半導体・ハイテク産業市場動向調査会社である中CINNO Researchが、米国商務省産業安全保障局(BIS)が10月に発表した新たな対中輸出規制を受けて、中国の現地半導体メーカーや製造装置市場への影響についての分析結果を発表した。

BISによる新たな半導体輸出規制は、18nmよりも微細なプロセスを採用したDRAM、128層以上のNAND、および16/14nmより微細なプロセスを使用したロジックを製造している中国現地メーカーに影響を与えるが、28nm以上の成熟・レガシープロセスで生産を行っている中国現地メーカーは当面影響を受けない。

現在、中国のウェハ生産能力のほとんどが成熟プロセスであるため、CINNO Researchでは、全体的なウェハ生産能力の増加傾向は今後も変わらないと考えているが、16/14/7nmなど28nmプロセス未満のウェハ生産能力の増加は鈍化する可能性が高いとしている。

また、近年、中国のファブの多くが生産能力の拡大を続けており、その関係から、半導体製造装置メーカーにおける中国市場での売り上げは増加傾向となっている。CINNO Researchの調査によると、世界の5大半導体製造装置メーカーであるApplied Materials(AMAT)、ASML、Lam Research、東京エレクトロン(TEL)、KLAの売り上げに占める中国の割合は2017年には約15%程度であったものが、2021年までに同29%まで増加したという(ASML以外は25%以上で、地域別ではトップ)。

  • 2017-2021年の5大半導体製造装置メーカーの売り上げに占める中国市場の割合

    2017-2021年の5大半導体製造装置メーカーの売り上げに占める中国市場の割合。Semiは業界全体の売上高に占める中国の比率 (出所:CINNO Research)

中国市場では、リソグラフィ、CVD、エッチング、イオン注入、CMP、計測/欠陥検査といった装置の半分以上、特に高度な製造プロセスにおいては米国およびオランダメーカーからの供給であるなど、海外依存度が高いため、BISの対中規制強化後、中国における高度な半導体工場の発展に影響を与える可能性があるという。ただし、その一方で中国地場の製造装置メーカーにとっては、先端装置開発への挑戦であると同時に、チャンスでもあるとの見方も示している。

なお、中国における外資系ファブには制限付きの免除期間(おおよそ1年間)が設けられており、今後、BISによる輸出制限政策の実施に変更があるかどうかは不明であるが、それとは別に中国の製造装置メーカーが、技術基盤を強化し、積極的に独自開発や事業拡張を進めていくことが見込まれるとCINNO Researchでは予想している。