32MBのMRAMを搭載したAI半導体
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月7日、東北大学とアイシンがNEDOの「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」において、32MBの磁気抵抗メモリ(MRAM)を搭載したエッジ領域向け「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発したことを発表した。
エッジAIの活用には、供給できる電力や機器の大きさ、利用環境などにさまざまな制約があるため、それらの制約に対応したデバイスを開発する必要がある。特にさまざまなデータを格納するメモリは、ブート用の外付けフラッシュメモリ、プロセッサのメインメモリ用外付けメモリ(DRAM)、チップ内でキャッシュなどに用いられるSRAMなど、用途に応じたさまざまなものを搭載する必要があり、それぞれのメモリとプロセッサとのデータのやり取りにエネルギーが必要としている。また、ブート用のフラッシュメモリは、ほかのメモリに比べバス帯域が狭く、ランダムアクセスができないため、起動時に外付けフラッシュメモリの内容を順次内蔵SRAMや外付けDRAMにコピーするプロセスが必須であり、小規模なAIエッジシステムを構築する際にも長い起動時間がかかることも課題となっていた。
東北大がMRAM技術の開発を促進し、アイシンがチップを開発
同事業は、そうした課題解決に向けて進められてきたもので、今回の研究では、東北大がMRAMを用いた自動設計環境の構築や設計ツールの高度化を行い、大容量MRAMを搭載したAIアクセラレータを開発。アイシンがそのAIアクセラレータと、アプリケーションプロセッサ、大容量MRAM、および周辺回路を統合して、画像認識などの機能を実現できる実証チップの開発を行ったという。
MRAMは、スピントロニクス技術をベースとして開発された不揮発性メモリで、CMOSプロセスに融合して形成することが可能という特徴があるが、大容量化が難しく、一部のマイコンの内蔵メモリなどでの利用に留まっていた。
今回の研究開発では、東北大が開発・設計してきたMRAM採用の低消費電力AIアクセラレータを搭載することで、SRAMと比べて待機電力や動作電力を削減したほか、不揮発化により重みメモリへのロード時間の削減などを可能としたとする。また、起動時間の短縮と外付けメモリの削減も可能となり、チップの小面積化および低消費電力化を図ることができるようになったとする。
TSMCのMRAM混載16nm FinFETで実証チップを製造
実際に開発された実証チップは、TSMCのMRAM混載に対応した16nm FinFETプロセスを用いて32MBのMRAMマクロを搭載。アプリケーションプロセッサにはArm Cortex-A53デュアルコアを採用し、独自開発のAIアクセラレータも搭載。この結果、内部メモリと重みメモリにMRAMを用いることでニアメモリ・コンピューティング構造を実現し、外付けフラッシュメモリのバス帯域不足の解消や、アプリケーションプロセッサ上のソフトウェア起動時に必要とする多くのプロセスを削減することに成功したとする。
また、エッジシステムに適した、高速起動に必要となるコンパクトOSも同時に開発し、OSを実証チップの内部メモリ(MRAM)に内蔵することを実現したともする。この不揮発性メモリ技術を活用したシステムでは、車載システムで課題になっている暗電流もゼロにすることが可能となることが示されたという。
チップの外付けにブートメモリとメインメモリ(DRAM)で構成された従来技術と、エネルギー効率およびOS起動時間短縮の効果を検証するため、実証チップを搭載した開発技術の実証システムでの効果実証を行ったところ、エネルギー効率実証では、CMOS/スピントロニクス融合技術の活用効果として、電源ONからOS起動を経て最初のAI処理が完了するまでのエネルギー効率が、従来技術4.7624Jのところ、新開発の技術で0.0942Jと50倍以上の改善効果を確認したとする。また、OS起動時間は従来技術が2535.3msに対し開発技術は65.7msと30分の1以下の起動時間短縮効果を確認したとする。
なお、NEDOでは、今後もエッジ領域での分散コンピューティング実現に向けて取り組み、AI処理でのエネルギー効率改善とその早期社会実装を通して、高度なエッジコンピューティングの実現を目指していくとしている。

