太陽ホールディングス(太陽HD)は、埼玉県嵐山町(らんざんまち)にある嵐山事業所にて同事業所内に新たに技術開発センター「InnoValley(イノヴァリー)」を開設。4月24日、同センターに関する記者発表会ならびに報道陣向け見学会を開催した。
記者発表会には、太陽ホールディングス代表取締役社長・グループ最高経営責任者の佐藤英志氏、太陽インキ代表取締役社長の峰岸昌司氏、大成建設 建築設計第二部長の杉江大典氏、設計デザイン会社DRAFTにてシニアディレクターを務める中村嶺介氏などが登壇。同センターの太陽HDにおける役割や、建物に施された工夫などの説明を行った。
技術開発の強化と人的資源経営を促進するInnoValley
エレクトロニクス事業や医療・医薬品事業、ICT&S(Sustainability:エネルギーほか)事業を展開する太陽ホールディングスの中で、エレクトロニクス事業の主力の1つであるソルダーレジストの開発や国内製造、販売を担っているのが子会社の太陽インキ製造となる。
InnoValleyは、半導体市場におけるソルダーレジストに対するさらなる高性能化という需要に向けて、太陽インキ製造における技術開発の強化を目的とすることでエレクトロニクス事業をさらなる成長軌道に乗せるほか、人的資本経営を実現し企業価値を高めることを目指して開設された施設となる。
InnoValleyという施設名称の由来は、"Inno"がInnovation(革新)から、"Valley"(渓谷)が施設所在地と施設内の特徴にも係る嵐山渓谷から取って組み合わせた「革新の渓谷」を意味する造語で、技術開発センターが創造と革新の源泉となり、新たなアイデアや製品が流れだす場所であることを表現しているとのこと。
施設規模としては、地上6階建てで、延べ床面積1万400m2、敷地面積1万6323m2。かつては「モノづくり大国」と言われていた日本であるが、現在は製造業離れや人材不足が叫ばれている。こうした日本のモノづくり産業が再び世界において競争力を持つには、ヒトへの投資を強化し、働きやすい環境づくりや仕事のやりがいを整えることを通して「自律型人材の育成」をすることが重要だと同社は考えるに至ったという。
そこで同社は、開発部門を中心とした社員によるワークショップの意見を設計に反映し、1~3階の低層にはラボエリア、4~6階の高層にはオフィスエリアという異なる環境を設け、社員のポテンシャルを最大限に引き出せる技術開発センターづくりを試みたという。なお、建築計画は大成建設、内装設計デザインについてはDRAFTが行ったとする。
最先端設備を複数導入した1~3階のラボエリア
1~3階のラボエリアでは、明るさや温度、湿度などを完全にコントロールすることで外部環境の影響を受けない室内環境を完備しているほか、各材料室や実験室の行き来をスムーズにした回遊式動線が確保されたフロア構成が採用されている。また、新たな分散装置と試作塗工機を施設内に設置し、評価用のサンプル作製までにかかる時間を従来の約3分の1に短縮、さらに露光機やラミネーターなどの各種最先端設備も導入したとする。
そのほか、フレキシブルな事業展開や製品開発が可能な未実装エリアも設けられており、拡張性と更新性を確保。主製品であるソルダーレジストや半導体関連材料をはじめとした基板周辺材料の開発・製造・評価までを可能にすることで、実験効率の向上と集中力のアップを実現できるとした。
また、エントランスから階段を上ってすぐのところには、「INSPIRATION SPACE」という同社の技術と歴史、未来についてデジタルとアナログの融合で表現したスペースを設置。同スペースには「Historyコーナー」「Futureコーナー」「Technologyコーナー」が用意されており、Technologyコーナーではソルダーレジストをはじめとする最先端製品にも触れることが出来る。
次世代型オフィスデザインを採用した4~6階のオフィスエリア
4~6階のオフィスエリアでは、全部署の従業員がゆとりをもって仕事ができる固定席に加え、働き方の多様化が進む中で注目されている「仕事する環境は自分で選ぶ」という次世代型オフィスデザイン「ABW(Activity Based Working)」を導入。
ディスカッションができるオープンスペースや、完全に仕切るのではなく人を感じながら集中して仕事ができる図書館のようなスペースまで完備している。開放的な空間は、チーム内外での自然な情報共有など開発の源泉となる偶発的なコミュニケーションを喚起する狙いがあるとのことだ。
なおエントランスやオフィスエリアには同事業所がある嵐山周辺の自然の魅力や、地域特性を活かしたデザインが取り入れられている。太陽インキでは、InnoValleyでソルダーレジストの製造技術展開の活性化を図っていくとするほか、顧客基盤の強化や人材育成、新規事業の創出へも積極的に取り組みたいとしている。