タフブックは、堅牢性を追求したノートパソコンとしての進化だけでなく、そのノウハウを生かして、ラインアップを拡大していった。

ニーズから生まれた手持ち作業用の堅牢デバイス

代表的な製品のひとつが、2001年11月に発表したハンディタイプの「CF-P1」である。

ボディはマグネシウム製で、120cmからの落下、全方向からの防滴などのMIL SPEC(米国国防総省の軍事品採用試験)や、JISの防滴/防塵基準をクリアする性能を持つ。いわば、「フルラガタイズ(フル頑丈モデル)」の性能をハンディタイプに盛り込んだ製品であった。

CPUはStrong ARM 206MHzを搭載し、OSには、Windows CE 3.0 Embeddedを採用。ディスプレイは感圧式タッチパネルになっており、ポインティングデバイスとしての役割も兼ね備えた。また、本体下部に38キーのミニキーボードを用意。キーボードにはバックライトを採用し、暗い所でも操作しやすくした点も特徴だった。ハンディタイプでこの仕様を実現しているキーボードがなかったたる、ここは内製で作り込んだものだったという。

さらに、CF Type2スロットとSDメモリーカードスロット(MMC対応)を搭載。CFスロットには、GPSユニットやバーコードリーダーを装着できるようにして、ワイヤレス通信機能として無線LANあるいはH"IN(DDIポケット)を搭載。クレードルドックコネクタも新規で開発したものだった。

こうした様々な機能を満載することで、堅牢なハンディ端末という枠を超え、バイク便の動態管理/配車システムとして、あるいは建設現場での図面確認用途などとしての提案も行われた。

これもタフブックが得意とする顧客の声を聞いて、製品化するという姿勢によって実現したものだ。

だが、ハンディタイプの製品は、海外市場よりも、日本での反応が高く、国内の電力会社などでの採用を中心に進んでいった。

さらに、「CF-P1」の後継機種となる「CF-U1」を、2008年11月に投入した。インテルやマイクロソフトなどが提唱したモバイルPC規格であるUMPC(Ultra-Mobile PC)に準拠した製品として、インテルのAtomプロセッサーを搭載するとともに、フルWindowsであるWindows Vistaが動作。120cmからコンクリート落下にも耐えられる設計としており、他のUMPCと差別化するため、「頑丈UMPC」という言葉が使われた。

  • 「頑丈UMPC」と位置付けられた「CF-U1」

    「頑丈UMPC」と位置付けられた「CF-U1」

Atomによる電力パフォーマンスの向上だけでなく、長時間の手持ち作業でも熱くならないように工夫を凝らしたのも特徴だ。

マグネシウム合金で基板を囲うとともに、マグネシウム合金と筐体との間に空気層を作り、内部温度の均一化を実現する放熱設計を採用したほか、筐体外部では、本体とヒートプロテクターの二重構造とし、その間に空気層を作り、外気を通す仕組みを採用している。ユニークな機能のひとつが、セルフクリーニングコネクターの採用だ。本体とオプションまのクレードルを挿抜するだけで、本体のコネクターをクリーニング。ホコリや水滴による接触不良を回避することができた。こうした新機構を取り入れることで、堅牢UMPCとしての進化を果たした。

<動画>「CF-U1」の製品発表会見では本体を落下させるデモストレーションを実施

この頃、日本で販売しているレッツノートをベースにして、「タフブックライト」ブランドで、軽量ノートパソコンを海外展開する動きも見られた。2005年前後には、国内ではレッツノートとして展開していた12時間駆動タフモバイル、ドライブ内蔵軽量耐モバイル、14.1型液晶パネル搭載の大画面モバイルを「タフブックライト」としてラインアップ。海外市場のニーズに応えて、ハードディスクの脱着を可能にしたり、タッチパネルを搭載したりといった機能を追加した。

だが、ビジネスモバイルのシーンにおいて、日本ほど軽量化が重視されていないことや、当時は、低価格のノートパソコンがオフィスに相次いで導入されていた時期でもあり、「タフブックライト」の付加価値は、グローバル市場の動きにミートしたわけではなかった。

その一方で、日本でタフブックの活用が広がったのは、大手飲料メーカーが、自販機のメンテナンス業務のために、「CF-18」を採用したことがきっかけとなっている。朝のミーティングで、社内ネットワークに接続して、必要なデータをタフブックにダウンロード。それを作業車に持ち込んで、担当地区を巡回したという。車の振動にも耐えられ、ハンディターミナルよりも表示能力が優れている点が採用理由であり、持ち運ぶ端末の故障削減と、現場作業の効率性向上に貢献したという。

