XrostDSP、XrostDMP、XrostSSPと、広告主側から媒体側まで幅広い広告プラットフォーム事業を展開している株式会社PlatformID。1番の特徴であるTポイントのビッグデータを活用し、今後プラットフォーム事業をどう発展させていくのか、話を伺ってみました!

まずは森岡さんが担当されている領域について聞かせてください。

弊社にはXrostSSP, XrostDSP, XrostDMP、それからADPLANと大きく4つの商品がございます。私は、XrostDMP以外のすべて、つまりXrostSSP、XrostDSP, ADPLAN導入の営業を統括しております。XrostDSPとADPLAN導入は広告主様へ、XrostSSPはメディア様へ日々営業を行っております。

社内に営業は何人いるのでしょうか?

約40人の営業チームでその中に運用担当が10人強いるので、実質30人弱の営業がおります。DSP、DMP、SSPと網羅的に事業を行っておりますので少なくみえるかと思いますが、代理店さんにもご協力頂いており、なんとかこの人数で頑張っています。

代理店さんとは具体的には資本の入っているオプトさんのことでしょうか?

いえ、オプトに限らずすべての代理店さんに販売をお手伝いいただいております。オプトは代理店として当然すべての商品をフラットに見ていますので、特にグループだからという肩入れはありません。他DSPの方がパフォーマンスが良ければXrostDSPは売ってもらえないので、きちんと競争力のあるサービスを提供する必要があると思っています。

Tポイントのビッグデータを活用したマーケティングスキームについて

さっそく核心的な部分ですが、御社のもっとも大きな特徴は、オプトさんとCCCさんの合弁で作られているというところだと思います。具体的にTポイントのビッグデータをどのように活用しているのでしょうか?

まず、Tポイントの個人情報はCCCが保有・管理をしており、弊社では個人情報は一切保有しておりません。そのため、個人を特定する情報の提供を行っていないことを先にお伝えいたします。

弊社のサービスでは、弊社が管理している「共通ID」というものをコアのIDにしています。この共通IDに様々なデータが紐づいていると思ってください。まず、リアルなデータとしてはTポイントや、その他様々なデータを組み合わせ、約5500万人の会員属性データを共通IDに紐づけています。これらの様々なリアルなデータを「オフラインデータ」と呼んでいます。

一方で、弊社では主にWEB上で集めた1.75億のユニークブラウザのデータも保有しています。これを「オンラインデータ」と呼んでいます。この「オフラインデータ」と「オンラインデータ」を1つの「共通ID」で紐づけてサービスに利用しています。したがって、TポイントのIDデータを持っていることは強みではありますが、Tポイントの会員属性データだけを扱っているわけではありません。様々なデータをXrostのプラットフォーム上で管理しており、Tポイントの会員属性データとの連携はその中の1つのデータソースとして利用しています。

オフラインとオンラインのデータを統合した大きなデータベースをお持ちなことはわかりました。では、実際にそれらのデータをどのようにセグメント化しているのでしょうか?

ユーザーセグメントの方法は案件ごとに違います。弊社では、1つ1つの案件に対して異なるユーザーセグメントを個別に作成しています。1案件ごとに個別に提案を行うことで、高い精度でのターゲティングが実現できます。それがもっとも大きな強みなのですが、これは1つ1つ事例を作ってきたこれまでの苦労の賜物だと思います。

具体的にはどのようにユーザーセグメントを作られているのでしょうか? 広告主さんが御社のサービスを利用したらどのレベルのターゲティングができるのか? ということを教えていただけますか?

かなりのことができます。たとえば、あるメーカーAさんのお菓子「○○(○○味)」と、メーカーBさんの清涼飲料水「○○」を、1ヶ月以内に買ったユーザーだけをターゲティングして広告配信するといったことも可能です。

かなり具体的ですね?

そうですね。より具体的な例だと、たとえば高級車が掲載された雑誌を購入している人がいるとします。一般的に、高級車に興味関心があるユーザーはある程度経済的にも余裕があると想定されます。そのようなリアルなユーザー情報と、ウェブで試乗の予約や、中古車販売のサイトを閲覧したなどのウェブ上のオンライン情報を紐づけられれば、車の買い替え検討期と予測できます。

リアルデータではユーザーのデモグラフィック等の正確な情報が分かり、ウェブデータでは直近の消費行動が分かります。このようにリアルデータとウェブデータを掛け合わせることで、例えばウェブで試乗予約をしているときに外国車の広告を見せるなど、今まで難しかった取り組みが可能になります。

エンドユーザーさんにとっても興味がない広告が出るより、興味や関心のある広告がタイミングよく出た方が喜んでもらえると思います。

先ほどの例にならうと、例えば、「 “リアルデータで高級車が掲載された雑誌を購入しているユーザー” かつ “ウェブデータでインターネットで試乗予約をしているユーザー” にアプローチしましょう」という様な具体的なセグメントのご提案をされているのでしょうか?

