博報堂は4月1日(月)午前10時、港区赤坂の本社に102名の新卒採用者を迎え、戸田裕一社長以下役員及び部門長が出席し、2013年度入社式を行いました。新入社員が一人ひとり紹介された後、戸田社長が歓迎と激励の言葉を贈りました。趣旨は以下の通りです。

博報堂2013年度入社式 社長祝辞

本日、私たちは102名の無限の可能性を持った皆さんを、新しい仲間として迎えることになりました。会社を代表して、心より歓迎致します。若さと活力に満ち溢れた若者が博報堂の仲間となることに対して、強い期待を抱いております。自信をもって、素直に真っ直ぐに成長していってほしいと思います。

さて昨年、博報堂は少し善い事をしました。

それは、博報堂生活総合研究所が、過去20年間の「生活定点」データを無料公開したことです。ちょっとご紹介したいと思います。

「生活定点」データというのは、日本の生活者に対して、2年に一回、毎回同じ質問をして貯めたデータです。それが衣食住はもちろん、遊び、学び、働き、さらには家族、消費、メディアまで1500項目もある。質問の中には「いわゆる『サイフのひも』を握っている方はどなたでしょうか?」という、すこし立ち入った質問もあります。それを20年間続けたおかげで、生活者の意識や欲求の変化が見て取れる、貴重な時系列データになりました。

その「生活定点」データを無料公開することにしたのは、長年にわたって蓄積してきた、私たちの生活者研究の資産を、これからは社会全体の資産にしていきたい。「生活定点」を、生活者の暮らしと未来を展望する、いわば発想する資源として、社会のありとあらゆる領域の方々に、自由で多様な用途に役立てていただきたい、と考えたからです。

この「生活定点」無料公開に対して、たくさんの賞賛のメッセージや「いいね!」をいただきました。「博報堂、太っ腹」などとツイートしてくれた方もおられました。

この「生活定点」データでグラフを描いてみた一般の方が、驚かれていました。日本人がずっと変わらず信じてきたもの、その一等賞が、線となって目に見えたのです。それは「人の善意」でした。観測を始めた92年以来20年間、9割の人が一貫して「人の善意」を信じてきた。「善意」を示す折れ線グラフは、一番高い水準でフラットに推移していました。「なんだか嬉しくなりますね」と、そのグラフを描かれた方が、コメントしています。 広告は「ソン・トク」と「好き・嫌い」で出来ている、と言われます。「ソン・トク」とは「性能が上がりました」とか「値下げしました」というタイプの広告です。「好き・嫌い」というのは、商品に人格を与えて、その人格を好きになってください、というタイプの広告です。ここ数年、「ソン・トク」と「好き・嫌い」に加えて、「善し・悪し」を問う広告が増えてきています。それは、社会にとって善いことをします、と態度表明する広告です。例えば、商品を通してエコを実現する。震災に際しては、被災地を応援する。企業も商品も「人の善意」を信じる生活者に応えて、社会にとって善いことを追求しようとしています。

博報堂には「生活者から発想する=生活者発想」と「パートナー主義」という2つのフィロソフィーがあります。

博報堂は、生活者を一番良く知っている広告会社になろう、と努力を重ねてきました。生活者のことを一番良く知って、そこから発想することで、生活者の幸せにつながる新しい価値を創造していく。得意先やメディアのパートナーとして、共通の課題を持ち、一緒に解決していくことで、共に成長し、社会を豊かにしていく。生活者を「知る」、生活者から「発想する」、生活者へ「働きかける」―「知る」「発想する」「働きかける」という一連の動きが、生活者の集合である社会を「変える」―善い方向に「変える」という結果をもたらします。

これからも私たちは、「人の善意」を信じる、一人ひとりの生活者が幸福である社会の創造に貢献していけるよう、全力を尽くしていきたいと思います。

さて、3.11東日本大震災から2年が経ちました。日本が本格的な復興と経済再生への道を歩み始める今、皆さんを新しい仲間として迎えることができました。皆さんは、今日、博報堂人としての第一歩をスタートします。

そこで、これから博報堂で仕事を始める皆さんに、2つの言葉を贈りたいと思います。 まず1つ目は、「オペレーション自分」という言葉です。

博報堂生活総合研究所は、大震災後の価値観の変化を捉え、「オペレーションじぶん」の生活者が登場している、と指摘しました。

「オペレーションじぶん」の生活者とは、自分をオペレートするのは自分である、と思い定めた生活者です。誰のせいにするのでもなく、自分の判断で決める。そういう新しい自分を軸に、新しい「つながり」をつくりだそうとする。社会と関わることに喜びを感じる生活者です。

私たち博報堂に集う者もまた、ひとりの「生活者」でなければなりません。「オペレーションじぶん」の主体でなければなりません。

コミュニケーションの仕事、マーケティングの仕事は、自発的なもの、内発的なものが、なによりも大事な仕事です。自分というものを「込み」にした仕事だから、心を動かし、世の中を動かすことができるのだ、と思います。

今日から皆さんは、仕事を通して社会と関わりを持つことになります。その際仕事を、「オペレーションじぶん」の主体として、「自分ごと」として引き受けることが重要です。博報堂の仕事は、情報の起点をつくりだし、生活者、企業、社会に「活力」を湧きあがらせる仕事です。「自分ごと」にすればするほど、面白くなる仕事です。「自分はどう考えるのか」「自分自身は何をしたいのか」という強い想いを持ち、前向きに発言する必要があります。

博報堂には、自由に仕事ができる自立の風土があります。「オペレーションじぶん」の精神で、仕事を「自分ごと」として、自由闊達に臆することなく、持てる力をフルに出し切っていただきたいと思います。

2つ目は、「粒ぞろい、より、粒違い」という言葉です。

「粒ぞろい、より、粒違い」という言葉は、博報堂の人材についての考え方を表している言葉です。博報堂では、金太郎飴のような一律な人材は望まれていません。一人ひとりが自分らしくいきいきと輝いている。粒立っている。そうした異なった個性が、望まれています。

博報堂の中核能力は、クリエイティビティです。異なった個性と個性のぶつかり合いから、新しいアイディアが生まれます。いま博報堂は、デジタル、グローバル、プロモーションという3つのムーブメントを起こし、次世代型エージェンシーへの変革を進めようとしています。クリエイティビティというとき、それは広告表現という狭義の意味合いだけではなく、「次世代型統合ソリューション」を実現する「ひと回り大きなクリエイティビティ」を指しています。

この「ひと回り大きなクリエイティビティ」を実現するためには、いままで以上に「粒違い」の個性が必要です。そして、その多様な個性のぶつかり合いとチームワークが、いまだかつてないアイディアを生み出します。2013年入社の皆さんは、博報堂創業以来、最も女性社員や外国籍社員の数が多い、まさに「粒違い」な同期に恵まれています。皆さんには、若さとエネルギーに満ち溢れた「粒違い」の個性として、刺激しあって共に成長していただきたい、と思います。

会社としても、皆さんの成長を促す機会をどんどん作っていきたいと思っています。博報堂は、人が資産の会社です。一人ひとりの社員が生み出す価値が、博報堂の価値となります。私たちも全力を尽くして博報堂の舵取りを行ってまいりますので、皆さんも博報堂という船団のフレッシュなクルーとして、共に博報堂の未来を、力強く切り開いていきましょう。

以上をもちまして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。