「お客様は神様です」顧客ニーズに応えるシステム

年々充実するComcastのオンデマンドサービス。毎月1万以上のコンテンツが選択可能で、そのうちの9割が視聴フリーとなっている

ユーザーを楽しませてこそコンテンツとしての価値がある。コンテンツを好きなときに楽しみたいという要求に応じ、またそれらを楽しむためのさまざまなツールを提供することで楽しさを倍増させるのが事業者としての本来の在り方だろう。

Comcastが現在力を入れているものの1つがオンデマンド配信の強化だ。2002年のスタート時には250程度だったオンデマンド・コンテンツが、2007年時点では毎月1万以上のレパートリーで提供されるまでに達している。これまでの累計閲覧数は60億回で、これはiTunesのローンチからの楽曲ダウンロード数の2倍、宅配型DVDレンタルサービスのNetflix利用件数の6倍に相当するという。またオンデマンドで提供されるコンテンツのうち、9割がフリーで閲覧可能なものだという。2008年以降もコンテンツ数を大幅に拡大し、HDベースのコンテンツも充実させていく計画だとRoberts氏は述べている。

これまでの累計視聴回数は60億回。これが意味するのはiTunesでの累計ダウンロード数の2倍という水準。それだけニーズが多いことがわかる

今後もさらにオンデマンドのコンテンツを充実させ、さらにHD動画の本数も増やす計画

コンテンツの楽しさを倍増させるツールも重要だ。Comcastが提供している「Fancast」というWebサイトでは、番組内容のチェック、キャストのプロフィール、ファン向けの特別情報、DVDや関連グッズの検索、映画の上映スケジュール確認やチケット購入など、コンテンツに紐付けされたさまざまな情報が用意されている。ユーザーが興味の赴くままにコンテンツをリサーチし、さらにリーチを広げるツールとしての機能を持つ。またPC以外のデバイス、例えばTVを使って直接Fancastへのアクセスが可能な環境も用意される。

ユーザーの楽しみを倍増させるための仕掛け「Fancast」。映像コンテンツに紐付けされた各種ファン向け情報が満載のサイト。番組情報やキャストのチェック、トレイラーの視聴から映画情報まで、ここを基点にさまざまな情報を検索できる

人気番組「American Idol」司会のRyan Seacrest氏が登場して、Fancastとインタラクティブコンテンツの世界を案内する

「Six°(シックス・ディグリー)」と呼ばれるサービス。FancastのPeopleページで特定の人物を選択すると、それに関係する5人の人物を含めた6人のプロフィールが画面に表示され、その相関関係を知ることができる。表示された別の人物のプロフィールに移動すると、さらにその人物に関連したプロフィール6人分が表示される

光ファイバによる"ワイドバンド"で「Comcast 3.0」の世界へ

黎明期のCATVサービスをComcast 1.0、双方向をサポートした現世代をComcast 2.0とすれば、同社がこれらコンテンツ戦略で次に目指すのがComcast 3.0だ。鍵を握るのは双方向サービスとHDコンテンツである。こうしたサービスを支えるのが強力なインフラだ。Comcastでは現在DOCSIS 3.0をベースに光ファイバによる通信網の整備を進めており、これが実現すれば100Mbps超の下り方向の通信帯域が確保できるようになるという。

DSLでは6時間かかる2時間強のHDコンテンツのダウンロードが、"ワイドバンド"と呼ばれるComcastの最新サービスでは4分以内で完了する

デモストレーションが行われている間にダウンロードは完了。オマケでダウンロードしたHD画質の最新映画予告編が披露される。それが終了してもなお、DSLやダイヤルアップでは2%以下しかダウンロードが完了していない

「例えばHDクォリティで2時間強の上映時間を持つ映像コンテンツをダウンロードする場合、ダイヤルアップで7日間、DSLで6時間かかるものが、Comcast 3.0の"ワイドバンド"の世界では4分以下で実現できる」とRoberts氏は説明する。実際に他のプレゼンテーションと並行しながら「バットマン・ビギンズ」のHDコンテンツをダウンロードしたところ、わずか3分40秒ほどでダウンロードを完了している。そのままオマケ特典としてついてきた今夏全米で封切りされるバットマン最新作「The Dark Knight」のトレーラーを披露し、他のサービスに対して余裕を見せつけた。

DOCSIS 3.0に準拠した光ファイバ通信網を用いることで、100Mbps超の通信速度を実現する。2008年内にはサービスの提供が開始される予定で、将来的にはDOCSIS 3.0のフル規格である160Mbpsにも対応

「なぜ "ブロードバンド" ではなくて "ワイドバンド" なのか。それは従来のブロードバンドよりも広帯域をサポートするからだ。2008年内には米国内で100Mbpsのサービスをスタートする計画だ。またDOCSIS 3.0自体は最大160Mbpsまでの帯域をサポートしており、将来的にこの機能拡張にも対応する」とRoberts氏は述べ、米国でいち早く光ファイバサービスの全国展開に自信を見せる。