「業種・製品ごとの標準化や開発済みソフトウェアの再利用を」- 経済産業省が事務局を務める「IT化の進展とわが国産業の競争力強化に関する研究会」はこのほど、米国に比べて劣っているといわれる国内企業のIT投資効率化に関する中間とりまとめを行った。ソフトウェア開発における国内企業の自前主義が、ユーザー企業とITベンダー双方にとって非効率化をもたらしていると指摘。非競合分野における業種・業界ごとの共同開発やパッケージソフトの積極的導入、開発済みのソフトウェアの再利用と外販など、"攻めのIT投資"を促す提言となっている。

IT投資効率性は非製造業で米国の10分の1以下

ソフトウェアは、研究、設計、開発、製造、販売といったあらゆる部分に導入されており、業務に必要な情報、ノウハウが内包されているため、今や企業活動そのものといえる。企業活動の成果である製品についても、組み込みソフトウェアはハードウェア製品の性能などを決める大きな要素となっている。また、労働力人口が減少する中、経済成長に占める全要素生産性(TFP)とIT投資の寄与度が2000年以降大幅に上昇するなど、IT投資の重要性は急速に高まっている。しかし、05年の全資本中のIT資本の資本ウェイトを見ても、米国の14.5%に対し日本は8.3%にとどまるほか、IT投資と生産性上昇の相関係数に関しても、製造業で米国の0.35に対し日本は約半分の0.19、非製造業では米国の0.41に対し日本は10分の1以下の0.03と、IT投資の効率性で米国に大きく差をつけられている。

同研究会は、こうした非効率性について、ITユーザーとITベンダーの双方の側面から原因を究明し、提言をするため今年1月に発足。野村総合研究所の村上輝康理事長ら3人が座長となり、ユーザー企業から富士通の秋草直之会長、松下電器の大坪文雄社長ら、IT企業からは日立製作所の古川一夫社長らが参加、計16人がメンバーとなっている。

ユーザー企業の自前主義が効率性のネックに

このほど公表された同研究会の中間とりまとめでは、IT投資の非効率性の原因について、多くのユーザー企業がソフトウェア開発に際して「囲い込み」と称される自前主義をとっていることを第一にあげている。「『これまで使っていた書類と同じ見栄えにしたい』『帳票の枠の角を丸くしたい』など、現場からあがってくる声に応じて非競合分野でもカスタマイズするなど、IT投資の"選択と集中"を行いにくくなっている」ことや、「ユーザーの自前主義に応じる形でITベンダーが受託開発中心になることで、売り上げは確保できるものの収益性が低くなりがちになっている」ことが、IT投資の非効率性をもたらしているとしている。また、組み込みソフトウェア開発に関しても、「現場では、その場、その場での対応に追われ、OSのバージョンアップやブラックボックスの解消などができないまま"負のスパイラル"に陥っているケースが多い」といい、こうしたことが、IT投資の非効率性をもたらす大きな原因となっているという。

同研究会では、こうした状況を改善するため、

  1. 業種・製品ごとの共同開発・標準化
  2. 個別企業が開発したソフトウェアの再利用・外販
  3. 政府調達ソフトウェアの汎用品化

などを提言。1の共同開発・標準化では、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車メーカーやデンソーなどの自動車部品メーカーの自動車組み込みソフト共同開発コンソーシアム「JASPAR」や、住友商事や三井物産、三菱商事が共同開発した商社業務管理システムなどの例を挙げ、「こうした取り組みにより、投入するリソースを大幅に削減することができる」と指摘。経済産業省では、企業が今後こうした共同開発を行う際、予算面で支援することも検討しているという。

開発済みソフトウェアが外販で進化

また、2の開発済みソフトウェアの再利用・外販については、1990年代にIBMが日本国内の自社半導体工場用のシステムを外販し、台湾、韓国の新興半導体メーカーに普及する中で性能が進化した例や、自社開発した生産管理システムをダイセル化学が横河電機に販売して成功した例を挙げ、「外販することにより複数のユーザーからフィードバックを得て、ソフトウェア製品の信頼性・競争力を強化できる」と提言している。 3の政府調達ソフトウェアの汎用品化については、年6,000億円を超える政府のソフトウェア調達に関し、パッケージソフトやSaaS(Software as a service)を利用するなどして、国内ITベンダーの受託開発中心のビジネスモデル転換を促すべきだとしている。

同研究会ではこのほか、CIOレベルではなくCEOレベルでの業務横断的な情報交換推進のための協議会発足なども提案しており、「IT投資効率化は、ITユーザー企業の経営トップが取り組むべき最も大きな課題のひとつ」として、今回の提言の活用を訴えている。