こだわり続けた、持ち運べる「軽量」の追求

レッツノートは、ビジネスモバイルを追求したPCである。それを実現するために、最優先のテーマとして、こだわり続けたのが「軽量」である。

レッツノートの第1号機となる「AL-N1」でも、「本当に持ち歩ける軽量かつコンパクトなノートパソコン」を目指して作られたことが、ニュースリリースに記されており、そこからも、「軽量」が最重視されていることが裏付けられる。そして、レッツノートは、長時間駆動、頑丈、高性能という要素を追求しながらも、軽量という要素を最優先する姿勢をまったく崩さなかった。

2002年から2004年までの第1世代では、小型モバイルの「CF-R1」、モバイルの「CF-T1」および「CF-W2」、大画面モバイルの「CF-Y2」のすべての製品において、それぞれのカテゴリーで世界最軽量を達成。「頑丈」を追求しはじめた2005年から2007年までの第2世代でも、「CF-R6」、「CF-W4」、「CF-F8」といった主力製品は世界最軽量の地位を維持し、「高性能」を達成した2008年から2010年までの第3世代においても、15.6型液晶を搭載した「CF-B10」では世界最軽量を達成した。

さらに、「クリエイティブ」や「洗練」というキーワードを打ち出した2011年から2014年までの第4世代においても、2in1モバイルの「CF-AX2」、タフ&クリエイティブを実現した「CF-SX1」、大画面モバイルを追求した「CF-LX3」で、それぞれ世界最軽量を実現している。

まさに、「世界最軽量の連打」が、レッツノートの代名詞となっていたのだ。

  • 2017年2月に20周年モデルとして発売した「CF-XZ6」は、神戸工場で特別に出荷式が行われ、同社幹部が初出荷の製品をトラックに詰め込んだほか、社員有志による「鯉の滝登り」が披露された。これは、創業者である松下幸之助氏の発案によって、正月の恒例行事として行われた「初荷」に倣ったもので、パナソニックの歴史として伝わる行事のひとつである。CF-XZ6はレッツノート初の着脱式2in1であり、さらに当時の着脱式2in1としては世界最軽量を実現し注目された
  • 2017年2月に20周年モデルとして発売した「CF-XZ6」は、神戸工場で特別に出荷式が行われ、同社幹部が初出荷の製品をトラックに詰め込んだほか、社員有志による「鯉の滝登り」が披露された。これは、創業者である松下幸之助氏の発案によって、正月の恒例行事として行われた「初荷」に倣ったもので、パナソニックの歴史として伝わる行事のひとつである。CF-XZ6はレッツノート初の着脱式2in1であり、さらに当時の着脱式2in1としては世界最軽量を実現し注目された

<動画>CF-XZ6、神戸工場で行われた出荷式の様子

世界最軽量の追求において、象徴的な存在となったのが、2014年10月に発売した「CF-RZ4」である。

「CF-RZ4」は、ノートパソコンとしても、タブレットとしても利用できる10.1型液晶ディスプレイを搭載した2in1モバイルであり、世界最軽量となる745gを実現してみせた。

開発チームが目標に掲げたのは、「タッチ操作ができる2in1モバイルで、750gを切ること」であった。

「女性用のクラッチバックに入れて持ち運ぶことができるコンパクトなパソコンが欲しい」、「タブレットだけではキーボード入力がやりにくい」というニーズに対応して開発した新たなビジネスモバイルであり、徹底的な軽量化に挑戦したノートパソコンだった。

  • 「CF-RZ4」は、「ブルー&カッパー」という新たなカラーによって、ビジネスモバイルにファッション性を取り込んだ

大学ノート(セミB5)とほぼ同じサイズを実現。それでいて、ビジネスに必要とされる各種インターフェースを搭載し、キーボードのキーピッチは16.8mm、ストロークでは1.5mmを実現し、高い操作性を達成してみせた。天板、トップキャビネット、ボトムキャビネットのすべてにおいて薄肉化を図りながら、部位ごとに適切な厚みを設定し、軽量化と頑丈を両立。ボンネット構造に加えて、硬度の異なるダンパーを複合的に配置することで、液晶ディスプレイにかかる負荷を低減した。さらに、家の骨組みをアイデアにしたという同社独自のVHフレームストラクチャーを採用したことも、軽量化しながら、強度を確保することにつながっている。

この頃、小型モバイル領域において、レッツノートが目指していたのは、すべてのモデルを2in1モバイルにすることであり、「CF-RZ4」では、その進化を示すものとなり、その後も、レッツノートは、「世界最軽量の連打」を続けていった。

