シスコシステムズは10月8日、同社の2020年度事業戦略を説明した。

同社 代表執行役員社長 デイヴ・ウェスト氏は、戦略を発表する前に、「2020年度の戦略を考えるためには、市場の状況を見なければならない」と語り、現在の日本の課題として、高齢化社会と人口減少、地政学的懸念(国同士の対立による緊張)、今後の数年間に及ぶデジタルトランスフォーメーションに対するニーズがあり、顧客の課題としては、ITインフラの複雑化、どうやって働き方改革を進めていくのか、コラボレーションをどう推進していくか、サイバーセキュリティ対策の課題があるとした。

そして、「次世代のデジタルインフラを届けるだけでなく、日本の持続的成長を支援していきたい」と語った。

  • シスコシステムズ 代表執行役員社長 デイヴ・ウェスト氏

同社では2020年度、「お客様、パートナーとの関係性強化」「日本のデジタイゼーション支援」「ライフサイクル全体のエクスペリエンスの向上」の3つに注力するという。

  • 2020年度 シスコシステムズの重点戦略

「お客様、パートナーとの関係性強化」では、より深い顧客、パートナーとの関係性を築くため、エンタープライズ、ハイタッチカスタマー、サービスプロバイダ、政府・官公庁、中小企業など、顧客に合わせてセグメント化し、各セグメントのニーズに合わせデジタル化の支援を行うという。

「日本のデジタイゼーション支援」では、東京2020に次世代のデジタルネットワークを提供し、東京2020以降も、Society 5.0の特化したエリアを支援していく。具体的には、ツーリズム、トラベル、トランスポーテーション、製造業のデジタル化、中小企業のデジタル化、セキュリティだという。そのほか、5Gでもリーダーシップを目指すとした。

「ライフサイクル全体のエクスペリエンスの向上」では、フルのライフサイクルでエンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスを向上するとした。

そして、これら3つの重点戦略を実行し、ネットワーク、データセンター、セキュリティ、コラボレーション、サービスプロバイダを統合し、統合されたマルチドメインアーキテクチャを提供するという。

同社では、これら3つの戦略を、Country Digitization Acceleration(CDA)、情報通信産業事業(サービスプロバイダ)、中小企業市場で実践していく。

Country Digitization Acceleration(CDA)

CDAは、中長期なコミットメント、投資に基づいて、政府、教育機関、民間企業と協業しながら、デジタイゼーションによって各国が抱える重要な課題解決や経済成長に積極的に貢献していく基盤、これまで、フランス、中国でスマートシティ、ドイツやイタリアでインダストリー4.0、英国、オーストラリア、インドでのサイバーセキュリティ分野で取り組んできた。

日本は来年東京2020オリンピック・パラリンピックを控えており、このモメンタムを活かして、「Society 5.0」に対してCDAを実施するという。

具体的にはツーリズム、トラベル &トランスポーテーション、インダストリー4.0、デジタルワークプレイス、パブリックセーフティの領域で実施する。

  • 日本におけるCDA

CDAについてシスコシステムズ 代表執行役員会長 鈴木和洋氏は、「Country Digitization Accelerationは、シスコがグローバルで実施する戦略的投資プログラムだ。主要国に対して、シスコの中長期のコミットメントに基づいて、人、モノ、金の投資を行う。これには、資金提供や出資も含まれる。この投資によって、国とともに、シスコも成長する。日本では、『Society 5.0 データ駆動社会への変革』という政府の掲げるビジョンに呼応する形で進めていく。ツーリズム、トラベル &トランスポーテーションでは、2030年の6000万人のインバウンドに対する15兆円のマーケットをつくることに呼応し、インダストリー4.0では、産業機械ベンダーとソリューションを一緒につくっていく。デジタルワークプレイスでは、中小企業の働き方改革を実現。サイバーセキュリティでは、サイバーセキュリティの脅威から日本をどうやって守っていくかということに取り組み、NISKとの情報共有のしくみをつくり、人材育成のカリキュラムを拡充する。こうした日本の抱える課題解決や成長戦略を支援し、新しいマーケートをつくり、自分たちのビジネスも成長させていく」と説明した。

  • シスコシステムズ 代表執行役員会長 鈴木和洋氏

サービスプロバイダに向け戦略

サービスプロバイダに向けては、「5Gともに日本のDXを実現する」をビジョンに掲げ、5Gに向けたリーダーシップを発揮、エンドツーエンドの戦略的パートナーシップ、BtoBtoX時代に向けやエコシステムの3つの戦略を実施する。

  • サービスプロバイダに向けての戦略

サービスプロバイダ向けの戦略について、シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括 中川いち朗氏は、「今後は、ネットワークは中央集権から分散型に移行し、エンドユーザー側にシフトしていく。それに向けてこれまで技術開発を行っており、それにより、大手プロバイダの採用が相次ぎ、圧倒的なリーダーシップを発揮しつつある。また、サービスプロバイダの海外展開を支援するための組織をつくリ、11拠点にエンジニアを配している。それにより、本社との一括支援ができる、国内では、マネージドサービスの共創に向け、ビジネス開発事業本部を設立した。これらにより、サービスプロバイダとのより強固なパートナーシップを構築していく。5G時代では、そのサービスを利用するのは個人ではなく企業だ。今後はBtoCから、BtoBtoXに大きくシフトし、DXのためのプラットフォームになる。今後はサービスプロバイダのネットワークと企業のネットワークが融合していく。シスコはこの橋渡しができると思っている」と語った。

  • シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括 中川いち朗氏

中小企業市場に対する戦略

同社の中小企業市場に対する課題について、シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括 兼 東京2020 マーケティング担当 鎌田道子氏は、「中小企業に対するマーケティング施策によるブランドの強化により、問い合わせは増加したが、そのあとの営業活動への一気通貫モデルがなかった」と述べ、今年度からバーチャルデマンドセンターを設立し、一気通貫モデルを立ち上げたことをアナウンスした。この組織では、ニーズの分析や情報提供、商談支援を行っていくという。

  • シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括 兼 東京2020 マーケティング担当 鎌田道子氏

中小企業市場に向けた戦略では、1-30名規模、31-500名、500名以上の規模別に販売戦略を採り、1-30名規模には、ネットワーク構築、運用を自分で検討・購入する層に向け、オンラインの購入サービスを提供。

  • 中小企業市場に対する戦略

またパートナー経由の販売では、NTT東日本、リコー、KDDIなどと連携し、これらの販売チャネルを使って販売していくという。