新しく家を建てる場合、木が生えていて手入れをしていない自然のままの土地や、建築物が建っている状態のままでは家を建てることはできないため、土地の造成工事をしなければならないでしょう。宅地とするための必要な環境を整える工事のことを造成工事といいます。
そのような造成工事には費用にはどのようなものがあるのかご存知でしょうか。本記事では、土地の造成にかかる費用の内容や、その費用をできるだけ抑える方法などを解説していきます。
土地の造成費用が決まるポイント
土地を造成するときにかかる費用は、広さが同じでも一定の金額にはなりません。造成費用が決まる要因は下記の2つです。
- 工事内容
- 土地の傾斜具合
ここではそのポイントについて順に詳しく説明します。
工事内容
造成工事の際は、土地がどんな状態になっているのかで金額が変わります。それは、その土地の状態によって工事の種類も変える必要があるためです。ここではその工事の種類について具体的に紹介します。
整地
住宅を建てる以外にも使えるように、不必要となった構造物・資材、木や草などを機械や人の手で取り除き、土地を平らにし、地固めをすることです。この工事は、造成工事の最後にどんな工事をした後でも必ず行う内容です。
- 粗仕上げ
仕上げの中では一番簡単に済ませる方法となります。建物を解体し、木を切った後に残っているコンクリートの欠片やこぶし大程度の石、木くず、建物の硝子片等を取り除きます。その後は、ローラーで土地の表面を均一にならします。
- 砂利造成
粗仕上げより細かい不要物を取り除いた後、残っている土砂と一緒に砂利を混ぜ、その後ローラーなどで地面を固める方法です。
- 防草シート仕上げ
土地を平らにした後に、防草シートを敷いて仕上げる方法です。防草シートを敷くと雑草が生えるのを防げます。
- コンクリート・アスファルト仕上げ
コンクリートやアスファルトで固め、駐車場などに利用するために行うときの仕上げ方です。他の仕上げ方をするときより費用は高いでしょう。コンクリートのほうがアスファルトと比べて費用は高く、工事の期間が長くなりますが、劣化のスピードが遅いのが特徴です。
伐採や抜根
不必要な草木が生い茂っているときには、木の伐採、根っこを除去します。根まできちんと除去しないと再び生えてくる可能性があります。
地盤改良や地質変更
宅地にするならば、強固な地盤であることが重要になります。田んぼや畑と森林、工場跡地などでは土地の地盤が違うでしょう。長い間、宅地として使っていなかった土地は、土地の質が悪いことがあるでしょう。
また、地震に耐えうるような丈夫な家を作っても、地盤が弱いままでは地震が起きると液状化し、地盤沈下が起こる可能性もあるでしょう。そうならないためには、地盤の改良や地質変更をしなければいけません。
セメント系の固定剤を掘った土で混ぜて強度をあげたり、コンクリートの柱を土中に何本も打ち込んだり、鋼杭を打ち込んだりする工事が一般的です。
土盛や土止
土地が隣接している道より低い土地であれば、降った雨が土地へ流れ込まないために、隣接している道路と同じ高さやそれよりも高くする土盛や土止の工事が必要となります。
道路より土地のほうが低い場合、土を盛って平らな状態・高くすることを土盛りといい、その工事により雨水の排水もできます。一方、土止は土盛工事をした後に土盛した部分が崩れる、もしくは流出を防ぐために行う工事です。
残土処分
傾斜のある土地を平らにする工事をしたときは、斜面を削る作業の切土というものを行い、出た土砂を敷地外へ運び出して処分をしなければいけません。
しかし、残土はどこへでも捨てて良いものではありません。この残土処分については、住んでいる都道府県毎で受け入れ先が限定されていて、土の質にも基準が設けられていることに注意が必要でしょう。
擁壁工事
道路と高低差がある土地の斜面が、崩れないようにするために行う工事のことを、擁壁工事といいます。
この工事は土砂崩れを防ぐ以外にも、土地と隣接している道路の高低差がある場合に行う工事です。擁壁は、コンクリートやブロックなどを利用し、斜面を覆うように擁壁を作ります。
土地の傾斜
上記の工事以外にも費用の差が出るのは土地の傾斜具合です。平坦な土地ならそのための整地工事はせずに済み、費用も掛かりません。傾斜や凸凹している土地は、その傾斜をならすような工事をしなければ、家は建てられません。それだけでなく、傾斜が大きい土地は擁壁工事も必ず必要となっていきます。
一般的に、傾斜角が大きいほど価格は高くなるということを覚えておきましょう。
土地の造成費用を抑える5つの方法
