Samsung Electronicsが後工程(パッケージング)の試作ラインを日本に設置する方向で検討していると、事情に詳しい複数の関係者の話としてロイターが報じている。

この計画はまだ初期段階であり、Samsungでは社内でさまざまな選択肢を検討しているという。同じ先端プロセスの提供で競うTSMCは、すでにつくば市に後工程の試作ラインを含む3DIC研究開発センターを設置済みで、Samsungの動きはそれに続くものとなる。

Samsungは、神奈川県横浜市鶴見区にあるサムスン日本研究所近くに候補地を探しており、関係者によると、時期を含めて詳細はまだ確定していないが、投資規模は数百億円ほどだとしている。日本には先端の素材や製造装置の企業が多数あり、最先端技術を開発する上でそうしたサプライヤと連携しやすく、エコシステムを構築しやすいうえに、人件費が韓国よりも安いため、日本が候補地の1つになっているという。ただし、今回の報道に対し、Samsungは正式なコメントを出していない。

日本での研究開発強化に向けて組織変更を実施

Samsungは最近、日本に半導体研究組織「DSRJ(Device Solutions Research Japan)」を設立し、日本国内に分散していた研究開発機能を1か所に集約。統合運営することで、相乗効果を生みだすとともに、日本の先端半導体技術や研究人材確保に向けた投資も増やす計画を立てているという。

Samsungの半導体事業部門であるDS(Device Solutions)部門の慶桂顕(キョン・ゲヒョン)社長は3月6日、平澤(ピョンテク)事業所にソニーグループの吉田憲一郎 会長兼社長CEO(2023年4月1日より会長CEO)らを招き、半導体分野での協業を話し合ったという。吉田氏らは、韓国の天安(チョナン)ならびに温陽(オニャン)にある後工程工場も訪問し、先端パッケージング施設の視察も行ったという。Samsungにとって、日本は自動運転車に必要な大容量・高性能半導体の市場となり得るため、電気自動車(EV)に参入したソニーはじめ半導体サプライチェーンでの日本の重要性が増しているという。日韓両政府の関係も修復しはじめており、これまでの状況ではありえないと思われてきたSamsungの半導体製造ラインの日本進出の可能性も出てきた。