KDDI総合研究所と関西大学システム理工学部は5月9日、光波を記録して再生する立体映像技術であるホログラフィーについて、1枚の印刷データに複数コマ分の情報を多重化して埋め込み再生する技術を開発したと発表した。ホログラフィーは、光の強度や色に加え位相情報のすべてを記録でき、「あたかも実物体を目視しているような印象を与える立体映像表示」を実現する技術を指す。
同技術により、ホログラフィーのサイズや視域角を確保するため、表示が静止画に限定されるという従来技術の課題を解決したという。縦横18センチメートル四方のサイズと水平垂直30度の視域角を維持したままカラーアニメーション化に成功したとのことだ。
両者は同技術について、ホログラフィーの表現の幅を広げるものとしており、立体映像サイネージを活用した臨場感の高い映像広告などBeyond 5G/6G時代に期待されるメディア体験の実現に貢献することが期待できる。
両者は今回、コンピュータを用いたホログラフィーによって作成される「CGH(Computer-Generated Hologram:計算機合成ホログラム)」の進展を試みている。印刷する画素数を増やすことなく1枚のCGHデータに複数コマ分のアニメーションの情報を多重化して埋め込み再生する技術を開発し、カラーアニメーション化に成功したとのことだ。
従来のCGHの再生には画面に表示されるデータに外部から光を当てる必要があるが、同技術では印刷する1枚のCGHデータに複数コマ分のRGB波長の情報を空間的に多重化し、かつそれぞれのコマに対応するCGHデータ領域に対して高精度に光を照射する方式を採用している。
具体的には、光を照射する光学系の解像度などの特性に合わせて波長ごとの画面の占有面積といった多重化用パラメーターを最適化することで、ミリメートル以下の精度で対象のコマに対応するCGHデータ領域のみを選択し光を当てることを実現したという。
これにより、1枚のCGHデータを用いてそれぞれのコマを正確に再生することが可能となり、表示が静止画のみに限定されるという従来技術の課題を解決した。同技術は今後立体案内標識の表示切り替えや、立体デジタルサイネージにおけるアニメーション表示など、CGHの活用シーンの拡大が見込まれる。