台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceよると、世界の各地域・国の12インチ(300mm)相当の生産能力シェアは、2025年までに台湾が43%、中国が27%、韓国が12%、 米国が8%となると見られるという。中でも中国は、300mmファブの建設ラッシュとなっており、2022年比で3ポイントほど増加することが予測されるという。
また、7nm未満の先端プロセスの生産能力に関しては、2025年までに台湾が約69%、韓国が18%、米国が12%、中国が1%を占めると予測している。
さらに、2025年の状況を2022年比で見ると、米国が7nm以下の先端プロセスの生産能力の割合をほぼゼロの状態から10%まで増やすほか、中国が成熟プロセスの割合を高めることが予想されるという。
日本については、経済産業省が日の丸半導体復活戦略を立案し、TSMCの誘致や2nmプロセス以降の実現に向けた日米共同研究開発、2025年をめどとした2nm量産拠点整備などが進められているが、TrendForceによると、これらの政策が進められても日本の市場シェアが伸びるとは限らないとしている。背景には、2025年までに中国での多数の成熟プロセス対応ファブが稼働するほか、米国にて多数の先端プロセス対応ファブが稼働することから、日本に数棟のファブが立ち上がった程度では、シェアを伸ばすことはできないとしている。また、台湾の業界関係者からは日本が2025年までに2nmの量産拠点を整備することは難しいとの見方がでているとする。
CHIPS法による補助金と対中政策
米国連邦議会の上下両院は、8月初旬に「CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)and Science Act of 2022(CHIPS法)」を可決し、法案は正式に立法プロセスの最終段階に入り、バイデン大統領が署名した後に発効されることとなる。
同法案は、ウェハ製造の研究開発や工場建設に対する補助金、税制上の優遇措置などをカバーするだけでなく、追加の対中規制も提示しているという。
具体的には、CHIPS法が米国の半導体産業の競争力を確実に保護するために、米国から補助金を受ける企業は、補助金を受けてから10年にわたって中国での28nm未満のプロセス技術に新たに投資することを禁止することを要求しているという。TrendForceは、TSMCとSamsungともに、米国と中国の両方に投資を行っているとしており、CHIPS法がこれら2社の中国への新規投資をどのように制限するのか、注視していくとしている。
また、先端プロセスで使用される米国製半導体製造装置を「エンティティリスト」に記載された企業に販売することを米国は事実上禁止していることから、ほとんどの中国ファウンドリは、28nm以上の成熟プロセスの生産能力拡大を進めている。また同時に、中国は米国から完全に独立した製造ラインを実現するために、国産の半導体製造装置の開発にも注力しているという。ただし、TrendForceは、米国および同盟国の装置メーカーが、特定の主要プロセス向け装置のシェアを握っており、中でも米国製の製造装置は、7nm未満の先端プロセスで重要であり、短期間で脱米国依存を実現した生産ラインを中国が実現することは難しいと指摘している。
SMICは、2020年に「エンティティリスト」に記載される前からDUV露光技術を用いたN+2(7nm)プロセス技術の開発を行っていた。最近、そうした技術を活用したであろうマイニング向け7nmプロセスチップの量産が確認されたというが、TrendForceでは、7nm未満の微細プロセスチップは物理的な限界に近づいているため、EUVではなくDUVで製造しようとすると、チップの製造手順が複雑になり、歩留まりとコストパフォーマンスに影響が出るとしている。また、マイニングチップの構造は、他のロジックチップに比べて比較的シンプルであり、同様のプロセスを用いてもより複雑なロジックチップの製造は難しいだろうとしている。