TSMCでビジネス開発を担当するシニア・バイス・プレジデントのKevin Zhang氏が6月30日、横浜市で会見し先端半導体の日本国内での生産について「将来的には可能性を否定しない」と述べたと一部メディアが報じている。

Zhang氏は、Intelの技術、製造グループVPなどを経て、2017年にTSMCビジネス開発の責任者に就任。現在は、海外ファブの効率的運営や海外進出計画も担当している。

現在、TSMCはソニーセミコンダクタマニュファクチャリング熊本テクノロジーセンター(イメージセンサの量産拠点)の近くに、ソニーやデンソーが少額出資するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)として第1工場を建設中で、2024年末までの稼働開始を目指している。また、ソニーも2023年6月に、熊本県合志市に新たに土地を取得し、イメージセンサの新工場建設計画を公表した。TSMCは、ソニーのイメージセンサ周辺回路を受託製造している関係で、ソニーの熊本第2工場新設に合わせて熊本に第2工場を建設する目論見のようである。TSMCの魏哲家CEOは2023年1月の決算発表時に「顧客からの需要と日本政府の支援レベルが理にかなっていれば、日本に第2工場を建設することを検討する」と、実現は日本政府の補助金次第と指摘している。

また、TSMCの劉徳音(Mark Liu)会長は6月6日に開催された株主総会後の会見で、日本の第2工場について「経済性を考えると、熊本を優先的に検討している」と土地の買収交渉を行っていることを示唆したほか、TSMC第1工場(JASM)同様、スペシャルティプロセスによるイメージセンサや自動車向け半導体を成熟プロセス(28~12nm)で生産する意向も示している。日本の西村経済産業大臣も、6月10日の記者会見にて(TSMC第2工場について)、必要な予算を確保できるよう取り組みたいと述べ、補助金支給の意向を示している。2024年度予算で、経済産業省(経産省)が補助金の予算を正式に確保出来れば、双方から公表される見込みである。

2nmまでの間を埋める第3工場誘致の可能性

2022年に設立された国策半導体メーカーRapidusは、2nmプロセス以降の先端半導体を手掛ける計画で、現状のJASMの12nmプロセスまでの受託製造サービスと併せて徐々に先端プロセスでの製造が日本でも可能になる見通しがでてきたが、未だに10~3nmプロセスが空白になっているため、経産省では、水面下で当該プロセスを担う第3工場の誘致をTSMCに対して行っていると日本の半導体業界内で噂がでている。

経産省はもともと2020年時点でTSMCの先端プロセス工場を誘致していたとされるが、当時の日本の顧客は先端プロセスを採用しておらず難色が示され、紆余曲折を経て、JASMの設立や3DIC研究開発センターの誘致に至ったとされる。そうした経緯もあり、今回のKevin Zhang氏の発言も、経産省と水面下で交渉が進められており、TSMCとして日本政府に対し、理にかなった補助金が要求されていることが推測される。先端半導体ファブともなれば、投資規模は数兆円とも言われていることから、政府の補助金の額も1兆円を超す可能性もある。先般、ドイツに半導体工場を建設することを公表したIntelは、独政府/EUから99億ドル(約1兆5000億円)の補助金支給を見込んでいるとされるが、それでの全投資額の約1/3ほどである。