2024年1月1日午後に発生した石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生、「令和6年能登半島地震」と命名された。その被災地域内には半導体および関連する電子部品製造施設が複数点在している。現在、それらの工場は被害状況を調査中としつつも、ほとんどの工場で重大な被害は免れた模様である。該当地域にある主要企業としては、加賀東芝エレクトロニクスやTPSCo(タワー パートナーズ セミコンダクター、旧パナソニックの半導体工場)、サンケン電気の子会社である石川サンケン、シリコンウェハメーカーの信越化学工業やGlobalWafers、半導体製造装置メーカーのKOKUSAI ELECTRIC、MLCCメーカーの太陽誘電や村田製作所などが挙げられる。2024年1月5日朝時点での各社の地震の影響をまとめてみたほか、TrendForceもこの地震の影響についての見通しを公表しているので、それらを織り交ぜて以下に記す。

東芝

半導体ファブに関しては、石川県南西部に東芝傘下の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)がある。同工場は元旦も操業していたが、地震直後ただちに工場の稼働を停止した。親会社の東芝デバイス&ストレージでは、同地震発生直後に同社本社(神奈川県川崎市)に災害対策本部を立ち上げ、インフラ、装置、仕掛ロットなどの製造に関する情報ならびに従業員の安否情報収集とその対応・対策にあたっている。当日出社していた従業員については、全員の無事を確認したものの、出社していなかった従業員については、まだ連絡が取れていない者もいるとのことで、第2報を1月5日17時頃に発表する予定としている。

加賀東芝エレクトロニクスの敷地には、6インチと8インチの工場のほか、2024年上半期完成予定の12インチ工場も含まれている。

TPSCo

イスラエルに本拠を置くTower Semiconductorが51%の所有権を持つTPSCo(タワー パートナーズ セミコンダクター)の魚津工場(300mm)および砺波工場(200mm)の建物への影響や被害はなく、設備の損壊も軽微で、営業に支障はないとして発表している。

同社は、「専任のスタッフと対応チームが、運用の安全性と安定性を確保するために取り組んでおり、製造装置や材料の損傷を効率的に修復しながら、利用可能なリソースをすべて活用して製造と顧客サービスへの影響を最小限に抑える取り組みと併せて、製造装置の再認定が進行中である」と発表している。新潟県の新井工場の影響も軽微だという。

サンケン電気・富士電機

サンケン電気の子会社である石川サンケンのパワー半導体生産拠点(堀松工場、志賀工場、能登工場)は震源地に近く、道路が寸断されており、生活インフラ等への影響も大きく、各拠点の被害状況と並行して調達・物流面の影響についても確認を進めているが、「調査に一定の時間が必要な状況」とサンケン電気本社では発表している。

1月4日夕方に更新された第2報によると、今回の地震による人的被害を含め各拠点の被害状況の確認を進めようとしているが、現地では余震が継続する状況および道路網の寸断や通信インフラ障害があり、この様な状況下、従業員等の安否確認を進めているが、まだ全員の確認ができていないとしている。石川サンケンの各工場においては、工場建物および生産設備の一部被害が確認されているが詳細はこれから調査するとしている。親会社のサンケン電気は、災害対策本部を設置して、特に大きな被害があった石川県に担当役員を派遣し、情報収集を進めている。

また、富山県滑川市にある富士電機の子会社の後工程工場では、一部の装置に影響があったが、すでに稼働を再開しているという。

このほか、TrendForceによると、三重のUSJC(UMCが三重富士通セミコンダクターを2019年に買収して社名変更)は地震の影響を受けなかったとしている。

信越化学・GlobalWafers

信越化学グループの直江津工場(新潟県)は、半導体シリコン結晶の生産だけではなく、有機系のシリコン樹脂やフォトレジスト材料などを製造している。ここでは、地震の揺れを感知後、設備は自動停止したが、人的被害はなく、設備には大きな被害は発生していない模様である。

地震後、安全な操業再開に向けて点検が進められ、すでに順次操業を開始している。

また福井県の武生工場も、操業に大きな影響はないとのことで、信越グループ全体としても、今回の地震の業績への影響はないとしている。

一方、新潟県にシリコンウェハ結晶工場を持つ台GlobalWafersの日本法人であるGlobalWafers Japanでは、地震直後に装置を停止したという。現座い、被害の調査を進めている段階だが、今のところ損傷は軽微で、安全確認の取れた設備から順次稼働を開始している模様である。

MLCCメーカーへの影響

MLCCメーカーである太陽誘電の新潟工場は、震度7までのゆれに耐えられるように設計されていることもあり、設備の損傷は報告されていない。また、村田製作所の関連会社である北陸地方の工場は1月1日は休止中であった。同社のMLCC工場ならびにTDKのMLCC工場の地域は震度4以下であり、目立った影響はなかったという。ただし、MLCCは製造していない、震源から近い穴水村田製作所とワクラ村田製作所については、従業員の安否確認を最優先で継続して行われており、建物や設備の被災状況については、優先している従業員の安全確保を終えた後に確認するとしている。

KOKUSAI ELECTRIC

半導体製造装置メーカーのKOKUSAI ELECTRICは、富山県に拠点を有している。同社では、同拠点の建屋の天井パネルや壁材、空調配管の一部が被害を受けているため、安全確認、清掃、補修などを行う必要があるとしており、通常業務を1月9日より順次開始する予定だと発表している。

なお、台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceは、現在の半導体業界の低迷と閑散期、既存の部品在庫、およびほとんどの主要工場が震度レベル4から5の地域に位置していることから、これらの工場では建屋や設備には重大な損傷はないとの報告も出ていることから、1月2日夜時点での判断として地震による業界への影響は限定的とみている。

  • 令和6年能登半島地震の震源地に近い主要半導体および電子部品製造工場の分布図と震度と被害状況

    令和6年能登半島地震の震源地に近い主要半導体および電子部品製造工場の分布図と震度と被害状況 (出所:TrendForce、2023年1月2日時点、拠点選択はTrendForceの判断によるもの)