造成費用にかかる金額の項目を知ったところで、今度はその費用を抑える方法がないか考えていきましょう。費用を抑える代表的なコツは以下の通りです。
- 土地を購入する前によく確認する
- 直接造成業者に依頼する
- 造成時期と建設時期を離さない
- 自分でできる作業は行う
- 近隣トラブルを事前に回避する
これらのことを把握しておき対処できることはしておくことで、掛かる費用が節約できるでしょう。
土地を購入する前によく確認する
持っている土地を造成するときは、利用方法に適した土地の整備を検討し工事すればよいでしょう。ですが、土地探しをこれからするなら、選ぶ土地次第で行う造成工事の種類が変わり、費用も増減します。必要な工事自体が少なければ費用も下がるでしょう。
購入する前には必ず、土地の情報をよく調べ、現在の状態や土地の過去についてよく確認をすることで、費用の節約へと繋がります。
土地の情報を調べる手段としては、過去の住宅地図や登記簿謄本を取得すると地歴を調べることができ、地盤調査資料を見ることで分かります。
直接造成業者に依頼する
造成工事自体は住宅の建築を依頼するハウスメーカーや、不動産会社などは直接行いません。ハウスメーカーや不動産会社が造成工事を行う会社に依頼し、依頼された会社が造成工事を行う場合もあるかもしれませんが、更に下請けへと依頼することが多いです。
その際、中間マージンという手数料が発生します。この手数料は、紹介料として工事代金の1割程度が支払われるのが一般的です。その中間マージンは造成工事の費用に最終的には上乗せされます。費用を抑えたい場合は、ハウスメーカーや不動産会社にではなく、造成業者に直接依頼することで費用が抑えられます。
造成時期と建設時期を離さない
造成時期と建設時期を離さないほうが良い理由は、固定資産税の減税です。更地にしておくよりも、住宅などの建物が建っている方が、特例により固定資産税の税額が一般住宅地なら1/3、小規模宅地なら1/6に減税されるのです。
固定資産税は、毎年1月1日時点で所有していることで発生するものです。造成して翌年1月1日までに住宅ができ、建築できれば特例が利用できるので固定資産税が下がります。
自分でできる作業は行う
造成工事の中には、自分で行える作業があるのでしょうか?工事自体は素人にはできない工事がほとんどですが、雑草の処理や土地にあるゴミの処分などは自分でもできるのではないでしょうか。雑草は自分で抜き、ゴミは処分場へ自分で運ぶことをしておきましょう。
自分で事前にできる作業を行っておくことで費用は更に抑えられます。
近隣トラブルを事前に回避する
工事前に予想できない近隣トラブルで費用がかかることもあります。どんなトラブルがあるのでしょうか?
造成工事は手作業で行えるものもありますが、大抵は重機を使って行います。そのため、造成工事をしていると近隣への騒音や振動、粉砕飛散が起こることがあります。それにより近隣住民が迷惑と感じトラブルへと発展する可能性があります。発生したトラブルで、修繕費用や近隣住民に支払うお詫びとしての慰謝料、弁護士費用が発生する可能性も考えられます。
造成工事を行うときは、事前に近隣への工事の説明や挨拶回りをしておくこと、造成工事前の土地の状態を記録しておくことによって、造成工事に対するご近所からの理解も得られ、近隣トラブルを未然に防ぐと同時にトラブルによる無駄な出費も減らせるでしょう。
土地の造成費用は住宅ローンに組み込める可能性がある
住宅ローンは完成した建物に対して利用できるローンです。宅地を造成し、住宅を建てる場合はその費用については住宅ローンが利用できるのでしょうか?住宅を建てることを前提として土地を買い、建築予定の住宅のプランや売買契約書などがあれば、金融機関にもよりますが土地の造成費用であっても住宅ローンを利用できる可能性があります。
住宅ローンを利用できない場合については、つなぎ融資というものを利用できます。つなぎ融資は金利が割高になりますが、住宅が完成するまでの間、一時的に融資をしてもらえる仕組みのことです。住宅が完成した後、融資された部分を精算し、住宅ローンへと切り替えられます。
土地の造成をする際の注意点
これまでは土地の造成費用の項目、費用を抑えるコツを解説してきました。しかし、それ以外にも知っておいたほうが良いことがあります。
- 土地の造成は自由に行えるものではない
- 造成に期間がかかる可能性がある
- 費用の安さだけで業者を選ばない
上記の注意するポイントについて一つずつ詳しく解説していきます。
土地の造成は自由に行えるものではない
自己所有している土地なのに、造成はむやみやたらに行うことができないのはなぜでしょうか。土地を切り開くことによって、森林破壊などによる土砂崩れにつながることがあります。そういったことを防ぐため、以下のような法律が設けられています。
