10gと11gは同社の戦略転換を象徴するプロダクト
10gと11gでは同社のデータベースに対する取り組みが根本的に違っており、同じ戦略上に開発されたプロダクトと捉えるには無理がある。11gは10gをベースにして開発された新しい方向性をもったデータベースソリューションと捉えるほうが妥当であるように思える。
ここで我々はある検討をしておく必要がある。11gが目指した方向性がデータベースプロダクトとして妥当なものであったか否か、ということだ。旗艦プロダクトが多機能高性能主義になるのは当然の流れだ。Oracle Databaseをこれまで通りの方向性で開発し、目を引く機能を追加していくことも可能だったはずだ。しかしOracleはそれを選択しなかった。多少地味になるが、確実に顧客が効果を延ばせる方法を選択したわけだ。
11gはトータルソリューションベンダへ移り行くOracleの象徴的プロダクト
企業における情報システムは、複雑化の路線を走っている。従来の業務を電子化することでつながりのないシステムが誕生する。部署内や部署間で各種システムを統合する必要性が生まれ、最終的には企業内の情報システムや基幹システムを統合する必要に迫られる。次のステップは、統合したシステムをいかに活用できるようにするかというエクスペリエンス向上のフェーズに入ってくる。技術指向のシステム開発から、ビジネスモデル重視のシステム開発へと移行するわけだ。
こうした現状において、地味になっても確実にユーザエクスペリエンスや性能の向上を実現してきた11gは、正しい方向へ進んでいるように思える。たしかに、データベースはエンタープライスシステムの要だ。この要のプロダクトが派手さの点で一歩引き、エンタープライズソリューションの舞台で役者のひとりまで降格することには寂しさを覚えるが、エンタープライズシステムはこの段階まで成熟してきたと見るのが妥当なところだろう。
今後はデータベースの機能性のみに注力するのではなく、周辺プロダクトとの接続性の良さや管理/保守の容易性なども考慮してプログダクトやエディションを選択する必要があるだろう。