実は、「CF-RZ4」では、もうひとつの新たなことにも挑戦している。それは、「ビジネスシーンにおいても、個性的なPCを使いたい」というニーズに応えたことだ。パナソニックストアプラスでは、複数の色違い天板を選択できるようにはしていたが、「CF-RZ4」では、新色として「ブルー&カッパー」を用意。天板はブルーだが、キーボード面はカッパー色という意外な色の組み合わが、これまでのビジネスモバイルにはないファッショナブル感を演出することにつながった。

ビジネスモバイルが、ファッションの一部となり、自己表現するアイコンのひとつにするという新たな提案が、レッツノートから始まったのだ。

世界を変えたコロナ禍、モバイルの常識が覆った

調和のとれた進化が続く中、しかし、世界は一変する。なんの前触れもなく、まさに、世界を大きく変える出来事が起きた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生である。

2019年12月に、中国・武漢で発見された原因不明の肺炎は、新型コロナウイルスとして、世界中で猛威を振るい、日本国内でも2020年1月に初の感染者を確認。2020年4月には、日本政府が緊急事態宣言を発出され、都心部では外出自粛要請が発令されるなど、街からは人が消え、我々の生活は一変した。

そして、新型コロナウイルスの広がりは、働き方を大きく変化させるきっかけにもなった。

コロナ禍によって、在宅勤務が増加。日本生産性本部が、2020年5月に実施した調査では、週あたりの出勤日数が0日という回答は32.1%と約3分の1を占め、5日間(毎日)出勤しているとの回答はわずか9.5%に留まった。

コロナ禍以前から、政府主導でテレワークが推進されてきたものの、それが一向に進まない状況は一気に打破され、在宅勤務やテレワークは、主要な働き方のひとつとして定着したのだ。

テレワークが増えれば、自宅にPCを据え付けた利用が増える。言い換えれば、持ち運びに威力を発揮するレッツノートの特徴である「丈夫で、軽くて、長持ち」といった強みが、埋もれやすい市場環境へと移行する可能性があったともいえる。

しかも、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱により、部材調達にも遅れが発生。これも、レッツノートの事業にはマイナスに働くことになった。

実際、レッツノートの販売台数は、2020年度下期以降、前年割れで推移していた。

レッツノートは、こうした市場環境のなかでも、新たな提案によって、起死回生を図った。

その提案のひとつが、2021年6月に発売した「CF-FV1」である。

CF-FV1は、13.3型ノートPCとほぼ同等の筐体サイズながら、14.0型液晶ディスプレイを搭載。大画面化とコンパクト設計、999gの軽量化を実現した製品だ。

  • レッツノートは、「CF-FV1」によって家庭(自宅)という市場に挑んだ

    レッツノートは、「CF-FV1」によって家庭(自宅)という市場に挑んだ

  • CF-FV1を持つ女優の比嘉愛未さん。2014年10月から2022年1月まで、レッツノートのイメージキャラクターを務めた

    CF-FV1を持つ女優の比嘉愛未さん。2014年10月から2022年1月まで、レッツノートのイメージキャラクターを務めた

コロナ禍において、ニーズが高まったのが、大画面ノートパソコンだ。

家庭内で固定して利用する際に、大画面モデルが注目を集めており、レッツノートも、その市場に向けて新たな提案を行ったのだ。

家庭内での利用提案を前面に打ち出したのは、レッツノートの歴史において初めてのことだった。

もちろん、そこには、レッツノートならでの提案があった。それは、ハイブリッドワークを強く意識した提案だ。

ビジネスPCの利用シーンは、オフィスと外出先であったものが、コロナ禍によって、家庭での利用シーンが欠かせないものとなり、同時にハイブリッドワークとしての使い方が広がろうとしていた。

レッツノートを、オフィス、外出先、家庭という3つの利用シーンで最適化した製品に仕上げ、どこにいても、ひとつのデバイスを用い、同じ画面空間のなかで働くことができることを目指して開発したのが「CF-FV1」だったのだ。

14.0型の液晶ディスプレイの縦横比が、一般的な16:9や16:10ではなく、3:2を採用したのも、縦方向が長い分、表示領域が広く、Excelなどの利用でも多くの情報を表示できたり、アプリ使用時のタスクバーを表示したり、ウェブ閲覧時の操作できたりという効果がある。それでいて、1kgを切る軽量化にこだわり、家庭内での持ち運びのしやすさや、外出した際の可搬性も実現した。

さらに、インテルGNA(Gaussian & Neural Accelerator)に対応したAIノイズ除去機能を搭載し、タイピング音や、外から聞こえる突然のサイレンといったノイズを低減。音響効果ソフト「Waves MaxxAudio」と、音圧の高いボックス型スピーカーを採用し、テレワークに最適な環境を実現する機能も搭載した。

