日本IBMは6月23日、ダイキン工業と「冷媒循環デジタルプラットフォーム」構築に向けた実証実験を開始すると発表した。

同プラットフォームは、空調機器に用いられる冷媒を循環利用することを目的としたものだ。実証実験では、プロトタイプを用いてサービスとしての効果や実現性、データの取得やビジネスモデルを検証し、今後の本番開発に向けた要件整理などを両社で連携しながら進める。

  • 「冷媒循環プラットフォーム」の画面。ビル別の冷媒フロン利用状況を確認できるインターフェース

具体的には、すでに設置されているダイキン工業の空調機器の入れ替え、メンテナンスにおいて回収される冷媒の再生の取り組みから開始し、再生冷媒を試験的に流通させ、冷媒の製造・使用から回収・再生におよぶ循環サイクル全体の情報をプラットフォーム上で収集・管理する。

同プラットフォームでは、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンの来歴管理を支援する「IBM Blockchain Transparent Supply」が活用される。ブロックチェーンを用いて再生冷媒のリサイクル証明、リサイクルチェーン可視化を実現し、来歴の透明性を担保し、ユーザーの安心感醸成につなげていくことで、再生冷媒の市場流通の促進を目標とする。

また、ダイキン工業のフロン抑制法の点検管理ソフト、および現在開発中の冷媒充填・回収業者向けソフトとのシステム連携により、フロン排出抑制法にも対応し、冷媒漏えい防止、冷媒回収率の向上も目指す。

空調機器の室内機と室外機の間で熱を運ぶために使用されている冷媒のうち、多くの先進国で使われている主力冷媒「HFC(ハイドロフルオロカーボン類)」は、オゾン層破壊係数はゼロだが、大気に排出されると地球温暖化に影響する。そのため、「モントリオール議定書」に基づいて、空調機器に使用されるHFC冷媒の生産・消費量の段階的な削減が世界的に進められている。

また、国内において「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」による空調機器の使用、廃棄時における冷媒の漏えい防止・回収義務が強化されているが、国内における冷媒使用機器の廃棄時の冷媒回収率は、2020年時点で41%に留まっており、冷媒のライフサイクル全般での漏えい対策が急務となっている。