弥生は6月3日から27日まで、全国7拠点とオンライン会場で会計事務所向けイベント「弥生PAPカンファレンス 2022」を開催中だ。このほど、東京都で同イベントが開催されたので、その様子を現地からお届けする。

  • 東京会場では100名以上参加していたようだ

    東京会場では100名以上参加していたようだ

弥生PAPカンファレンスは、会計事務所などからなる「弥生PAP」の会員を対象に催されるイベントだ。弥生PAPとは、同社の製品やサービスを利用して中小企業ならびに個人事業主などを支援する会計事務所とのパートナープログラムを指す。弥生PAP会員とのパートナーシップを強化し、事業者の発展に寄与する目的で実施しているという。

今回の主となるトピックは、2023年10月から開始が予定されている適格請求書等保存方式(インボイス制度)だ。2021年10月より適格請求書発行事業者の登録申請手続きが開始され、会計事務所においても免税事業者への対応や業務負担の増加など、影響は避けられない。

弥生の代表取締役社長である岡本浩一郎氏は「インボイス制度が2023年10月に始まるからといって、それから対応を開始するのでは遅い。インボイス制度が始まる時には業務を安定的に運用できるようになっている必要があるので、実はもう待ったなしの状態だ」と対応を促していた。

また、「デジタルインボイスの導入によって中長期的には圧倒的な業務効率化を達成したいと思っているが、会計事務所としては今後数年間は業務負荷が高まらざるを得ないだろう。当社もなんとか力になりたい」ともコメントしていた。

  • 弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

    弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

インボイス制度の改正にあたっては、売り手と買い手のどちらもが法令に基づく対応が必要になる。売り手は発行したインボイスの写しを紙または電磁的記録で保存する必要がある。一方で、買い手は受領したインボイスの保存が必要になるほか、3万円未満の取引についても「帳簿のみ保存」での仕入税額控除の適用を許容する特例が廃止される。

弥生が代表幹事を務めるデジタルインボイス推進協議会(EIPA)では、国際標準仕様「Peppol」に準拠したデジタルインボイスの実現を目指している。同協議会が構想するデジタルインボイスにおいては、法令への対応のみならず業務のデジタル化が見込めるという。インボイスの発行や受領に応じた自動仕訳や支払処理、入金消込まで対応できるようになる仕組みを目指す。

さて、国際的な標準仕様となっているPeppolは、デジタルドキュメントをネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」を規定している。ヨーロッパを発祥とし、現在は世界30カ国以上がPeppolをベースとする仕組みを採用しているという。

Peppolのユーザーは、アクセスポイントを経てPeppolネットワークに接続することで、同ネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやり取りできるようになる。岡本氏は「メールアドレスを持っていれば誰とでもメールをやり取りできるようなもの」だと説明していた。

デジタルインボイスが実現すると、売り手事業者が請求書を発行する際に一意のIDが発行され、同一のIDを銀行への振込依頼時から入金時まで使用できるようになる。さらには、売掛計上の入金消込まで自動で行われるようになるとしている。

  • Peppolのイメージ

    Peppolのイメージ

弥生ではインボイス制度への対応と同時に、2021年1月に大幅な改正を迎えた電子帳簿保存法(電帳法)への対応も進める考えだ。インボイス制度も電帳法も証憑を取り扱うという点において共通する法令であり、両者を同時に満たせる仕組みが必要だとしている。

同社はこの2法令を同時に満たすためのサービスとして、「証憑管理サービス」のベータ版を5月にリリースした。クラウド上で証憑を管理可能なサービスであり、OCR(光学文字認識)による文字の読み取りも可能。請求書や納品書、見積書の保存に対応し、秋ごろには領収書にも対応予定だ。取り込んだ情報は法令に準拠して保存するため、ベータ版ではあるが実務での利用も可能とのことだ。

同サービスは同社の「あんしんサポート」加入者や、クラウドアプリの契約者であれば無償で利用を開始できる。弥生PAP会員も自社利用が可能であり、今後は顧問先の証憑管理へPAP会員がアクセスできるような機能も追加する予定。

  • 証憑管理サービス

    証憑管理サービス

ここで、岡本氏は改めて「当社は業務のお手伝いではなく、事業のお手伝いをしたい」と強調した。足元での法令改正に対応するだけにとどまらず、未来を見据えたデジタル化の推進に加えて、企業から事業の承継まであらゆるニーズへの対応を表明していた。

同社は2021年3月に「起業・開業ナビ」を、同年10月には「資金調達ナビ」を、12月には「税理士紹介ナビ」をそれぞれリリースしている。さらに今夏、「事業承継ナビ」をリリースする。これによって、企業から事業承継までスモールビジネスのあらゆるステップを一貫して支援できるようになる。

同時に、事業者の事業承継に関する課題に応えるメディアとして「弥生のあんしん M&A」を開設する。弥生PAP会員は無料で利用でき、M&A専門会社に頼らずともM&A仲介業務ができるようになるため、弥生PAP会員としては、これまで経営支援を行ってきた顧問先のM&Aを担当できることになる。

岡本氏は「当社の価値は当社だけで発揮できるものではなく、弥生PAP会員あってこそ。両者がパートナーとなって、その先のお客様の業務だけでなく事業そのものを変えていきたい」とコメントしていた。

  • 弥生のあんしんM&A

    弥生のあんしんM&A