化と導入が速すぎるために、安全性を確保するための選択肢がほとんどないからだ。しかし、人々が考え方を変え、富と権力への執着を捨ててAIにリーダーシップを委ねることができれば、人類はユートピアに移行する可能性があるという。
AIが特定の人や国家ではなく、地球上のすべての人々の繁栄を追求するように方向付けることができれば、人類は労働から解放され、より多くの時間を家族や趣味、人間関係に費やせるようになるとGawdat氏は述べている。
この主張は非常に規模が大きく、現実化の可能性については議論の余地があるだろう。しかし、これを最悪のシナリオに備えるための強い警鐘だと捉えれば、私たちがAIとどのように向き合うべきかを考える良いきっかけになるのではないだろうか。同氏の主張は、AIの進化が雇用や社会構造に与える影響を最大限に想定した上で、法制度や企業戦略の面で早期に備える必要性を訴えている。