このように、「CF-FV1」は、ハイブリッドワークに最適な画面サイズ、音質、重量などを、バランスよく追求した製品として完成しただといえる。

振り返ると、レッツノートでは、これまでにも14型液クラスの液晶ディスプレイを搭載したモデルとして、LXシリーズやLVシリーズを開発してきた経緯があった。だが、あくまでも製品群の主役は、12型クラスであり、14型クラスは、脇役の印象が否めなかった。

  • 少しさかのぼり、2018年6月に登場したノートPC「CF-LV7」(と、CF-LV7を持って記者会見に登場した比嘉愛未さん)。CF-LV7は14型の大画面ながら軽量という特徴を既に備えていた

    少しさかのぼり、2018年6月に登場したノートPC「CF-LV7」(と、CF-LV7を持って記者会見に登場した比嘉愛未さん)。CF-LV7は14型の大画面ながら軽量という特徴を既に備えていた

だが、コロナ禍におけるレッツノートの新たな提案として、14型クラスの製品が本格的な受け入れられはじめたのだ。

それは、従来モデルであるLVシリーズに比べて、5倍の売れ行きをみせ、2021年度中は、注文に生産が間に合わない状態が続くといった実績からも証明される。

その当時、ある同社幹部は、「レッツノートといえば、12型クラスであるという枠を、自分たちで決めつけていた部分があった。だが、CF-FV1の反響の大きさにより、14型という領域でも、レッツノートが存在感を発揮できることがわかった」とし、「この背景には、市場環境の変化とともに、狭額縁によってコンパクト化でき、1kgを切ることができるようになるなど、様々な技術の進化が見逃せない。レッツノートの強みを提案できる新たな市場が増えた。14型ノートPC市場に、レッツノートがいよいよ本格参入できる手応えを掴んだ」と語っていた。

コロナ禍では、ビジネスモバイルの用途に、ハイブリッドワークという要素が新たに加わり、主力製品だけではカバーしきれない領域が出てきた。それをカバーしたのが、「CF-FV1」であり、技術進化を生かしながら、ハイブリッドワーク領域に、新たな布石を打つきっかけとなったといえる。実際、パナソニック社内でのレッツノートの利用状況をみると、現時点では、12型クラスが約6割であるのに対して、14型クラスが約4割を占めており、モバイルワーカーの多くが14型クラスのレッツノートを利用しはじめていることが裏づけられる。

そして、「CF-FV1」で掲げたこのコンセプトは、遠隔授業が必須となった大学からも注目を集めることになり、2021年度下期の国内PC市場は、業界全体では大幅な落ち込みが見られるなか、レッツノートは前年実績を大きく上回る販売を記録したのだ。

ハイブリッドワーク時代の到来、変化を追い風に

2023年5月に、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことで、アフターコロナの時代を迎え、それに伴い、ハイブリッドワークが一般化してきた。

それは、レッツノートが得意とするビジネスモバイルの市場領域の拡大にもつながっている。

以前のモバイルワーカーは、出張の時や商談の時だけノートパソコンを持ち歩けばよかったが、コロナ禍以降の働き方の変化により、ノートパソコンを、いつも持ち歩くようになった。

また、大手企業では、情報漏洩の観点から、会社に申請して、ノートパソコンを持ち出すというのがコロナ禍前の状況だったが、1人ひとりがノートパソコンを常に持ち運ぶことが前提となり、様々な場所でノートパソコンを使い、あらゆる場所でウェブ会議が行われるようになった。

それは、レッツノートの使い方そのものにも変化を及ぼすことになったといえる。

当然、持ち歩くシーンが増えれば、落としたり、故障したりするリスクが増える。また、傷がついたり、紛失したりといったケースもある。そして、モバイル環境においても、ウェブ会議に接続した状態で利用することが増え、CPUの稼働率が高く、バッテリー消費が激しいという課題も生まれた。軽量、長時間、頑丈、高性能の要件が、これまで以上に重要になってきたのだ。

レッツノートの開発チームが取り組んだのは。レッツノートが持つ軽量、長時間、頑丈、高性能という4つの特徴を、「研ぎ澄ます」ことだった。レッツノートの水準をもう一段階引き上げることに取り組んだのだ。

