国内でのクラウドネイティブ活用の推進を目的としたテックカンファレンス「CloudNative Days Tokyo 2021」が11月4日・5日に開催される。参加費は無料で事前登録制となる。

同カンファレンスはインフラエンジニア、SRE、アプリエンジニアなどの開発者や、CTO/CIO、システムインテグレーターなどを対象としており、2020年に引き続き、オンラインで開催される。

9月29日にはCloudNative Days Tokyo 2021の記者説明会が開かれ、キーノートセッションの見所やコミュニケーション促進のための新たな取り組みのほか、2022年以降に目指すカンファレンスの在り方などが紹介された。

CloudNative Days実行委員会メンバーであるサイバーエージェントの青山真也氏は、説明会の冒頭でクラウドネイティブを取り巻く動向に触れる。クラウドネイティブの活用は着実に広がっている。「コンテナやKubernetesを始めとした、クラウドネイティブに関連する技術スタックをプロダクションで利用することが一般的になってきており、ほとんどの企業で導入の検討や導入が進められていると言っても過言ではない」と青山氏は話す。

  • 青山真也氏

その一方で、クラウドネイティブに取り組んでいない人もおり、すでに取り組んでいる人との間に経験・知見・疑問・悩みなどの差が生まれつつある。そうした動向を背景に、今年はつながりを重視し、カンファレンスのテーマを「+Native ~ともに繋げるクラウドネイティブの世界~」としている。

キーノートセッションの見所として、一部の講演テーマが紹介された。1つはみんなの銀行と三菱UFJインフォメーションテクノロジーによる、金融機関でのクラウドネイティブの取り組み事例だ。みんなの銀行のセッションでは、「フルクラウド」での銀行システム実現に至るまでの話や今後の組織の展望までが語られる。三菱UFJインフォメーションテクノロジーのセッションでは、同社が提供するお金の自動管理アプリ「Mable」の開発において、AWSやOpenShiftを活用したビジネス面・システム面の背景や設計における実体験、今後のロードマップが紹介される。

もう1つが、メルカリ、ミクシィ、ゼットラボによる、Web系企業の一歩進んだクラウドネイティブな取り組み紹介だ。ミクシィは早い段階からKubernetesをベースにしたPlatformを構築してきており、Platformのセキュリティに対する取り組みが話される。ミクシィは自社サービスの「みてね」のSREチームによる、Kubernetesへの移行やObservavilityをどのように実現して安定化を行っているか紹介する。ゼットラボはコンテナやKubernetesを用いたステートフルアプリの実行方法を、従来の方法と整理しながら解説する。

スポンサーセッションを含め、6トラック・79セッションが設けられるほか、カンファレンスで学んだ技術を実際に「試して」経験することができるハンズオンイベントも実施される予定だ。

参加者同士の双方向なコミュニケーションを促進するため、CloudNative Days Tokyo 2021では昨年導入したオンラインホワイトボードツールの「miro」に加えて、ウェブ上のアバターを使ってコミュニケーションが取れるバーチャル空間「oVice」(オヴィス)も導入する。

oViceでは2次元のバーチャル空間上のアバターを自由に動かして、相手のアバターに近づくことで話しかけることができる。CloudNative Days実行委員会メンバーであるフューチャーの伊藤太斉氏は、「懇親会で偶然会った知り合いに話しかけたり、近くにいる登壇者に声をかけてみたりと、オフラインの感覚のコミュニケーションをオンラインでも実現したく、今回oViceを導入した」と説明する。

  • 伊藤太斉氏

2020年は多くのイベントやカンファレンスが、オフラインからオンライン開催へと切り替わったが、CloudNative Daysではオンライン化にあたり、プラットフォームを独自開発した。CloudNative Days実行委員会メンバーであるHashiCorp Japanの草間一人氏は「動画視聴、参加登録、タイムテーブル閲覧、参加者コミュニケーションなどをすべて含めてプラットフォームと考えている。どうせやるなら、オンラインならではの仕組みを取り入れたいし、メンバー間でアイデアも出ていたこともあり、その利点を生かすべく独自開発を決めた」と明かす。

  • 草間一人氏

開発にあたってはユーザー体験を重視し、リリースと改善のサイクルを素早く回せるようにするため、当初はRuby on Railsを使ってHerokuにデプロイする形で公開を進めた。そして、チームメンバーが増え、必要な機能が追加される中で、徐々にコンテナやKubernetesを採用したりオブザーバビリティを強化したりと、クラウドネイティブの要素を追加していった。

クラウドネイティブ採用でのメリットは、リアルタイムのリリースがやりやすくなったことだという。システムに不具合はつきものだが、カンファレンスやイベントの場合、不具合の発覚は往々にしてイベント開催中に起こる。カンファレンス開催中でも、すぐに修正してリリースできる仕組みを実装するため、CloudNative Day実行委員会はクラウドネイティブ技術を活用した。

2022年以降のカンファレンスについて、CloudNative Day実行委員会はオフラインとオンラインの要素を組み合わせたハイブリッドイベントが出てくると予想する。今後はOMO(Online Merges with Offline)を体現するプラットフォームの実現を目指す。草間氏は、「オンとオフの垣根をなくしてシームレスなユーザー体験を実現したい。登壇者と参加者ともに、どこからでも、どんな手段でも、リアルタイムやアーカイブに参加できてシームレスにコミュニケーションが取れる世界が目標だ。実現するうえで重要なのはあくまでチームと開発文化。クラウドネイティブはそれらを下支えをするものだ」と語った。