マイケル・キング氏は昨年9月1日付で、SAS Institute Japanの代表取締役社長に就任した。創業以来、非公開企業を通してきた同社だが、米国本社は2024年までに新規株式公開(IPO)を実行する準備に入る意向を発表しており、SASの今後が気になるところだ。こうした背景を踏まえ、キング氏に2021年の総括と2022年の抱負について聞いた。

企業はデータを活用すれば、変革をドライブできる

キング氏は1998年に日本でのキャリアをスタート、その後、シトリックス・システム・ジャパンの代表取締役、オートデスクの代表取締役、楽天市場の最高情報責任者 (Chief Information Officer of ICHIBA)、データサイエンス コンサルティング部 ジェネラルマネージャーなどを歴任した後、現在に至る。

キング氏は、SAS Institute Japanの代表取締役社長に就任することを決めた理由について、次のように語った。

「SASジャパンは36年間、日本のビジネスを支援してきました。その中で、SASはデータを活用することで、お客様のイノベーションを推進してきました。SASのカルチャーは『人ありき』で、ピープルを重要視しています。これは、私のポリシーにも合致しています。人の可能性を信じれば、いろんなことができると思っています。SASには、長い間務めている社員が多く、そうした人たちを中核として、このカルチャーを発展させていきたいです」

続けて、SASの社長として、注力したいことについて尋ねてみた。すると、キング氏は「ドライブしていきたいことは2つある」と語った。

1つは、データのパワーを伝えることだ。「楽天時代に、データのパワーを実感しました。データのパワーを活用することで、企業は成長し、変革をドライブできます。楽天で得た知識をすべての人に展開したい」とキング氏。伝道師として、SAS製品を介してデータのパワーを活用することで、競争力や生産性を改善できることを厚く語っていきたいという。

もう1つは、SASジャパンのブランドの認知度を高めることだ。キング氏は、「SASは金融系やライフサイエンス系が強いというイメージがありますが、これからは製造や公共、中堅中小企業にもアピールしていきます。また、SASと一緒に成長できるというメッセージを出すことで、もっと新しい世代のファンも作っていきたいです」と話した。

2021年は、製造・公共など新たな市場を開拓

次に、2021年のビジネスについて聞いてみたところ、キング氏は次のように語った。

「既存のお客さまに対しては、われわれがどんなビジョンを持っているかを説明してきました。その中で、『モダナイゼーションを意識する必要がある』『クラウドを外すことはできない』というメッセージを伝えることができました。また、ソリューションの拡充も行いましたが、製造や公共など新しい分野においてもビジネスチャンスがあることを証明できました。新型コロナウイルスの登場により、新しい世界が訪れました。われわれも販売、サポート、コミュニケーションについて、新しいやり方を提供してきました」

昨今、企業が成長を遂げる上で、DX(デジタルトランスフォーメーション)が必須となっているが、その成功のカギを握っているのがデータの活用だ。SASは創業以来、データ活用にフォーカスしてきたが、SASしかできないデータ活用に向けたサポートとはどのようなものなのだろうか。

キング氏は「この5年の経験をベースに考えると回答は簡単」として、次のように話す。

「データの価値を考える場合、データを全体として使ったときにどんな価値を生み出すのかが重要になります。データを分析した結果として出てくるのがインサイトであり、アクションや改善につながります。このプロセスは繰り返し使えなくてはいけません。プロセスを回す上で必要になるのが人、ドメインの知識です。さらに、クオリティ、サポート、セキュリティも外してはいけませんが、SASにはこれらすべてがそろっています」