NECと東北大学病院(宮城県仙台市)は12月13日、医師の働き方改革に向けて、生成AIにおけるLLM(大規模言語モデル)を活用し、電子カルテなどの情報をもとに医療文書を自動作成する実証実験を行ったことを発表した。また橋本市民病院(和歌山県橋本市)とも、同様の実証実験を2023年10月から行っている。

  • LLMで電子カルテから医療文書を自動作成

    LLMで電子カルテから医療文書を自動作成

東北大学病院における実証の概要と結果

2023年10月~11月の期間で行われた東北大学病院における実証では、NECが開発した医療テキスト分析AIを活用することで、電子カルテに記録された患者の症状、検査結果、経過、処方などの情報を時系列で整理することに成功した。そして、NECのLLMを活用し、治療経過の要約文章を自動で生成可能としたという。

生成された要約文章は、引用元である電子カルテの記載内容を関連付けて表示しているため、医師がエビデンスを効率的に確認することが可能であり、ハルシネーション(生成AIが誤った情報を、もっともらしい形式で出力してしまう現象)対策にもなる。

実証は、東北大学病院の一部の診療科の医師10人の協力のもとで行われ、その結果、紹介状や退院サマリ(入院患者の病歴、入院時の身体および検査所見、入院中に受けた診療内容などについての要約書)などに記載する要約文章を新規に作成する場合と比較して、作成時間を平均47%削減でき、文章の表現や正確性についても高い評価を受ける結果に。

これにより、膨大な電子カルテの記録から必要な情報を収集する作業が軽減され、生成された要約文章を参考にしながら各文書を効率的に作成できる可能性があることが確認された。

橋本市民病院における実証の概要

2023年10月~2024年3月で実証が予定されている橋本市民病院では、NECの電子カルテシステム「MegaOak/iS(メガオーク/アイエス)」を使用しており、以前から電子カルテの情報の匿名化についてNECなどと共同研究を行っている。

今回の実証では、匿名化された電子カルテの情報を、クラウドセキュア接続サービス「MegaOak Cloud Gateway」を介してクラウド上のLLMに安全・シームレスに連携し、個人情報を学習させないように配慮しながら要約文章を生成していくとしている。

今後は、要約文章の精度向上に加え、退院サマリだけでなく長期間にわたる治療経過に関する要約文章の生成についても実証を行う予定。また、操作性の向上を目指し、電子カルテの画面上に新設した「LLM」のボタンをクリックするだけで要約文章を自動生成する機能も実装する予定としている。