TSMCのアジア・欧州セールスおよび研究開発担当シニアバイスプレジデントであるCliff Hou(侯永清)氏が、日本のテレビメディアによるインタビューにおいて、「TSMCは、日本で(熊本で建設中の工場に次いで2番目となる)新たな工場建設を検討している」と発言した。

複数の番組で報じられたHou氏の発言は、新工場建設にあたっては、市場の需要やコストなどを勘案して商業的に見合う投資になるのか、政府の資金的な支援に対応したものになるのか、などを総合的に考慮するといった一般論のほか、日本における第2工場建設については、「現在建設中の熊本工場の効果を見極めた上で、さらなる計画を進める可能性は排除せずに検討しているところである」としている。

また、西村康稔 経済産業大臣は、12月9日の記者会見で、「TSMC幹部が日本で2棟目の工場の可能性について言及したことは承知している。経産省としては大歓迎だ。TSMCの投資計画が具体化していく中で、どのような支援が可能かを考える」と述べたほか、海外からの投資に関して「いくつかの話が持ち掛けられている。こうした半導体投資を、可能な限り促進していきたい」と述べ、積極的に海外企業の投資にも支援していく姿勢を見せた。

日本に先端半導体の研究所の設置を検討するimec

一方、先端プロセスの研究開発のトップ集団に位置するベルギーimecの社長兼CEOであるLuc Van den hove氏は、訪問先の京都にて報道陣に対し、「日本に研究開発拠点の設立を検討している」ことを明らかにした。

imecは、すでにRapidusと研究協力の覚書に調印し、今後、LSTCとも同様な研究協力することにしているが、これらの組織と協力体制を強化するために、日本に研究拠点(いわゆる分室)を設け、多数の研究陣を日本に駐在させて、日本勢を支援する模様である。

imecはすでに海外に研究所をいくつか持っているので、海外進出自体ない話ではない。例えばオランダには、ヘルスケア関係の研究所(オランダの研究機関と合弁のHolst Centre)があるし、米国フロリダには、フォトニクスと高速エレクトロニクスIC開発に注力するimec Floridaを設置。そこでは、セントラルフロリダ大学(UCF)やICAMR(International Consortium for Advanced Manufacturing Research)との提携により、センサ、高速エレクトロニクスやフォトニクスを含む広範なアプリケーションに向けた革新性の高いIII・V-on-Siソリューションの開発と製造のためのファブファシリティを設置してフォトニクスの研究施設を運営している。

実はimecについては、これまでも複数の日本の半導体関連国家プロジェクトの成功に向け、経産省周辺が日本誘致を試み、経産省傘下の研究所と共同研究を行う話が密かに進められていたことがあったという。それらの際は、SCR(スーパークリーンルーム)の利用はじめ契約条件が折り合わず、立ち消えになったという。今回の研究拠点設置についてimecは関係機関と協議中としているが、実現は補助金や土地建物支給などの条件次第だろう。すでに、つくばの産業総合研究所の敷地内には、TSMCの3DIC研究開発センターが、日本政府の補助を受けて進出しており、imecも同様の手法で実現されるのではないかと思われる。なお、まだ予算的な裏付けがないことから、公式な発表には至っていない模様である。