NTTドコモとNECは5月29日、LTE基地局の近くに設置したMEC(Multi-access Edge Computing)機能を有するドコモのクラウド「ドコモ5Gオープンクラウド」に、強い遅延変動耐性を持つNECのモバイルネットワークで生じる遅延の変動を予測し、その予測結果に基づき制御する「適応遠隔制御技術」を搭載し、LTEエリアで物流自動化を実現する搬送ロボット(AGV:Automated Guided Vehicle。物流現場や製造現場において、人の代わりに商品や部品などの荷物を搬送するロボット)2台で荷物を載せた台車を挟み込んで運ぶ、遠隔制御の実証実験に成功したと発表した。

  • 実証実験のシステム構成

    実証実験のシステム構成

労働力不足解消や業務効率化などの生産性向上を目的に、近年ではモバイルネットワークを活用して工場の業務自動化や効率化をタイムリーに進めるクラウドロボティクス技術の開発が進められており、遠隔からのリアルタイムかつ高精度なロボット制御にはセンサ情報や制御情報を低遅延にやりとりできるネットワークと、遅延の変動に強い制御技術が必要になるという。

実証実験では、2台の搬送ロボットが荷物を載せた台車を挟み込んで、既定の搬送経路に沿いながら荷物を運ぶようにドコモ5Gオープンクラウド上に設置した制御サーバから既存のLTE網を介し、遠隔制御を行った。以下は実験の動画だ。

これにより、パブリッククラウド利用かつ適応遠隔制御技術なしの場合に比べて目的地まで安定して搬送でき、搬送成功率が41%から100%まで向上することを確認。LTE網でも細かい動きの制御など高精度なロボット制御が可能となるため、これまで工場や倉庫など建屋内での利用が多かったロボティクスサービスが、建屋間や工場全域、屋外を含めた広域で実現可能であることを実証した。

Wi-Fiと比較し、1つの基地局でカバーできるエリアが広いLTEを利用するため、これまで必要だったWi-Fi設備と工事が不要となり、ロボティクス導入期間を短縮することができることに加え、今後の5G導入により実現される低遅延ネットワークと組み合わせ、さらなる発展的なサービスの提供が可能だという。

なお、各社の役割としてドコモはLTE網を用いたMEC環境の構築、NECはMEC環境を用いた協調遠隔制御環境実装を担った。