eBeam Initiativeは、会員42社へのアンケートのほか、マスクメーカーおよび半導体メーカ―のマスクショップ10社に対するマスク製造に限定したアンケートも実施している。
この10社とは、AMTC、大日本印刷、HOYA、Intel、Micron Technology、Photonics(PDMCを含む)、Samsung Electronics、SMIC、Taiwan Mask(TMC)、凸版印刷(ABC順)となっている。また、TSMCは回答者に含まれていない。
Q:2020年時点でマスク描画に使われている各種手法の割合は?:
10社のうち7割以上がレーザ―が使われているとした。マルチビームEBについては、0.2%に過ぎなかったが、2020年に実際にマルチビームで書かれたマスク数は、2019年に比べて2倍以上に増加しており、今後急増することが期待されるという。また、アンケート調査によると、マルチビームマスク描画機での平均描画時間は12.14時間だったという。
Q:2020年度(2019年7月~2020年6月)のフォトマスクの製造歩留まり
2020年度の全マスク(EUV、交互位相シフト、減衰位相シフト、バイナリーマスクを含む)の製造歩留まりの平均値は94.2%であったという。
EUVマスクを除くと、2019年の製造歩留まりと大差なかったが、EUVマスクについては歩留まりが向上し、2020年に90%の壁を始めて超えた。EUVマスク製造で改善が進み、すでに従来マスク並みの歩留まりが確保できるようになった模様である。
Q:どんなタイプのフォトマスクを2020年度に製造したか?
バイナリマスクが83.4%ともっとも多く、EUVマスクは0.3%であった。10社によるEUVマスクの製造枚数合計は1629枚だったという。
Q:どんな欠陥がEUVマスク製造歩留まりに影響を与えているか?
EUVマスク上の欠陥に対する問いの答えとしては、「透明な欠陥」が39%、「不透明な欠陥」が29%、「裏面パーテイクル」が5%、「そのほかの欠陥」が4%以下という調査結果が報告された。EUVマスクには、ほかのマスクとは異なり、透明な欠陥が多いのが特徴のようである。
Q:2020年度のすべてのマスク上の平均欠陥数は?
マスクメーカー10社のフォトマスク上の欠陥の平均値は以下のようなものとなったという。
- 不透明な欠陥:3.89個/マスク
- 透明な欠陥:1.17個/マスク
- その他 0.53個/マスク
であった。
マスク全体では、不透明な(光を透過しない)欠陥が多いが、EUVマスクに限れば透明な欠陥が多いことが分かった。
このほか、次のようなこともマスクメーカーへの調査により明らかになったという。
- マスク製造では、ガラス基板上のパターン形成にクロムを用いている企業は81%と多数を占めている。その加工をウエットエッチングで行っているのは64%、ドライエッチは36%である。90nm未満の先端デバイス向けマスクに関してもその比率はほぼ同じである。
- EUVマスク製造に使用されたレジストに必要な感光量は、193i用のマスク製造に使用されたレジストの感光量よりも高かった(中央値は61.3μC/cm2対43μC/cm2)。
- 11nmから16nmまでの設計ルールに対応するマスクの TATの平均は9.73日で、32nmから45nmの設計ルールのマスクのTATの2倍以上であった。
EUVマスクやマルチビーム描画に期待
eBeam Initiativeの代表幹事会社である米D2SのCEOである藤村晶氏は、この調査を総括して「これまでのマスクメーカー調査の結果から、EUV技術とマルチビームマスク描画技術が実用化されたということが明らかになっていたが、今回の調査で最先端技術領域でのマルチビームマスク描画機の需要の高まり、曲線図形マスクの実現、マスク検査やペリクルを含むEUVマスク関連分野への投資に期待されている事も分かった。半導体関連産業は 新型コロナウイルスによる負の影響を免れた幸運な産業分野の1つであり、2021年も我々の産業が成長を続けている事を期待している」と述べている。マルチEBのマスク製造への利用を促進するeBeam Initiativeでは、今後も毎年この種のアンケート調査を実施し、9月に発表するとしている。