キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は8月30日、AI(人工知能)プラットフォーム「LaiGHT(ライト)」を開発し、同プラットフォームを活用して、ネットワークカメラを利用したスマート農業ソリューションの技術開発と実証試験に取り組むと発表した。

キヤノンITS R&D本部 先進技術開発部では、キヤノンのカメラに代表される光学処理技術をIT分野で活用するため、要素技術である画像認識技術の研究開発に注力しており、働き方改革ソリューション「テレワークサポーター」教育機関向け授業支援ソリューション「in Campus Scan」などに適用しているほか、金融事業者の与信審査業務へディープラーニング技術を応用をはじめとしたAI開発も手がけている。

しかし、増大するAI需要に対する人材不足や多岐にわたる煩雑な作業などの課題を抱えており、少数のAIエンジニアで多くのAI開発を迅速かつ効率的に行うための仕組みとして、LaiGHTを開発。同プラットフォームは、学習データ管理機能、計算リソース管理機能、学習結果視覚化機能をはじめ、AIエンジニアがこれまで個々に実施していた作業を支援し、開発を効率化する機能を備えている。

R&D本部 先進技術開発部では、キヤノンの光学機器とAI技術による次世代施設園芸システムの実現を目指し、2015年から九州大学 大学院農学研究院 岡安崇史准教授と連携し技術開発に取り組んでいる。現在は「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)実証研究型(第2回公募)」において開発した技術の普及を目指した実証活動を進めている。

  • カメラを活用したスマート農業ソリューション全体図

    カメラを活用したスマート農業ソリューション全体図

実証では、ビニールハウスに取り付けられたネットワークカメラで定点を定期撮影し、撮影画像は画像解析クラウドに転送され、LaiGHTが管理する実行基盤によって生育状況の数値化などの解析処理が実行される。

画像解析クラウドにはLaiGHTを使い、開発された画像認識AIと収量予測AIが搭載されており、画像認識AIにて画像から着花数・着果数・果実成熟度・葉面積情報などの生育に関する情報を自動抽出し、収量予測AIにて収穫適期と収穫量を予測。生産者は、スマートフォンなどの端末から解析結果を確認し、データを活用して農作業や出荷計画を判断する。

  • イチゴハウス内に取付けられたカメラ

    イチゴハウス内に取付けられたカメラ

  • 画像から花・成熟度毎の果実を自動判別

    画像から花・成熟度毎の果実を自動判別

同社では、LaiGHTを中核に各顧客の要望に応えるさまざまなAIを、柔軟かつリーズナブルに開発できるよう環境整備していく。また、R&D本部 先進技術開発部では今後も画像認識分野を中心としたAI技術を活用し、顧客固有の課題や社会的課題を解決する技術の研究開発を展開していく考えだ。