- 宅地増設規制法
土地を宅地にする場合、切土や盛土をして崖地となってしまう場合、土砂災害及びがけ崩れが懸念される地域に設定されている法律で、都道府県からの許可が下りなければ、工事を行うことができません。また、工事終了後も基準に適合しているかの検査をし、適合していなければいけません。
例えば、切土で土地の高さが2mを超え、30度以上の斜面となるような工事や、盛土で土地の高さが1mとなるような土地での工事が挙げられるでしょう。
- 都市計画法
宅地増設規制法は都道府県によって規制される地域が決まっています。ですが、規制法により該当となっていない地域でも、都市計画法に該当する地域であれば、宅地とするための許可を取らなければいけません。
都市計画法とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市建設の整備及び市街地開発事業に関する計画と定められています。
宅地とする土地が、都市計画法の地域となっているかは確認をし、該当地域の場合で、土地の区画や形を変更する場合は都道府県知事などからの許可を得る必要があります。
造成に期間がかかる可能性がある
造成工事は、様々な工事の種類があることが分かりましたが、土地の状態や形、傾斜、面積、擁壁の有無によって工事期間が変動します。
形がいびつではなく、土地の傾斜もほとんどないような簡単な工事の場合は5日~7日程度で工事自体は完了します。一方、広い土地の場合や傾斜のある土地など、工事内容によっては大規模工事となるので、1~2カ月以上かかることもあるでしょう。
また、梅雨や雪の時期に行う場合は地面が固まるまでの時間がかかります。前述したことを念頭に入れておくことで、工事開始の時期が決定できるのではないでしょうか。それに伴い、期間短縮ができます。
費用の安さだけで業者を選ばない
造成業者の選び方にも注意が必要です。業者選びで安くはなりますが、あまりにも安い場合は、造成に必要な種類の工事内容を省くなど、工事内容を怠る悪徳な業者の可能性もあります。
造成費用以外で業者を選ぶ方法については、下記のポイントを抑えることが重要です。
- 複数社に査定を依頼し比較をして決める
- 見積書には、造成計画について掛かる費用などが細かく記載されていること
- 担当者の説明が分かりやすい
- 産業廃棄物管理票を確認する
- 過去の造成工事の実績について確認する
- 造成工事後のアフターケアやサポートの充実度
造成業者によって金額は変わるため、必ず複数社へ査定を依頼し比較しましょう。一社だけで判断するのではなく、査定結果を比較し、その上で選ぶことが大事です。
見積書には工事の内容が細かく記載されていることを確認し、どのような工事計画であるかの確認もきちんとしましょう。確認するときは、担当者の説明が分かりやすいか、質問にはきちんと答えてくれるかが重要で、誠実な業者であるかもわかるでしょう。
造成工事後には、産業廃棄物が出ますが、その処理には法律が厳しく定められています。不正な処理がされていたときは工事を行った側だけではなく、依頼主も罰せられることもあるので、産業廃棄物管理票の確認を必ずしましょう。確認だけでなく発行してもらうことも大事です。自社で廃棄物の収集運搬だけでなく処理施設を有している業者もあります。
更に、業者を選ぶうえで大事なことは、造成工事の実績がどのくらいあるのかです。安さだけではなく造成工事の豊富な実績を持つ業者に依頼したほうが、工事を安心して任せることができます。
また、工事前には予想できなかったトラブルも工事後に起こる可能性もありますので、万が一不都合が起きた場合のアフターサービス、定期点検などのフォローをしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
まとめ
この記事では、あまり馴染みのない造成工事について解説してきました。家を建てたい土地は造成工事をする必要があります。また、造成するためには、土地の様々な条件によって必要な工事内容が変わり、その工事内容により費用も変わります。
また、本記事では工事費用を抑えるコツがあるということを紹介しました。この記事を理解することで造成工事をスムーズに、且つ適正な価格で済ませることができるでしょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
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