夏が始まりつつある週末、岩手県・花巻市の一角では、歩行者天国となった大通りに多くの出店や巨大遊具などが立ち並んでいた。曇天から小雨が降ったかと思えば、時にはまぶしい日差しが降り注ぐ。そんな気分屋の空の下、地元の人々は蒸し暑さに負けないほどの活気を放つ。
花巻市の中心市街地である上町・吹張町では、7月8日(土)の10時から15時まで、花巻青年会議所(JCI花巻)が主催する「Stand up 花巻」が開催された。市民や地域団体、地元企業などさまざまな人が参加し、キッチンカーや屋台、子供向けのプレイエリア、学生によるステージ企画など、“チャレンジ”を生みだすさまざまなイベントが行われたのだ。
その企画の1つとして注目を集めたのが、会場全体を使った冒険型謎解きゲーム「銀河鉄道の落とし物」だ。宇宙をテーマにしたこのプログラムは、地元の学生ボランティアが配布する謎解きキットを受け取るところからスタート。イベント開催エリアを縦横無尽に歩き回って数々の謎にチャレンジし、すべての謎を解いた先では、「ゴールが宇宙から降ってくる」というが、果たしてどういうことなのだろうか…?
花巻の町にちりばめられた手がかりを探せ!
今回の謎解きは、花巻で生まれ育った宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』になぞらえたストーリー。花巻商店街を歩いている主人公は、幻想四次を走る銀河鉄道からの落とし物だと思われる地図と切符に出会い、それを持ち主に返すために、地図に記された謎を解いていくのである。
地図にはいくつかの場所がマークされていて、その場所にはそれぞれの謎を解く手がかりが存在している。公園のベンチに刻まれた文章、立ち並ぶお店の看板、さらには頭上を覆うアーケードのステンドグラスまで、たくさんのヒントが町中に隠されていた。これらのモチーフはどれも以前から商店街にあったものだといい、元の町並みを活かしたものになっているという。
そしていくつもの謎を解き明かすと、新たな1枚のシートを渡される。そこに記されているのは、ストーリーの続きと最終問題だ。ストーリーを読み進めると、花巻・上町のランドマークともいえる「マルカンビル」へと向かうように指示される。このビルの6階には、多くの人でにぎわう人気のマルカンビル大食堂があるが、通り過ぎて7階へと向かう。
7階で渡されるのは、タブレットだ。最終問題の答えはある単語で、問題の裏に書かれたパスワード変換表と照らし合わせながら、数字とアルファベットからなる文字列へと変換する。そのパスワードをタブレットに入力すると、宇宙から届くある映像が流れ始める。
一見ランダムに並んだかのように見えるパスワードに隠された意味とは。そして、地図と切符を落とした落とし主は誰だったのか。その謎が、宇宙から降り注いだゴールで明かされていく。
老若男女問わず楽しめる難易度の謎を用意
全体で30分~1時間ほどの所要時間を想定しているという今回の謎解きプログラムだが、町並みを眺めながらの移動やひらめきを試される問題の数々など、大満足のボリュームだった。
それぞれの謎解き問題は、大人でも楽しめるほどの高い難易度。とはいえ豊富な知識が必要なわけではなく、柔軟な発想が求められるものばかりで、子どもから大人まで幅広い年代が真剣になれる問題になっており、当日もカップルや親子3世代など幅広い層の人々が冊子を片手に楽しんでいた。
今回のプログラムを手掛けたのは、仙台を拠点として東北を中心に活動する謎解きゲーム製作集団「謎杜(nazomori)プロジェクト」。市街地を舞台に問題を製作するプロフェッショナルが作り上げたプログラムのため、挑戦しがいのある充実した謎解きとなっていた。 5時間の開催となったStand up 花巻の中で約1000人が参加したという宇宙謎解き。ではなぜ今回は、この花巻の地で、宇宙を舞台にした謎解きが開かれたのだろうか。