低カリウム植物工場の様子

富士通は7月5日、富士通ホーム&オフィスサービスを中心に、福島県会津若松市において、半導体工場のクリーンルームを転用した「FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド Akisai(秋彩)」を活用した大規模植物工場の実証事業を開始することを発表した。この植物工場は2,000平方メートルの実装面積を持ち、低カリウム野菜を栽培する植物工場としては国内最大級のものとなる。

本実証事業は、富士通ホーム&オフィスサービスが代表となって提案した「先進的な低カリウム化技術による大規模スマート植物工場ビジネスの実証」が、復興庁と経済産業省の「平成25年度 先端農業産業化システム実証事業」として採択されたことを受け、富士通グループ、会津富士加工、福島県立医科大学などで構成するコンソーシアムが協調・連携して実施するもの。

人工透析患者や慢性腎臓病患者など、カリウムの摂取制限を受けている人は生野菜を食べることができず、カリウム含有率の低い野菜へ期待が寄せられている。こうした状況の改善に向けて、富士通ホーム&オフィスサービスは、会津富士加工や秋田県立大学が持つ低カリウム野菜の栽培技術や知見を生かし、カリウム含有率の低いリーフレタスを2013年10月から試作し、2014年1月から量産出荷する予定だ。

食・農クラウド Akisaiの植物工場における活用イメージ

植物工場においては、富士通セミコンダクターが半導体製造工場のクリーンルームで培った最適製造条件の割り出しや雑菌管理のノウハウを活かし、空気や液体肥料に含まれる成分などをきめ細かくコントロールすることで、低カリウム野菜の栽培に最適な育成環境を構築する。また、富士通ファシリティーズ・エンジニアリングが持つ半導体製造工場へのインフラ供給や省エネルギー管理のノウハウを活かすことで、低カリウム野菜の栽培に最適なインフラ環境の整備や供給ならびに省エネルギー化が可能になるという。

さらに、富士通の食・農クラウド「Akisai」を活用し、栽培データを継続的に解析し、ICTを活用した生産性の高い栽培を実現していくとともに、経営・生産・販売といった経営全般を管理することで、効率的な植物工場経営を実現するとのことだ。くわえて、生鮮宅配や医薬品・高齢者向け用品などの配送販路を活用することで、低カリウム野菜を必要とされる人々に必要なときに必要なだけ届けられ、安心して購入できるようなトレーサビリティを確立するとしている。