樋泉氏「地域メディアがやることはまだまだある」

北海道テレビ専務取締役の樋泉実氏

地方局では、キー局以上に広告費の減少や地デジ対応による支出で特に厳しい経営状況に置かされているが、地域活性化や地域情報の充実、さらには観光PRなどその果たすべき役割は大きい。シンポジウムの第3部「社会・地域への貢献の道」では、初めに北海道テレビの先進的な取り組みが紹介された。同局では1997年から台湾・香港・シンガポールなどアジア向け衛星放送に参画し、北海道を紹介する情報番組を放送。その結果、観光客増という注目すべき効果が現れている。また、地デジのデータ放送では、地域情報から不審者情報、さらには小規模商店などの広告も掲載し、ローカル局ならではのサービスも充実させているという。

同社専務取締役の樋泉氏は「(地デジ導入などによる)変化をどう味方につけるには、と考えたことがこうした試みを始めたきっかけ。地域メディアがやることはまだまだある。地域にいけばいくほどきめ細かいサービスが必要。地デジを待っているのは逆に過疎地かもしれない」と述べた。

NHK専務理事の金田新氏

2012年度からの受信料収入10%還元が決まったNHKの新しい取り組みも紹介された。昨年12月から、放送番組のビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス「NHKオンデマンド」が開始。また、外国人向けの英語によるニュース・情報番組専門チャンネル「NHKワールドTV」も24時間連続放送となった。ローカル民放が制作したドキュメンタリー受賞作品の放送など、従来の枠組みを越えた試みも始めている。NHK専務理事の金田氏は、NHKオンデマンドに関して「ビジネスモデルとして確実に定着したのでは。人気(興味・関心)はあるが(番組)購入はまだまだ少ないので、値段を含めてマーケティングのところでいろいろ変えていかなければならない」と話した。

竹中氏「もっと積極的な変化を」NHKにも苦言

テレビ局側が示す変化への対応策に対し、竹中氏「まだ十分でない」と発言。民放やNHKの最近の取り組みが示されても、「実際(テレビ局は以前と比べ)変わったのだろうが、もっと変われるはず。『NHKと民放はこれでずいぶん変わるな』とまでは思わなかった」とバッサリ。その上で「テレビは制度そのものを変えることについてももっと積極的になっていい」と指摘した。

特にNHKに対しては、(1)公共放送として報道中心に質の高いコンテンツを作っていく、(2)日本の放送全体をリードする仕組みを作る、の2点を求めた上で、「コンテンツ力が落ちている。日本の良心としてNHKの放送はさすがに事実をとらえ正確に伝えている、という信頼感が揺らいでいる」と現在の番組の質に不満を吐露。

「巨人・阪神戦をNHKが放送する必要があるのか」などと、番組編成についても批判。2008年上期にNHKがゴールデンタイムの視聴率で民放を抜き1位になったことについては「これが(果たして)いいことなのか悪いことなのか」と厳しい発言を続けた。

一方、堺屋氏は北海道テレビの取り組みを評価。その上で「テレビが衰退産業と言ってはいけない。なすべき仕事はたくさんある。テレビは『楽しい暮らし』をつくるメディアとして頑張り、自信を持ってほしい。その自信で世界に通用するコンテンツをつくってほしい」とエールも送った。

シンポジウムを振り返ると、「今テレビ局に必要なのは積極的な経営改革」という点でほぼ意見は一致したものの、求められる改革の質や程度では、テレビ業界側と竹中・堺屋両氏の間に大きなギャップがみられたと言える。

シンポジウムの様子は5月31日午後6時からNHK教育テレビ「日曜フォーラム」でも放送される予定。