クラーク記念国際高等学校(クラーク国際)、東京大学(東大)、Space BDの3者は、高校生を対象として未来のリーダー人材育成を目指し共同で運用する「宇宙教育プロジェクト」を通じて、人工衛星「Clark sat-1」が完成したことを発表。3月17日には、合同記者発表会を開催され、同衛星の模型が公開された。

  • 宇宙教育プロジェクトによる人工衛星「Clark sat-1」開発記者発表会が行われた

    宇宙教育プロジェクトによる人工衛星「Clark sat-1」開発記者発表会が行われた

"本物に触れる"宇宙教育プロジェクト

3者が共同で運用する宇宙教育プロジェクトは、人工衛星開発の追体験、生徒主体での運用・ミッション実行をベースとして、高校生が宇宙に関心を持つ機会の創出、さらに、宇宙視点でさまざまな課題解決を考え実行できる未来のリーダー人材育成につなげる教育プログラムの開発を目的としたもの。

同プロジェクトは2021年7月に始動し、高校生による人工衛星の開発、および、宇宙をテーマにした独自の探求学習プログラム「宇宙探求学」の開発・実施を具体的な目標として掲げている。

衛星開発においては、東大大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授が指導を、Space BDが支援を行った。また、同プログラムのアンバサダーには元宇宙飛行士の山崎直子氏が就任している。

同プログラムでは、高校生が主体となった人工衛星の開発、地上での各種環境試験、官辺申請、打ち上げ後の軌道上での衛星運用までを実施。クラーク国際の生徒たちは約1年半にわたり、衛星開発のプロセスに沿って、宇宙開発の基礎知識からチームワーク、自ら問いを立てて課題を解決する力を身に着けてきたという。

  • クラーク国際で行われた宇宙教育プロジェクトの年表

    クラーク国際で行われた宇宙教育プロジェクトの年表(提供:Space BD)

プログラムの中では、中須賀教授によるCanSat(空き缶サイズの模擬衛星)を利用した問題解決型ワークショップや、山崎直子氏による特別授業、Space BDが開発した宇宙に関するワークショップへの参加、宇宙ビジネス企業への訪問など、座学以外にも幅広い学びの機会があったとのことだ。

宇宙業界のパイオニアもうらやむ教育プログラム

山崎氏は宇宙教育プログラムについて「私自身が高校生のころは、人工衛星を生徒たちが作るというのは思いもつかなかった」といい、「宇宙を目指す人に限らず、今後どの分野に進む人でも、高校生年代で宇宙に挑戦した経験はとてもAmbitiousなものであり、今後の財産になる」と、その意義を語る。

  • 高校生年代から人工衛星の開発を経験することの価値を語る山崎直子氏と、中須賀真一教授、Space BD代表取締役社長の永崎将利氏(左から順)

    高校生年代から人工衛星の開発を経験することの価値を語る山崎直子氏と、中須賀真一教授、Space BD代表取締役社長の永崎将利氏(左から順)

また中須賀教授は教育方式に焦点を当て、"ある目的を達成するために必要な分野を学ぶ"といった問題解決形式での学習の機会をもっと増やすべきだとし、その題材には宇宙分野が最適だとした。その理由には、「宇宙を題材にすると『絶対に成功させたい』という強いモチベーションが生まれやすく、本当の意味での鍛錬につながる」と語った。

  • 同プロジェクトで人工衛星のスペシャリストとして指導を行う中須賀教授。プロジェクトの中で印象深かったこととして、CanSatを使った課題解決ワークショップを挙げ、会場で当時の映像が流れた際には笑みを浮かべていた

    同プロジェクトで人工衛星のスペシャリストとして指導を行う中須賀教授。プロジェクトの中で印象深かったこととして、CanSatを使った課題解決ワークショップを挙げ、会場で当時の映像が流れた際には笑みを浮かべていた