2023年6月に発売した「CF-QR4」では、第13世代インテル Coreプロセッサーを搭載し、2021年11月に発売した「CF-QV1」に比べて、約1.3倍の性能向上を実現。さらに、CPUの性能を最大化させる独自の「Maxperformer」を開発し、高性能と省電力の両立を実現するためのCPU制御を行えるようにしたほか、風量を約20%向上させた冷却ファンの採用およびヒートパイプ上を通る新たな排気を加えることで、高性能を維持する放熱設計を実現。ウェブ会議をしながら、資料を編集するなど、高負荷作業も快適に行えるようにした。また、標準バッテリーでも、従来比約1.5倍となる16時間の連続駆動を達成。AIセンサーを活用することで、よそ見をしているときにはパソコンを省電力で稼働させたり、離席時には自動的にロックし、着席時にはロックを解除したりといった機能を搭載。これにより、モバイルワーカーを支えるノートパソコンとしての進化を実現したのである。

  • 2023年6月に発売した「CF-QR4」

    2023年6月に発売した「CF-QR4」

  • モバイルワーカーの働き方の変化に伴いレッツノートも進化する

    モバイルワーカーの働き方の変化に伴いレッツノートも進化する

  • CPUの性能を最大化させるパナソニック独自のMaxperformer

    CPUの性能を最大化させるパナソニック独自のMaxperformer

2026年は、レッノートが30周年の節目を迎えている1年である。その年に、レッツノートが、新たに取り組んだテーマが「互換性設計」だ。

2026年3月に発表したレッツノートの新製品は3機種である。

モバイルでのオンライン会議、移動時間のすき間でレポートを作成するユーザーに適した12.4型の「CF-SC7」、大画面を利用しながら、AIを活用したデータ分析、画像生成を行うユーザー向けに14.0型の「CF-FC7」を用意。さらに、モバイル性と作業性を必要とするハイブリッドワーカーには、新たな13.3型の「CF-NC7」を提案。利用者の業務に応じて最適な画面サイズを用意した。

これらの機種で採用したのが「互換性設計」である。画面サイズに関係する部品や、筐体を構成する部品を除いて、すべてのハードウェア、ソフトウェアの動作環境を統一して、互換性を確保したのだ。

  • レッツノートの最新モデルとなる「CF-SC7」、「CF-NC7」、「CF-FC7」

  • 新たなレッツノートでは、互換性設計を採用した

    新たなレッツノートでは、互換性設計を採用した

「ビジネスを止めない」ための「互換性設計」

「互換性設計」に着目したのには理由がある。

それは、コロナ禍以降、働く環境が複雑化し、一人ひとりが個別にパソコンを持ち運ぶことが一般化したため、企業のIT管理者の保守やサポート、管理の負荷が一気に増大していたからだ。

その課題に対して、パナソニックでは、液晶サイズに関わる部品以外を共通化する設計を採用することで解決を図ろうとした。

実際、基板ユニットやバッテリーをはじめとした主要部品はすべて共通であり、ファームウェアやドライバーなども、ひとつのマスターイメージで、複数モデル間で利用できるようにした。これによって、マスター生成および評価工数は53%削減。展開や更新の手間を大幅に軽減できるようにしたのだ。

企業は、社員の利用シーンに応じて、サイズが異なる3機種をバラバラに導入しても、検証作業は1機種で済むようになり、パナソニックの試算によると、互換性がない3機種の導入に比べて、導入時では4人月、運用時には年間9.5人月の工数が削減できるという。また、運用および管理工数は33%削減できるとしている。

ここでは、導入から運用、保守までを支援するIT管理ツール群「Panasonic PC Control Suite」を開発したことも貢献している。このツール群によって、BIOSの設定、ドライバーのインストール、デバイスの各種設定、アップデート、トラブルシューティングができるようになるからだ。

さらに、ランチャーアプリ「Panasonic PC Navigator」を新たにリリース。生成AIでの質疑応答機能を搭載し、IT管理者が行いたい作業を指定するだけで、必要なツールや機能にアクセスできるという。

そして、「CF-SC7」、「CF-FC7」、「CF-NC7」は、レッツノート初のCopilot+ PCと位置づけられ、AI時代の新たな働き方をサポートすることになる。

AIは「便利な道具」の役割を超えて、働く人の「優秀なエージェント」へと進化しつつある。会議の議事録作成に留まらず、アクションプランの立案から資料化、AIが業務の核心を担う時代が到来している。それに伴い、ビジネスモバイルには、これまで以上に「信頼性」が求められている。AIが、日常業務に深く浸透するほど、パソコンの停止は単なる作業の中断ではなく、ビジネスオペレーションの停止や生産性の消失に直結するからだ。

「AIという強力なエンジンを止めることは、現代のビジネスにおいて致命的な機会損失へと直結する」と、同社が語るのもうなずける内容だ。

「ビジネスを止めない」というレッツノートが取り組んできた姿勢は、AI時代において、ますます重要な要素となる。30年間に渡って培ってきたレッツノートの「信頼性」の真価は、AI時代のいまだからこそ発揮されることになる。