台TSMCの最高経営責任者(CEO)兼社長である魏哲家(C.C.Wei)氏は、1月12日に開催した2022年第4四半期決算説明会にて「日本で2つ目となる工場建設を検討している」と述べた。最終決定は、顧客需要と日本政府の支援(補助金)次第だという。

海外進出には地理的な製造の柔軟性も考慮

魏哲家氏は、同決算説明会の最後に、「顧客の信頼を高め、将来の成長の可能性を拡大するためのTSMCの世界的な製造フットプリントを拡大する計画」について、「TSMCの使命は、今後何年にもわたって、世界のロジックIC業界にとって信頼できる技術と生産能力のプロバイダーになることである。私たちの仕事は、顧客の成功を可能にする最適なソリューションを提供することで、それには技術的リーダーシップ、製造、コスト、信頼が含まれるが、最近では地理的な製造の柔軟性も含まれている。TSMCは、顧客の要求に基づいて、成功に必要な最適なソリューションを顧客に提供し続けるために、台湾以外の能力を増強している。TSMCの決定は、顧客のニーズならびに各国政府のサポートに基づいている。これは、株主にとっての価値を最大化するためでもある。私たちの決定は、TSMCの長期的な成長のための人材プール、土地、電力、水のニーズにも基づいている」と語っている。

また、米国への進出に関しては、「アリゾナ州に2つの先端半導体工場を建設中である。我々の米国顧客は、TSMCが自身たちのニーズを米国でサポートすることを歓迎し、強力なコミットメントとサポ ートを約束してくれた。2022年12月6日に開所式を行った第1ファブは、2024年に4nmプロセスで生産を開始する予定で、2026年には3nmプロセスで生産を開始する予定の第2ファブの建設も発表した。TSMCアリゾナは、米国で商業的に利用可能な最先端半導体技術を提供し続ける」と述べた。

日本での2番目の工場建設を検討

さらに同氏は、日本への進出について「台湾以外の成熟したノードの生産能力の構築も検討している。日本では、28/22nm、さらには16/12nm技術を利用するスペシャルティ・テクノロジー・ファブを熊本に建設している。量産開始は2024年後半を予定している」としたほか、「顧客からの需要と政府の支援レベルが理にかなっていれば、日本に2つ目の工場を建設することも検討している」と述べたが、この新工場の建設場所や時期、生産品目などには言及しなかった。

加えて、噂されている欧州進出について、「顧客やパートナーと協力して、顧客からの需要と政府の支援レベルに基づいて、自動車固有の技術に焦点を当てた特殊な製品を製造する工場を建設する可能性を検討している」と述べたほか、中国については、中国内顧客のサポート強化に向け、計画どおり南京工場での28nmプロセスを拡張し、引き続きすべての規則と規制に完全に従って稼働させるとした。先端プロセスの中心地である台湾への投資も継続するとし、すでに3nmプロセスが台南にて量産に入ったとするほか、また、新竹と台中での2nmの量産に向けた準備と開発が順調に進んでおり、予想以上の性能が確認されており、リスク生産は2024年、大量生産は2025年を予定していると明言した。

なお、同氏は「生産能力は一夜にして生まれるものではなく、構築するのに時間がかかるが、TSMCでは顧客の信頼を高め、将来の成長の可能性を拡大するために、グローバルな製造拠点の拡大に取り組んでいる。顧客からの需要と政府のサポートレベルに応じて、28nm以下の海外生産能力は、今後5年で全体の生産能力の20% 上になる可能性がある」と述べた一方、海外ファブのイニシャルコストについて、「TSMCの台湾ファブより高くなってしまう。私たちの目標は、コストギャップを管理し、最小限に抑えることである。私たちの価格設定は、地理的な柔軟性の価値も含め、私たちの価値を反映するために引き続き戦略的に決める。同時に、規模の経済や製造技術のリーダーシップという競争上の優位性を活用して、継続的にコストを削減することに努める。また、各国政府の支援を確保するために、引き続き各国政府と緊密に連携していく。このような措置を講じることで、TSMCはどこで事業を行っていても、最も効率的で費用対効果の高いメーカーであり続けながら、海外ファブのより高いコストを吸収できることになる」と述べており、台湾外での工場建設やその後の運営は、建設および製造コストが高いことから、各国政府の補助金に依存せざるを得ないということを示唆していた。