NECは9月1日、電力中央研究所(以下、電中研)の協力のもと、コンクリート電柱に共架している既存の通信用光ファイバを振動センサとして活用する光ファイバセンシング技術やAI技術を応用した実証実験を実施し、振動データから電柱のひび割れの有無を判定することに成功したと発表した。

  • 正常電柱と劣化電柱の比較

同社によると近年、国内の電力送配電事業者においては、送配電設備の保全・工事の担い手不足や、災害時の設備被害の状況の迅速な把握といった課題があり、配電設備の点検・管理業務の高度化且つ効率化を実現する仕組みが求めらているという。

特に現在、国内の電力会社は2200万本以上の電柱を保有しており、これらの経年劣化の状態や、災害時における被害状況の把握の効率化が課題だとしている。

  • 実証に用いたシステムの概要

同社の光ファイバセンシング技術は、光ファイバケーブルの片端から光パルスを送信し、微弱な戻り光(後方散乱光)の位相の変化を検出することで、経路上に生じた振動などの状態変化を測定することが可能。

同実証実験では、各電柱設置地点を事前に特定し、そこから得られる振動波形を各電柱の自然振動として継続的に取得する。また、同社のの最先端AI技術群「NEC the WISE」の一つである「RAPID機械学習」により、この振動波形と電柱のひび割れの有無をセットとした学習モデルが構築され、これらにより遠隔での電柱のひび割れ有無の判定が行われた。

また、光ファイバから得られる振動には周辺音響や交通振動までさまざま含まれるため、フィルタを適用して電柱に起因する振動成分を抽出する必要があるといい、同実証では、試験対象の電柱群の振動特性も事前に調査・設定することで振動成分を抽出している。

  • 実証での電柱の正常・劣化の判別例

同実証は電中研 赤城試験センター構内の電柱を用いて行われ、その結果、ひび割れ電柱を遠隔から約75%の精度で判定することに成功したとのことだ。