独ハンブルクにて開催中のHPCに関する国際会議「ISC2022」に合わせて、第59回目(2022年6月版)となるスーパーコンピュータ(スパコン)の性能ランキング「TOP500」が発表された。
それによると、トップは米ORNL(米オークリッジ国立研究所)に設置された次世代スパコン「Frontier」で、LINPACK性能は1102PFlops=1.102ExaFlopsで、ついにエクサスケールスパコンが実際に登場することとなった。
FrontierスパコンはAMDの第3世代EPYC(3D V-Cacheを搭載したカスタム版。64コア/2GHz)とCDNA2アーキテクチャベースのGPU「AMD Instinct MI250X」で構成されており、873万112コアで消費電力2万1100kWで1.1ExaFlopsを達成したという。
2位はこれまで4期連続で1位を堅持してきた理化学研究所(理研)が2021年3月より共用を開始したスパコン「富岳」。LINPACK性能は、前回同様のフルスペック(432筐体、158,976ノード、コア数7,630,848)での計測にて442.01PFlops(実行効率82.3%)と、前回から変更はない。
3位は欧州連合(EU)のスパコン共同事業体(EuroHPC Joint Undertaking)のうちの1で、フィンランドの教育文化省が運営する非営利の国有企業CSC - IT Center for Scienceによる「LUMI」。2021年より稼働をしていたが、構成をFrontier同様のAMDの第3世代EPYCカスタム版とInstinct MI250Xへとアップグレードすることで、プリ・エクサスケールに位置づけられた。LINPACK性能は、151.90PFlopsとなっている。
4位は前回2位の米ORNLのスパコン「Summit」。LINPACK性能は148.6PFlopsとこちらも富岳同様、前回から更新はない。5位以降は、前回3位だったローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」でLINPACK性能94.64PFlopsで5位に、前回4位だった中国のNational Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)の「神威・太湖之光」がLINPACK性能93.01PFlopsで6位に、前回5位だった米National Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)に設置され、NVIDIA A100を搭載したスパコン「Perlmutter」がLINPACK性能70.87PFlopsで7位に、前回6位だったNVIDIAのスパコン「Selene」がLINPACK性能63.46PFLopsで8位に、前回7位だった中国National Super Computer Center in Guangzhouの「Tianhe-2A」が61.44PFlopsで9位と、FrontierとLUMIが入ってきた分、それぞれ順位を下げる形となった。
また10位は仏GENCI(Grand Equipement National de Calcul Intensif)がHPCリソースを提供するCINES(国立高等教育情報処理センター)の「Adastra」が新たにランクイン。こちらもFrontierならびにLUMI同様、AMDの第3世代EPYCカスタム版とInstinct MI250Xの構成を採用し、LINPACK性能46.10PFlopsを達成している。
また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回は富岳併せて14システムがランクインしていたが、今回は富岳含め12システムと数を減らしている。
- 19位(前回16位):日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」(22.21PFlops)
- 20位(同17位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)
- 35位(同31位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.592PFlops)
- 51位(同48位):海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.99PFlops)
- 54位(初):研究機関とのみ記載。HPE Apollo 6500システム(AMD EPYC 7543 32C 2.8GHz、NVIDIA A100)を採用したシステム(9.46PFlops)
- 64位(同59位):東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.12PFlops)。
- 68位(同63位):核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(7.89PFlops)
- 81位(同73位):名古屋大学の「Flow」(6.62PFlops)
- 87位(同78位):日本原子力研究開発機構(JAEA)と量子科学技術研究開発機構(QST)の共用スパコン(6.16PFlops)
- 88位(同79位):大阪大学のクラウド連動型高性能計算(HPC)・高性能データ分析(HPDA)用スパコン「SQUID(Supercomputer for Quest to Unsolved Interdisciplinary Datascience)」のCPUノード(6.11PFlops)
- 94位および95位(同86位および87位):気象庁のスパコン(5.730PFlops)
なお、前回39位に入っていた東京大学(東大)-筑波大学の共同運用スパコンで、東大の柏キャンパスの最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC:Joint Center for Advanced High Performance Computing)に設置されていた「Oakforest-PACS」(13.555PFlops)は2022年3月31日でシステムを停止させたため、リストから外れている。