米国商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS)は8月12日(米国時間)、輸出管理規則の内容を一部改定し、3種類の先端半導体技術を輸出管理対象に加えると発表した。8月15日付の米国官報で公示し官報公示日に有効となった。

BISは、米国輸出管理改革法(ECRA)のセクション1758に基づく新興技術および基礎技術の基準を満たす次の3種類の半導体技術を中国はじめ特定国への輸出禁止対象とした。

  • 酸化ガリウム(Ga2O3)とダイヤモンドの超ワイドバンドギャップ半導体技術
  • ゲートオールアラウンド(Gate-All-Around)FET(GAAFET)を搭載した集積回路を開発するために設計されたECADソフトウェア(この規則改定のみ、施行日は官報公示日から60日後の10月14日を予定)

また、半導体以外の技術としてロケットや超音速システムの燃焼器に応用可能なPGC(Pressure Gain Combustion:圧力利得燃焼)技術も指定された。いずれも米国の国家安全保障に不可欠な技術だとしている。

ECRAは、既存の輸出規制でカバーしきれない「新興・基盤技術(emerging and foundational technologies)」のうち、米国の安全保障にとって必要な技術を輸出規制対象とすることを定めるための新たな法律で、明確な「新興・基盤的技術」の定義は未だ固まっていない。

これらの技術は、2021年12月にワッセナー アレンジメント(通常兵器や関連技術などの輸出管理に関する申し合わせ:WA)の42の参加国が管理することに合意した技術群にすでにふくまれるが、米国はさらに、WAで合意された項目を超えて、追加の機器、ソフトウェア、および半導体の製造に使用される技術を含む、より広範な技術の輸出を規制するとしている。

なお、BISは今回、輸出管理対象に加えた半導体分野の新興・基盤的技術と軍事利用との関連について以下のように追加で説明している。

  • 酸化ガリウムとダイヤモンドは、それらを基盤として用いた半導体がより高い電圧や高温などのより厳しい条件下で機能することが可能で、これらの材料を利用するデバイスは、軍事的な可能性を大幅に高める。
  • ECADは、集積回路またはプリント回路基板の性能の設計、分析、最適化、および検証に使用されるソフトウェアツールのカテゴリであり、 ECADソフトウェアは、複雑な集積回路を設計するために、軍事および航空宇宙防衛産業によってさまざまなアプリケーションで使用されている。
  • GAAFET技術アプローチは、3nm以下の技術ノードにデバイスを縮小するための鍵となる。GAAFET技術は、より高速で、エネルギー効率が高く、耐放射線性に優れた集積回路を可能にし、防衛および通信衛星を含む多くの商用および軍事用途を前進させることができる。