昨今、「ビッグデータ」はICT投資におけるキーワードとなっている。先進的な企業の中には、これまでビジネス活動の中で生成された膨大なデータを収集/分析し、経営戦略などに活用すべくシステムの導入を進めているケースも少なくない。しかし、株式会社アイ・ティ・アールのリサーチ統括ディレクター/シニア・アナリストの生熊清司氏は「単純に多くのデータを集めても意味がないケースが多い」と警鐘を鳴らしている。

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ビッグデータを活用し、価値を生むのが重要に

株式会社アイ・ティ・アール リサーチ統括ディレクター シニア・アナリスト 生熊清司氏

「ビッグデータ」と聞くと、最新テクノロジーを活用したソリューションというイメージがあるが、その歴史は古い。「ビッグデータ」はメインフレームやオフコンが主流となっていた時代から存在しており、実際に活用されてきた。

ビッグデータを容量の観点でとらえると、近年では「PB(ペタバイト)」や「EB(エクサバイト)」といった単位のデータが主な領域となっている。ひと昔前は「MB(メガバイト)」や「GB(ギガバイト)」といった容量のデータが"ビッグデータ"として認知されていた。つまり、「大容量のデータをどのようにして扱うのか」というテーマは、いつの時代も変わることがないということだ。

「"ビッグデータ"を定義する際に、ボリューム(Volume)、バラエティー(Variety)、ベロシティー(Velocity)という"3V"を使って説明することがあります。3Vは定義には役立つのですが、ビッグデータを使うことで"どのような価値を生むのか"という問いには答えていません。実は、データを単に溜めても、価値を生むことはありません。価値を生むためには、"データを活用"する必要があります。現在、ビッグデータはDWH(データウェアハウス)を中心として語られている傾向がありますが、今後は"価値"を訴求していく必要があるでしょう」(生熊氏)

投資し続けるのではなく、目的を達成するためのデータ活用を

もし、膨大なデータを収集するためにシステムを導入したり、データを分析するために「データサイエンティスト」を採用したりしても、データの活用に至るとは限らない。これらはデータ活用に不可欠な要素ではあるが、その前に、まず「企業が抱える課題の解決」や「新規ビジネスの構築」といった目的を明確に持ち、そのために必要なデータを収集・分析、活用していくステップが必要となる。そこから得られた「知見」をもとにアクションを起こし、目的を達成した段階で初めて「データを活用できた」ことになる。この「目的」を設定することがビッグデータを活用するカギを握る。

目的が設定されたら、そこで初めてデータの収集・分析について考えていく。この部分は、大規模なシステム導入や「データサイエンティスト」などの専門家の力を借りなければならないなど、投資を必要とする領域だ。当然ながら無制限に投資することはできないので、コストを抑えながら必要なデータを収集・分析するためのソリューションを探す必要が出てくる。

この領域に関しては、すでに実績のあるソリューションを活用するのがセオリーとなる。例えば、構造化データだけではなく、非構造化データのマイニングも可能な「IBM InfoSphere Data Explorer」や大容量のストレージ製品を組み合わせることで、短期間でデータ収集・分析するシステムを自前で持てるようになる。

また、自社にデータサイエンティストがいなくても、ICT部門やマネジメント部門などのエキスパートを集め、「データ+サイエンティスト」チームを作ることで「データサイエンティスト」と同等の機能を持たせるという選択肢もある。とりわけ日本企業は、さまざまな専門知識を持った人材を有しているケースが多いため、このようなチームを作るのもさほど難しくはないはずだ。

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データの"活用"に関する詳細は、7月19日に開催される「ビッグデータ活用・保全セミナー」で詳しく紹介される予定だ。当日は日本IBMやグループネット、キング・テックなど、ビッグデータに関するノウハウを持つベンダーが参加するため、データの活用に向けた知見を得るための最適なセミナーとなることだろう。