日立製作所は5月11日、2010年3月期(2009年4月1日 - 2010年3月31日)の連結決算を発表した。売上高は前期比90%の8兆9,685億円と下げたものの、営業利益は原価低減と固定費削減が功を奏して前期比159%の2,021億円となり、税引前の純利益は635億円と黒字を確保した。しかし、昨年実施した上場連結子会社5社に対するTOBの影響で繰延税金資産評価減などが発生したこともあり、最終的には当期純損失1,069億円の赤字決算となった。日立製作所 執行役副社長 三好崇司氏は「キャッシュフローが大幅に改善し、とくに営業活動に関するキャッシュフローは計画よりも大きく上ブレすることができた。しかし結果として赤字決算になってしまい、株主配当を実施できなかったことは非常にくやしい。足下の状況をしっかり見つめ、来期こそは配当を実現したい」としている。
同社は2010年3月期から米国会計基準に基づいて事業部門別セグメントを変更、現在13のセグメントが存在する。セグメント名と主要カンパニー/グループ会社は以下の通り。
- 情報・通信システム … 情報・通信システム社
- 電力システム … 電力システム社
- 社会・産業システム … 社会・産業インフラシステム社、都市開発システム社、ディフェンスシステム社、日立プラントテクノロジー、日立産機システム
- 電子装置・システム … 日立ハイテクノロジーズ、日立メディコ、日立国際電気、日立工機、日立ビアメカニクス
- 建設機械 … 日立建機
- 高機能材料 … 日立金属、日立電線、日立化成工業
- オートモティブシステム … 日立オートモティブシステムズ、クラリオン
- コンポーネント・デバイス … 電池システム社、日立マクセル、日立ビークルエナジー、日立ディスプレイズ、Hitachi Global Storage Technologies
- デジタルメディア・民生機器 … 日立アプライアンス、日立コンシューマエレクトロニクス
- 金融サービス … 日立キャピタル
- その他 … 日立物流、中央商事、日京クリエイト、日立ライフ、日立保険サービスなど
事業部門別に見ていくと、13のセグメントのうち、前期から実質的に増収を果たしているのは電力システム(前期比104%)のみで、これは「欧州および南アフリカの火力発電システムへの需要が牽引」(三好氏)した結果とのこと。営業利益もプロジェクト管理の強化などもあり220億円の黒字となっている。同セグメントは、原子力発電事業なども堅調に国内・海外ともに堅調に推移しており、「2、30年ぶりに米国の原子力システムを受注した」(三好氏)など、明るい材料も多く見られる。その他の事業部門については、高機能材料、オートモティブシステム、デジタルメディア・民生機器が「回復基調にある」(三好氏)一方で、同社の主力となるべき情報・通信システムは景気の悪化とIT投資抑制の影響を強く受け、減収減益となった。
2011年3月期の見通しについては、2009年10-12月期(第3四半期)以降、四半期損益が黒字転換を果たしていることに加え、日本経済が緩やかな回復基調に入りつつあること、中国および新興国の強い需要が引き続き期待できることなどから、増収増益の実現、さらには営業外損益が大幅に改善できると見ており、最終的に純利益1,300億円の黒字を見込んでいる。
来期の黒字化のために欠かせないのは情報・通信システム部門の業績回復だ。三好氏は「2010年度は上期にIT市場が景気の底を打つと見ている。今後、グローバル事業の拡大やクラウドコンピューティング事業の強化、さらに10月に予定されている日立ソフトと日立システムの統合による開発の強化といった事由から、増収増益を見込んでいる」としている。情報・通信システムは4月に同社社長に就任した中西宏明氏の出身グループでもある。三好氏は「2012年ごろから景気の本格回復が始まるのではないか」と予測するが、その基盤作りのためにも、同部門の復活が日立の今後を大きく左右することは間違いない。