そういった具体的なご提案ももちろんあります。

しかし、お客さまの潜在的なニーズを掘り起こさないと具体的なセグメントは作れませんので、まずはお客様のニーズを伺うところを重要視しています。そのあとに弊社でセグメントを作ることのほうが多いです。例えば、お客様のニーズが「〇〇というアイドルグループのファンの人に訴求したい」だったときに、「〇〇というアイドルグループのファンの人ってどんな人だろう」と弊社で類推、分析してからご提案しています。

お客さまにとっては、自社ユーザーのニーズを掘り起こすのが難しいかと思うのですが、どのようにされているのでしょうか?

まさにその通りで、お客さまが自社の製品をどんなユーザーに訴求すればいいのかがわからないことはよくあることです。そのためには、まず自社のユーザーを正しく理解することが必要なんです。

弊社には「インサイト」という商品がございまして、これは「逆引き」という概念を商品化したものです。「逆引き」とは「Offline to Online」という意味です。具体的には、実店舗で購買行動をした人が、ウェブ上で広告を見た人かどうかを判断できるサービスです。

例えば、Tポイント会員の全員にバナー広告を配信した場合、誰がその広告をみたか、クリックをしたか、コンバージョンをしたかがわかります。その後、Tカードを実店舗で使ったときに、ウェブの情報と実店舗の行動情報が紐づくので、ウェブで広告を見た人が実店舗で購入をしたかどうかが分かるのです。これはオフラインのデータを持っている弊社だからこそできることです。

これにより、お客さまは今まで効果測定が難しかったウェブの広告が、実際にユーザーの購買行動に影響したかどうかが正確に追えるようになり、本当の自社のターゲット層やウェブ広告の影響範囲を可視化することができるんです。この仕組みは、現在多くの広告主様に反響を頂いていて、弊社としてもより販売を進めていこうとしています。

弊社のデータソースの大きな部分を占めるTポイントの会員属性データは、会員登録をリアルな店舗で行っているので、地域や年齢、性別などがかなり正確に分かります。そこから、その人が社会人なのかということが推測でき、ウェブ上での行動も分かります。つまり、自社のサイトに来てくれるお客様が、どういう人かが可視化され、今までターゲットとしていた人が本当に合っているかが見極められることができるというわけです。

また、現在はネットがユーザーとのコンタクトポイントの大きな部分を占めていますが、コンタクトポイントは今後どんどん増えていくと思います。ウェブだけではなく、ダイレクトメール、OOH、スマートテレビ、極端な例だと居酒屋に設置してあるテレビなどでも情報を送れる、もしくは情報を集められる時代はくるだろうと。そうするとネットも1つのコンタクトポイントにすぎなくなるんですね。いかにユーザーのコンタクトポイントを押さえ、データの幅を増やすかが重要だと思っています。

御社で足りてないなというデータはあるのですか? かなり網羅されている印象なのですが?

データの量という部分においては、概ね網羅されており、シェアは間違いなく取れていると思います。しかしながら、データの質においては今後も突き詰めていく必要があります。今後は1人のユーザーに対するマーケティングをいかに適切に細かくできるのかが大きなポイントになるはずです。そのためにも、より細かいデータやニッチなデータが必要になってきます。歯抜けになっている隙間のデータを集めたり、データが取れなかった部分を類推することが必要になってくるのだと思います。

スマホについてはどんなお考えですか?

もちろんスマホは押さえていきます。市場が伸びているからという理由だけでなく、先ほど申し上げたユーザーとのコンタクトポイントをできる限り押さえ、リアルとウェブのマーケティングデータを最大限活用することが目的なので、そのためにスマートフォンは必ず押さえなければならない領域だと思います。今年はその足がかりの年になるのではないかと考えています。

社内体制について

社内はどのような体制ですか?

