ベルギーimecは、Embedded World Conference 2019において、発熱している高性能半導体チップの冷却向けにMEMSを応用したシリコン(Si)ベースの小型マイクロ流体チャネルヒートシンクを開発したことを発表した。

同ヒートシンクは、2W未満のポンプ出力で、0.34k/W〜0.28k/Wの低熱抵抗を達成しつつも、マイクロ流体チャネルを製作するためにMEMS技術を活用することで、最終製品である半導体デバイスの高品質化および低コスト化も図れる技術としている。

  • シリコン製マイクロ流体ヒートシンク

    シリコン製マイクロ流体ヒートシンク (出所:imec)

ICチップおよびパッケージの小型化ニーズは高まる一方だが、回路の電力密度が増加するにつれて、発熱が生じやすくなり、それがデバイスの信頼性と性能に悪影響を与えることも知られている。

液体を用いた冷却方法は空冷に比べ、高い熱伝導率と比熱容量のため、有効であるとされている。また、シリコンも比較的優れた熱伝導体として知られているほか、MEMS技術による高アスペクト比の微細構造を低コストで製造できるというメリットもある。

今回開発されたヒートシンクも、平行に配置された高アスペクト比のシリコンマイクロチャネル構造(幅32μm、深さ260μm以上)をMEMS技術を利用して作ることで、対流熱伝達の表面積と熱伝達係数を大きくすることができるため、高熱流束の除熱ができるようになっているという。この結果、チップ温度を100℃以下に保ちながら、600W/cm2以上の電力を消費することが可能になるという。

なお、現状、ICとSiベースのマイクロチャネルヒートシンクは別々に製造されているとのことで、ヒートシンクは放熱の必要のある半導体チップの裏面にCu/Sn-Auを用いて接着される方式が採用されており、これにより、両方の部品間の熱接触抵抗は低く保てるという。また、流体性能と熱的挙動は高精度で予測できるため、同ヒートシンクは、スペースや液体供給などの外部システムの制約にしたがって調整を行うこともできる仕組みになっているとのことである。

imecテクニカルスタッフのPhilippe Soussan氏は、「今回開発したシリコン製マイクロ流体ヒートシンクを用いることで、従来の金属ヒートシンクに比べて、熱流束を2桁増やすことができる。最終的な目標としては、1ドルの追加コストでこのクーラーとICチップをウェハレベルで直接積層することを目指している」と述べている。