台湾立法院(台湾最高の立法機関)の蔡其昌副院長が、中部科学園区管理局の許茂新局長らとともにTSMCの中部科学園区にあるFab 15を9月2日に訪問、近隣している台中高爾夫球場(台中ゴルフカントリークラブ)や軍用地、政府財政部国有財産署の公有地など併せて約100haの用地への2nmファブの建設を打診したと台湾の経済紙である經濟日報が報じている

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    TSMC Fab 15 (出所:TSMC)

TSMC側は、「工場設置場所の選定にはさまざまな要素を考慮し、いかなる可能性も排除しない」とコメントしたという。これは、TSMCが日本やドイツへの進出の可能性に関する質問への答えと同じである。また、従来からの工場拡張のペースを維持し、各科学園区管理局と、新竹、台中、高雄などで半導体工場に適した用地取得の検討を続けていくことも表明したという。

TSMCはすでに2nmファブの建設地を新竹に決定済み

実のところ、TSMCはすでに台湾北部の本社近くの新竹科学園区宝山地区に2nmプロセス採用ファブ(Fab 20)の製造棟を4棟(フェーズ1~4)建設する計画で、当局の環境アセスメントも終了して2022年上半期にも着工する予定としている。まず2023年下半期に2棟が完成し、2024年下半期から量産を開始し、全4棟の量産開始は2025~26年ごろになる見込みで、最終的な月産能力は10万枚以上と予想されている。ただし同社の劉徳音(Mark Liu)董事長は、土地が不足すれば、台中の既存工場近くに工場を拡張する考えを持っていると經濟日報は伝えている。

同社は従来、技術ノードごとに、台北(新竹)、台中、台南とファブを設置してきたが、これでは地震、火災、水不足などの非常事態に対するリスク管理の立場からは不十分なために2nmファブについては、すでに決めている台湾北部だけではなく、中部にも展開する可能性があるのではないかと台湾半導体業界関係者は見ている。

独政府がTSMCに対する工場建設助成金を用意する動き

独政府のペーター・アルトマイヤー経済相は9月1日、独最大の半導体および関連企業密集地であるドレスデンを訪問。半導体業界の代表者と会談し、政府として、半導体サプライチェーン再構築に向け、50億~100億ユーロの助成金を出し、複数の半導体前工程工場を誘致する計画であると述べたと、こちらも經濟日報が報じている。

欧州政府の目標は、同地域での半導体生産の世界市場シェアを現在の9%から2030年までに20%に増やすことであり、欧州および独政府は半導体工場を建設するコストの20%から40%を助成するとアルトマイヤー経済相は語ったという。

ただし、ドイツは9月26日に連邦議会選挙(総選挙)を控えていることから、現政権は補助金の支給に対する予備決定はできても、次の政権がそれを実行するためには、選挙後の連立政権の構成を決定したあとになりそうだという。

なお、現在、TSMCのほか、ファウンドリとしてのIntelが、ドイツへの工場進出を検討しているとされるほか、地元の半導体メーカーであるInfineon Technologiesや、元々ドレスデンに工場を有するGlobalFoundries(GF)がファブを拡張する形で、独政府の要請にこたえる意欲を見せていると言われている。