約40人がエンジニアになります。弊社のエンジニアには技術的に高い水準の仕事をしてもらっています。元々ADPLANとXrostは一緒に作っていたものではないので、その連携はやはり弊社のエンジニアの努力の賜物だと思いますし、会社が携わっている事業領域も広いので、一人ひとりの仕事の幅はかなり広いかと思います。

現在はちょうどエンジニアの採用も強化しておりまして、様々な分野の方を募集しております。

DSP、DMP、SSPと網羅的に事業をされているので、このような少ない人数で行うのは大変ですよね?

本当にそうなんです(笑)しかし弊社には「マーケティングソリューションを行いたい」という夢があり、広告主側から媒体側までの事業を行うためにDSP、DMP、SSPどれも欠かしてはいけないものなのです。マーケティングデータを持つこと、マーケティングノウハウの蓄積すること、そして最後にそれを色々なチャネルでアウトプットすること、全てできてマーケティングソリューションだと考えているんですね。ここまで出来たら将来は数兆円くらいの市場になるんじゃないかなと思っていて、見据えている未来は、RTBやDSPの数百億、数千億のマーケットではなく、その先の未来のマーケットです

社内の雰囲気はどんな感じですか?

ど・ベンチャーですね。夢が壮大で、リアルとウェブのデータ融合、垂直統合モデル、マーケティングソリューションノウハウの蓄積という3つのことをたった80人でやっているんですから。あの人の仕事はこれで、この人は開発であの人は運用で、としていたら、たぶんこの会社は今ないと思います(笑)役割はしっかりと割り振られていますが、結局は現場の人間が新しい案を自ら作っていってるんです。こんな商品があったら売れると思って、ちょっと作って売ってきました!と後から報告される場合もあります。それくらい現場主導な組織ですね。普通がどうかは分からないですが、営業と開発で変な壁が無いのはとても良いことだと思っていて、よく就業後の飲み会でエンジニアと営業がプロダクトについて熱く語り合っています。全員がすべての職種、レイヤーの仕事に口を出すイメージです。全員が社長みたいな意識で働いているのではないでしょうか

今後の業界展望と自社の未来について

御社のお客さまは大きな会社さんが多いと思います。いままで主に4マスに使われていたブランディング広告予算が、インターネット広告に使われるようになるまで、どれくらいの時間がかかると思いますか?

わたしには、ブランディング広告は必ずウェブの時代になるという予感があります。ポイントとなるのは当然総合代理店さんです。そして、その総合代理店さんの風向きがちょうど今変わってきていると感じています。今までには無い勢いでGoogleさんやYahooさんの動向を気にしていたり、ダイレクトレスポンス系の知見を貯めようとしています。この背景には、企業のマーケティング担当者から、マス以外の新しい提案はないの?といった質問を受けているからだと思うんです。これまでウェブなんて見なかった人はそのパワーを信じはじめた。ここから先大きく成長するためには、きちんと数字を提示することが必要で、それを明確にできれば、間違いなくマスの予算はインターネットに流れます。近い未来、産業革命が起こると思っています

PlatformIDさんの3年後、5年後を教えてください。

3年後も5年後も、弊社のビジョンである「世界一ワクワクするデータベース会社」として、プラットフォームとインターネットを使ってユーザーとサービスの出会いの場を最大化する仕事をしているはずです。RTBやDSPのスケールじゃない、もっと大きな事業をしなくてはいけませんし、それをするためにチャレンジをしなくてはなりません。

3年後、例えば、朝起きたらスマートフォンに興味のある商品の値引き情報が流れてきて、テレビをつけると、その人が今観たいニュースが見れて、会社に着いたら、今日のお昼の献立をレコメンドしてくれて、メニューを選ぶと近くのお店のクーポンがスマートフォンに送られてきて、ランチに行ったらお店にあるタブレットで今日のコンパの情報が流れてきて、コンパが終わって家に帰ると相性診断の情報が届くみたいな(笑)

こんな未来が3年後にすべて実現するかはわからないですが、きっと近いことにはなっているでしょう。その時に、データを使ったマーケティングが主流になっているのではないでしょうか。パラダイムシフトが起きて、3年後には広告やコンテンツ提供の概念が変化していたら面白いですね

弊社はDSP、DMP、SSPと広告プラットフォーム事業を細々やっているように見えるかもしれないです。でも想いはそうではなくて、人生一回きりなんだから1兆円の市場に挑戦しようぜ!と熱い想いを持ってやっています。「マーケティングのリーディングカンパニー」への挑戦を続けていきたいと思っています

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本稿は、adingo Marketing Magazineに掲載された記事を転載したものです。