InMarketは"アプリケーションのディストリビューションサービス"

Eric Wittman氏

Adobe Systemsは、10月に開催された「Adobe MAX 2010」において、新しいアプリケーションマーケット「Adobe InMaket」の開始を発表した。同社でプラットフォームを担当するEric Wittman氏によるセッション「Roadmap: Flash Platform Services and App Monetization」では、その概要や利用方法、今後のロードマップなどに関する説明が行われた。本稿ではその様子をレポートする。 Adobe InMaket(以下、InMarket)は、開発者が作成したアプリケーションの配布や販売をサポートするマーケットサービスである。既存のアプリケーションマーケットとしてはAppleによるApp Storeや、GoogleによるAndroid Marketなどがメジャーなところだが、InMarketがそれらのマーケットと異なるのは、複数のマーケットやポータルサイトに対する配布/販売をサポートするサービスだという点である。InMarketは特定のプラットフォームにマーケットを展開するわけではなく、各プラットフォーム向けに提供されている既存のマーケットに対するアプリケーションの配信をサポートするためのサービスであり、Adobeではこれを「開発者のためのディストリビューションサービス」として位置づけている。

たとえば開発者がAとB、2つのマーケットで自作のアプリケーションを公開したいケースを考える。従来であれば、AとBで個別にアプリケーションを登録の手続きを行う必要があった。一方InMarketを利用した場合、一度InMarket上にアプリケーションを登録しておけば、設定画面で公開先のマーケットを選択するだけで手続きが完了するという。

Wittman氏はInMarketの特徴として次のような項目を挙げている。

  • より多くのユーザがターゲットになる
  • デスクトップだけでなく、モバイル端末やタブレット、テレビなど、さまざまな種類のマーケットに共通のフォーマットで展開することができる
  • 複数のマーケットに素早く配信することが可能
  • 複数のマーケットに配信されているアプリケーションを、同時に管理することができる
  • 販売状況や利用状況の詳細な分析が可能

以下は、InMarketを利用してアプリケーションの配布/販売する場合のワークフローである。

InMarketを利用したアプリケーション配布/販売のワークフロー

InMarketの利用方法

開発者は、Flash ProfessionalやFlash Builderを利用して作成したAIRアプリケーションをInMarketを利用して配布することができる。InMarketを使うための具体的な手順は以下のようになる。

  1. コード証明書を取得する
  2. InMarket Toolkit(SDK)をダウンロードし、Flash Builderに追加する
  3. アプリケーションキーを取得する
  4. アプリケーション名とアプリケーションIDを決定する
  5. AIRアプリケーションを構築する
  6. 作成したアプリケーションをInMarketにアップロードする
  7. 公開先のマーケットを選択する

InMarketのサイトからログインすると(Adobe Developer Connectionのアカウントが必要)、以下のような画面になる。Flash Builderなどを用いたアプリケーションの構築以外の作業はこの画面から行うことができる。コード証明書については、今登録すれば1年間無料の証明書を発行するとのこと。

InMarketの管理画面

コード証明書の申請

InMarket SDKのダウンロードとその利用方法の解説

アプリケーションキーの取得

アプリケーション名とIDを検索し、重複していないかを確認

アプリケーションのアップロード

アプリケーションの管理画面の例

公開先のマーケットはアプリケーションごとに選択できる。現時点ではAIRアプリ向けのマーケットである「Adobe AIR Marketplace」と、Intelが提供している「AppUp Center」を利用することができる。AppUp CenterはMoblinやMeeGo向けのマーケットプレイスで、InMarketの最初の提携パートナーとなる。統合されたレポート機能が提供される点もInMarketの強みであり、これによってアプリケーションやプラットフォームごとにダウンロード状況などの詳細な分析を行うことができるという。

アプリケーションやプラットフォームごとの分析が可能

今後のロードマップとしては、2011年の初めを目処に次のような展開を考えているとのことである。

  • テレビやタブレット、モバイル端末向けに提携パートナーを発表
  • アカウントマネージャの拡張
  • 有償プログラムの開始
  • 支払方法の選択肢を増やす

また、その次の段階として次のような展開が予定されているという。

  • さらなる提携パートナーの追加
  • アフィリエイトプログラム
  • プレミアム分析サービス

現時点ではまだ対応するマーケットが少ないため、InMaretを利用するメリットはそれほどないかもしれない。InMarket成功の鍵は、どれだけ提携先を増やせるかにかかっていると言えるだろう。今後提携先が増え、大きなアプリケーションマーケットを取り込むことができれば、自作のアプリケーションを広く配布/販売したい開発者にとって極めて有力なサービスとなり得るだろう。