日本マイクロソフトは3月8日、第12回「テレワーク推進賞」の会長賞を受賞した。日本マイクロソフトがどのような体制を整えているのか、またどの点が特に評価されたのかについて日本マイクロソフトと日本テレワーク協会に聞いた。

「テレワーク推進賞」表彰式で表彰される日本マイクロソフト 法務・政策企画 統括本部 政策企画本部長 業務執行役員のステファン・デュカブル氏

テレワーク推進賞とは、日本テレワーク協会がテレワークの普及を目的に主催している表彰事業だ。第12回となる今回は、会長賞を日本マイクロソフトおよびマイクロソフトディベロップメントが受賞した。ほかに優秀賞として8企業が選出されているが、会長賞は毎回必ず選出されるわけではないという。

日本テレワーク協会 主席研究員 鈴木洋氏

「会長賞にふさわしいものがなければ、会長賞は該当なしとなります。日本マイクロソフトの取り組みで特に評価したのは、モバイルワークの中に在宅勤務という形を入れて全社員を対象としたこと、いつでもどこでもオフィスのデスクと同じ環境を利用できるようにしたことで、デスクにしばられない働き方を見せたことです」と語るのは、日本テレワーク協会 主席研究員の鈴木洋氏だ。業界全体で、東日本大震災を機にテレワークに対する考え方が変わったという。

以前はワークライフバランスのためにテレワークを活用するという考えが主流だったが、震災以降はBCPが強く意識されるようになったという。また、BCP計画はあっても、実際には機能しなかったという体験をした企業も多い。

表彰式で講演した日本マイクロソフト 法務・政策企画本部 技術政策担当の冨沢高明氏

「日本マイクロソフトでは新たなテレワークの仕組みが2011年2月に完成していたため、震災直後にも業務が遂行できましたが、多くの企業は在宅勤務ではなく自宅待機になってしまいました。停電や交通機関の麻痺で通勤不能になった時、テレワークが機能しなかったのです」と鈴木氏は語る。

ノートPC+無線LAN+Microsoft Lyncで固定電話も全排除

日本マイクロソフトの取り組みは、現在の品川オフィスへのオフィス統合を契機に始められた。それまでにもテレワークは導入されていたが、育児や介護、本人の傷病などを理由とした適用以外は管理部門を中心とした部門に限られていた。

日本マイクロソフト 業務執行役員 社長室室長 シチズンシップリード 牧野益巳氏

「改めて調べた結果、日本の社員は意外と動いていることがわかりました。2,500人の社員のうち、デスクワーカーは4割しかいません。つまり、常にデスクにいなければならないのは4割の社員だけなのです」と語るのは、日本マイクロソフト 業務執行役員 社長室室長 シチズンシップリードの牧野益巳氏だ。

そこで、オフィスで利用するPCを一部を除いてノートPCにし、社内ネットワークを無線化した。また、固定電話を全廃。そして、コミュニケーションツールとして採用したのは、自社製品である「Microsoft Lync」だ。デスクワーカーではない6割の社員はオフィスでの自席を持たないフリーアドレス環境で業務を行うこととし、フリーアドレス座席は利用者数の8割程度に絞っている。

「外線からの電話は、すべて社員の持つPCにかかります。一部では部署の代表番号を設けていますが、その場合、所属社員全員のPCに着信し、出られる人が出るという方式です。こうしたグループ着信はMicrosoft Lyncで実現しています」と牧野氏。一定回数の呼び出し後は、支給されているWindows Phoneに転送するなど、細かい設定も自在だ。

固定席を持っているのは業務で機密情報を扱う部門や、サポートデスク部門などで、必要がないと判断されれば経営層でもデスクは持たない形になったという。ノートPCを抱えて移動すればフリーアドレス席でも、外出先でも、自宅でも同じように仕事ができるという仕組みだ。

「固定電話を排除したのは重要な評価ポイントです。フリーアドレス化しても固定電話は手放すことができない企業は多く、中にはフリーアドレスのはずなのに、電話を取るためにいつの間にか座席表ができてしまったというケースもあります。非常に大きな課題をクリアされたと思います」と鈴木氏は指摘する。