義務教育を受ける児童に1人1台端末を与え、学校に高速大容量の通信ネットワークを整備することで、公正に個別最適化され、 資質・ 能力を育成 できる教育環境を実現するため、文部科学省が推し進めている「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」。

9月11日の文部科学省の発表によると、8月末時点で、GIGAスクール構想の事業者を選定した自治体は48.4%だという。ただし、8月までに端末の納品が済んでいる自治体となると、2.0%とその数はグッと減る。GIGAスクール構想に対し、2000億円を超える令和2年度補正予算がついているが、年度内に納品まで済まさないと、補助金がおりない。そのため、各自治体は急ピッチでGIGAスクール構想のプロジェクトを進めていることだろう。

そうした中、ヴイエムウェアは今年8月、長野県市町村自治振興組合がGIGAスクール構想への対応として、同社のデジタルワークスペース「VMware Workspace ONE」を採用したことを発表した。同社はどのような戦略の下でGIGAスクール構想に取り組んでいるのか、上級執行役員副社長を務める山中直氏に話を聞いた。

  • ヴイエムウェア 上級執行役員副社長 山中直氏

GIGAスクール構想は「Tech for Good」の一環

文部科学省は「GIGAスクール構想」において整備すべきIT環境の仕様を定めている。学習用端末については、適切な運用を行うため、以下が行える端末管理ツールを導入することが求められている。

  • 端末制御などのポリシーの設定
  • 端末が利用するアプリケーションの配信設定
  • 接続先ネットワークの制御
  • 紛失・盗難時の制御設定

これらの機能を提供できるヴイエムウェアの製品が「VMware Workspace ONE」となる。ただし、GIGAスクール構想は予算が決まっているため、通常の製品の機能を絞った形で提供している。

ヴイエムウェアは米国に本社を構える外資系ITベンダーだが、日本オフィスのGIGAスクール構想の取り組みに対し、米国本社のエンジニアも一役買っているという。山中氏は、「当社のCEOのパット・ゲルシンガーは常々『Tech for Good』を提唱しています。Tech for Goodとは、テクノロジーで世の中をよくするという考え方。GIGAスクール構想もその一環であり、社会貢献のための活動ととらえています」と話す。

  • 文部科学省が目指す次世代の学校・教育現場(具体的イメージ) 資料:文部科学省

アドバンテージは企業のニーズにこたえる機能の高さ

さて、モバイル端末管理(MDM)ツールや統合エンドポイント管理(UEM)ツールは、当然、他のITベンダーも提供しているが、GIGAスクール構想において、「VMware Workspace ONE」はどんな点が評価されているのだろうか。

山中氏は、「VMware Workspace ONE」の競合に対する強みとして、マルチデバイス管理機能を挙げた。例えば、小学校では、低学年には画面に触って操作できるiPadを与え、高学年にはキーボードとマウスで入力を行うWindows搭載PCを与えるケースがある。こういうケースでは、iPadとWindowsを管理しなければならない。「VMware Workspace ONE」はマルチOS、マルチデバイスを利用する企業で利用されており、複雑な運用管理にも耐える設計となっている。

加えて、山中氏は「階層管理ができる点もVMware Workspace ONEが評価されるポイント」と話す。企業では部、課など、いくつもの階層によって従業員を管理するが、学校も学年など、階層を使って管理を行うため、階層管理が役に立つそうだ。

Workspace ONEは企業向け製品ながら、コンシューマー製品の操作性を提供することを売りにしている。山中氏は「先生方はWorkspace ONEによって、自分のスマートフォンを使うような感覚で、校内のIT環境をコントロールすることができるのです」と語った。

デジタルネイティブな子供たちが自由に学べるよう支援

今の小学生、中学生は驚くほど、ITデバイスの操作に長けている。以前、学生時代からインターネットやPCがある環境で育ってきた世代を「デジタルネイティブ世代」という言葉が流行した。だが、今の子供たちは赤ちゃんの頃からスマートフォンやタブレットに触っており、デジタルネイティブ世代よりもITと関わる時期が早まっている。

だからこそ、「GIGAスクール構想によって、子供たちは1人1台端末が与えられることになりますが、学校ではITに関するリテラシーを教えていません。そこで、子供たちが自由かつ安全にITを使えるようにするのがわれわれのミッションです。ITを使う際はリスクがあることも教えていかなければならないでしょう」と山中氏はいう。

「VMware Workspace ONE」では、ユーザーやグループごとに、ポリシーを用いてさまざまな制御が行える。「普段、子供たちは学校を取り巻く塀によって、さまざまなリスクから守られています。それを、デジタルの世界でも実現しなければなりません」(山中氏)

ITはわれわれの生活を大きく変えたが、そのパワーは無限と言える。ITを使えば、世界にも簡単にアプローチできる。そして、無限の可能性を秘めている子供たちがITを使いこなせるようになることで、これまでには考えられなかったようなことも成し遂げるかもしれない。それが安全に実現されるように支援するのが大人の役目ともいえる。GIGAスクール構想によって、日本の子供たちが世界に羽ばたけるよう、見守っていきたい。