2004年にパナソニックは、パソコン事業を推進するITブロダクツ事業部の傘下に、米国および欧州におけるパソコン専門販社を設立した。米国ではPanasonic Computer Solutions Company(PCSC)、欧州ではPanasonic Computer Products Europe(PCPE)をそれぞれ設立し、これにより、タフブックの業界別販売体制を強化していったのだ。当時の同社パソコン事業は、毎年のように、過去最高の販売高を更新しており、2004年末にはタフブックの累計出荷が100万台を突破。業界ごとのニーズに特化した販売が功を奏していた。

真似のできない「業種特化型のモノづくり」

業種特化型のモノづくりとして象徴的なのが、2009年3月に発売した「CF-H1」である。

医療現場での活用に特化した「CF-H1」は、90cmからの落下への対応、防塵性能の実現といったタフブックが持つ堅牢性を生かしながら、医療分野での用途に最適化するためのモノづくりを徹底的に追求。病院のIT化が注目されたタイミングに、医療分野に特化した戦略的製品の投入が注目を集めた。

  • 医療現場での活用に特化した「CF-H1」

    医療現場での活用に特化した「CF-H1」

「CF-H1」の開発の発端は、2003年からスタートした英国保健省傘下の国民保健機関(NHS)との連携だ。その後、欧州の100病院以上に、現場での端末の使用状況をヒアリングしたほか、日本では、国立成育医療研究センターと連携しながら、開発を進めていった。

開発にあたっては、女性の看護師が、患者のベッドサイトに持ち込んで利用するシーンを想定。タブレット型の形状を採用するとともに、持ち運びしやすいように上部にハンドルをつけ、握りやすさを追求したほか、作業を行う際には、片手で持って、タッチ操作やペン入力ができるようにストラップを付属した。これにより、患者のもとで、立ったままでも業務が行いやすいようにした。内蔵カメラを利用して、患者の様子を撮影し、その場でデータの記録や保存をすることも可能だ。

また、クレードルをナースステーションなどに設置し、そのままデスクトップパソコンとしても利用できる設計とし、指紋認証やカードリーダーによるセキュリティも強化している。

特筆できるのが、消毒液による拭き取りが可能な耐薬品性能を実現した点である。医療現場では、院内感染の防止のため、アルコールや次亜塩素酸などによる消毒が日常的に行われているが、「CF-H1」では、外装に新開発の表面材質を使用することで、薬品による拭き取り試験をクリア。しかも、拭き取りやすいように、凹凸の少ないスムーズな表面形状を採用した。ユニークなのは、クリーニングユーティリティ機能だ。画面を拭き残した場所がないように拭き取った場所を画面上に表示。さらに、クリーニングの履歴も保存でき、デバイスの清潔さを常に維持できるようにしていた。

「CF-H1」では、Atomプロセッサーを搭載していたが、2011年11月に発売した後継機の「CF-H2」では、Core i5プロセッサーを搭載。緊急出動した屋外を含む医療現場での利用を想定したフィールドモデルを用意した。半透過型液晶パネルを採用することで、快晴時の屋外でも視認性を高めている。

型番に「H」を付けたのは、ヘルスケアを意味する。医療分野に求められるタフさを兼ね備えた堅牢パソコンとして、病院への導入が進んでいった。

タフブックのラインアップの拡大として、コンバーチブル型への取り組みも見逃せない。

2003年6月に発売したのが、画面を180度回転し、ノートパソコンスタイルと、ペンPCスタイルの2通りで利用できるコンバーチブル型の「CF-18」である。市場への投入以降、無練LAN内蔵モデル、コンクリート落下対応モデル、高輝度液晶パネル搭載モデルといったマイナーチェンジによって進化を遂げながら、2007年2月には、「CF-19」として大きく進化。タッチパネルを搭載したタブレット/PCモード対応モデルとして発売した。

さらに、2016年3月には、頑丈ノートパソコンとしては世界初のデタッャブル型となる「CF-20」を発売。タブレットモード、ノートPCモード、コンバーチブルPCモードの3通りの形態で使用できるようにした。本体は1760gの重量だが、タブレット部だけならば950gの軽量化を実現。前後および左右の2方向にフックを付けたパナソニック独自の「ダブルフック着脱機構」を採用することで、装着時には外れにくく、着脱時には外しやすい仕組みとした。また、90cmからの落下試験をクリアしているほか、IP65に準拠した防塵/防滴性能も実現している。軽量化と堅牢性を両立した頑丈フィールドモバイルと位置づけた製品だ。

  • 頑丈ノートパソコンとしては世界初のデタッャブル型となる「CF-20」

    頑丈ノートパソコンとしては世界初のデタッャブル型となる「CF-20」

なお、「CF-20」の製品発表会見では、パナソニックのラグビーチーム「パナソニック ワイルドナイツ」が登場。「CF-20」にタックルするデモンストレーションが行われ、それでも無事に起動する様子が披露された。

  • 「CF-20」の会見には「パナソニック ワイルドナイツ」が登場

    「CF-20」の会見には「パナソニック ワイルドナイツ」が登場

<動画>「CF-20」にタックルするデモンストレーションが行われた