新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)と福島県南相馬市は4月10日、都内で福島ロボットテストフィールド(福島RTF)などを活用したロボット関連人材育成などに関する協力協定を締結したと発表した。これにより、両者の連係を強化し、DRESSプロジェクトや人材育成講座などで国内外の人材が集う環境を同市に整備し、ロボット関連人材育成の推進やロボット関連産業の活性化を図る。

  • 左からNEDO 理事長の石塚博昭氏、南相馬市長の門馬和夫氏

    左からNEDO 理事長の石塚博昭氏、南相馬市長の門馬和夫氏

NEDOは、2017年度に開始した「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」において、各種ロボット(ドローン、水中ロボット、陸上ロボット)の適用分野(インフラ点検、災害対応)ごとに必要な性能の評価軸、その評価軸に沿った性能レベル、測定するための標準的な試験方法などの研究開発を実施し「ロボット性能評価手順書」を昨年に策定した。

また、同プロジェクトにおいて各種ロボットの性能評価やドローンの飛行試験などを福島ロボットテストフィールド(RTF)などで実施している。さらに、国内外のロボットメーカーやユーザーによるロボット性能評価手順書、福島RTFの利用を促すため、2018年度から「NEDOプロジェクトを核とした人材育成、産学連携などの総合的展開/ロボット性能評価手法に係る特別講座」を実施している。

福島RTFは、物流やインフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主な対象に、実際の使用環境を再現しながら、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点。福島県南相馬市・浪江町で2018年度から順次開所している。

NEDO 理事長の石塚博昭氏は「近年、AIとロボットの社会実装化が進んでおり、中でもドローンは先駆けで象徴的な存在だ。われわれでは社会実装に向けてDRESSプロジェクトを立ち上げ、物流やインフラ点検、災害対応などの分野でロボットやドローンの産業利用に向けた研究開発を行っている。プロジェクトは実証試験が1つの成功のカギとなっており、RTFを活用している。協定を踏まえて、これまで以上に南相馬市をはじめ地元と協力しつつロボットやドローンが活躍することを推進していく」と、意気込みを述べた。

  • 石塚氏

    石塚氏

南相馬市長の門馬和夫氏は「南相馬市は福島第一原子力発電所から20~30kmに位置し、震災前は7万1000人の人口を抱えていたが、現在は5万5000人に減少し、一番深刻なことは若者が現象したことだ。南相馬市の復興にあたり、RTFでの取り組みを起爆剤にしたいと考えている。こどもたちに夢のある教育環境を与え、RTFを核に希望を持ちつつチャレンジしてみようという気持ちにもなれるのではないかと思う」と話した。

  • 門馬氏

    門馬氏

主な連携・協力事項は(1)国内外の教育機関・事業者・市民を対象とするロボット関連人財の育成、(2)NEDOと南相馬市が関与するロボット関連プロジェクトに関する協力・支援の2項目。

それぞれの役割として、NEDOはプロジェクトを実施する際の関係者との調整、NEDOや関係者と市民との交流による人材育成・地域振興のための場の創出、シンポジウムなどによるプロジェクト成果の情報発信、「World Robot Summit 2020」の開催、南相馬市はプロジェクトを実施する際の地元関係機関との調整、プロジェクトの実施に伴うNEDOや関係者に対する支援、シンポジウムなどによるプロジェクト成果の情報発信に関する関係機関への周知、World Robot Summit開催にかかる関係機関への周知となる。

NEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏は「DRESSプロジェクトと福島RTFの連携については『ロボット・ドローン期待の性能評価基準などの開発』『無人航空機の運行管理システムおよび衝突回避技術の開発』『ロボット・ドローンに関する国際標準化の推進』の3項目を軸に進めていく。われわれが考えているドローンが活躍する社会は、多くの物流ドローンが都市部で飛行できる社会と有人ヘリコプターなどと同一空域で安全に飛行できる社会の2つだ」と、説く。

  • NEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏

    NEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏

  • DRESSプロジェクトと福島RTFの連携の概要

    DRESSプロジェクトと福島RTFの連携の概要

同氏が示す社会を実現するためには無人航空機の運航管理システムと衝突回避技術の開発が必須であり、すでに両技術ともに実証実験を行い、前向きな結果を得ているという。

来年度以降、運航管理システムについては国内外のドローン事業者が福島RTFでドローン運航試験を実施できるように運航管理システムのAPIの順次公開を予定し、衝突回避システムは向かい合って飛行する有人ヘリコプターに対して、自律的に衝突を回避する無人航空機の飛行試験を行う予定だ。

  • 運航管理システムの概要

    運航管理システムの概要

  • 衝突回避システムの概要

    衝突回避システムの概要