Lattice Semiconductorはオンラインイベントの形で同社の新製品「CertusPro-NX」を発表した。このオンラインイベントのリプレイはこちら(要登録)から確認できるが、その概略をご紹介したい(Photo01)。

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    Photo01:最初に挨拶に立ったJim Anderson氏(CEO兼President)。2018年8月に就任したが、LatticeのCEOとしてお目にかかるのはこれが初めて(それ以前はAMDのSVP&GM、Computing&Graphics Businessであり、AMDのイベントで山ほど会っている)

さて、Latticeは2019年末に28nm FD-SOIを利用した「Nexus Platform」と、その第一弾製品となる「CrossLink-NX」を発表、これに続いて2020年6月には「Certus-NX」を、そして2020年12月には「Mach-NX」と半年に1回のペースでNexus Platform製品を投入し続けており、今回のCertusPro-NXは第4弾となる形だ(Photo02)。

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    Photo02:これまでの流れを踏まえると、第5弾の発表は2021年12月ということになる

さてその第4弾となるCertusPro-NXだが、こちらは汎用FPGAの位置づけである。言わばCertus-NXの上位製品に当たる格好だ(Photo03)。

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    Photo03:CertusPro-NX概略図。FPGA Fabricが100Kまで増やされ、ArtixやCycloneと競合できるレンジに入って来たというのが最大の特徴かもしれない

ただ以前のCertus-NXが汎用とは言いつつ、外部高速LinkはPCIeのみで、速度も5Gbpsどまりだったのが、今回は10Gbpsに増強され、10GbEやPCIe、DP/eDP、SLVS-EC、CoaXPress(CXP)などさまざまなプロトコルに対応し、またProgrammable I/OはLPDDR4にも対応するなど、外部I/Fの強化も目立つところである。

この外部I/Fの帯域を競合製品と比較したのがこちら(Photo04)。100K LUTクラスのFPGAとしては強力な外部I/Fを搭載している、というのが第1のアドバンテージであるとする。

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    Photo04:Artix-7はXC7A100Tでトランシーバは6.6GT/sec、Cyclone V GTは5CGXC5で、トランシーバそのものは3.125Gだが、それとは別にPCIe Gen2のHard IPが搭載されており、こちらとの比較と思われる

2つ目の特徴は低消費電力である。もともとNexusシリーズはすべてSamsungの28nm FD-SOIで製造されており、それもあって消費電力はかなり低く抑えられているが、これはSerDesにおいても同じことであり、5G/10Gのトランシーバを利用した場合のシステム全体の消費電力も低い、というのが同社の主張だ(Photo05)。

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    Photo05:この辺はTSMC 28nmのArtix-7やTSMC 28nm LPのCyclone Vよりは当然アドバンテージはあるだろう

実際イベントでは動作デモが行われ、消費電力が低い事のアピールが行われた(Photo06~08)。

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    Photo06:ターゲットは完全に従来Latticeが得意としていたマーケットだが、昨今ではEthernetの高速化に向けてより高速なFPGAが必要とされていたところでもある

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    Photo07:上からCertusPro-NX、Artix-7、Cyclone Vの評価ボードで、これに10GのEthernetを繋いで左のEthernet Testerとループバックテストを行った際の消費電力が右のモニターに示されるという仕組み

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    Photo08:表示された消費電力。Cyclone Vが1100mW、Kintex-7も1000mWほどの消費電力なのに対し、CertusPro-NXは200mW程度に抑えられている

3つ目は性能。FPGAセルの性能そのものの比較は当然難しいが、例えばAIのInferenceであれば、どの程度のメモリが搭載されているか、が1つの性能の目安になりやすい。CertusPro-NXは最大7.3Mbit分のEmbedded Memory Blockを搭載しており、必要ならさらに外部にLPDDR4経由で増設もできる(Photo09)。

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    Photo09:Artix-7(XC7A100T)は4860Kbit、Cyclone V GT(5CGXC5)はM10K Memoryが4460Kbitと、MLAB Memoryが424Kbitである

イベントでは実際に顔認識デモが実施され、スムーズにSegmentationとIdentificationが行えることを示した(Photo10,11)。

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    Photo10:単に顔の位置を認識するだけでなく、その顔の識別まで行うというデモ

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    Photo11:緑枠は認識が出来ている事を示す。右下が認識対象の顔である。ちなみにこの矢印、ボール紙か何かで作られ、モニターに張り付けられているっぽい

4つ目が信頼性である。そもそもNexusファミリーはFD-SOIを利用する関係で放射線に起因するSERが低い(Photo12)訳だが、その強みをフルに生かしたデモがこちら(Photo13,14)。

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    Photo12:動作温度レンジも-40℃~125℃と広く、Qualificationだけ行えばAEC-Q100 Grade 1にも対応しそうである

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    Photo13:放射線設備を使って2時間のα線被爆試験を行ったというデモ。さすがにリアルタイムで2時間待ってられないので、結果はタイムラプスで示されている

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    Photo14:被爆試験の結果。競合品は2時間で100~300回のSEUが発生するのに対し、CertusPro-NXは0である、とする

広範にFPGAが利用される中で、信頼性が要求されるニーズも増えつつあり、CertusPro-NXではこうしたニーズにも十分応えられる、という説明であった。

またパッケージの小ささも相変わらずである(Photo15)。

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    Photo15:この比較はちょっと不公平ではある。例えばArtix-7の場合、XC7A100Tなら15mm×15mmのCSG324パッケージ(Ball Pitch 0.8mm)も用意されているからだ。CertusPro-NXも上で示したように複数のパッケージがあるので、まぁ概ね同等ではあるがCertusPro-NXの方が小さめ、というあたりが正直なところであろう

CertusPro-NXは、Ball pitch 1mmのBGF484(23mm×23mm)、LFG672(27mm×27mm)、Ball pitch 0.8mmのCBG256(14mm×14mm)、BBG484(19mm×19mm)、Ball pitch 0.5mmのASG256(9mm×9mm)の5つのパッケージが用意されるが、このASG256だとSFP+あたりのモジュールに内蔵させることも可能であり、旧来のECP5ファミリで開拓したネットワークモジュール向けに使う事も可能である。

最後がソフトウェア周りの話。先般、Lattice Automateが発表されるなどSolution Stackの拡充に余念のない同社ではあるが、それとは別に(恐らくCertusPro-NXのサポートも含めて)Lattice Radiant 3.0も同日発表された

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    Photo16:SERDES analysis toolなど新機能の追加のほか、実行時間の15%削減やデザインパフォーマンスの7%改善など、細かな改良もRadiant 3.0で行われている

CertusPro-NXは、52K Logic Cellの「LFCPNX-50」と96K Logic Cellの「LFCPNX-100」が第一弾としてラインナップされている。量産出荷開始時期や評価キットの出荷時期などは現時点では不明であるが、そのあたりは追って説明があると思われる。